Nestの買収は、Googleが未来のハードウェアへ向う幸先よいスタート

CESは終り1年後までやってこないが、ショウ最大のテーマの一つ ― どんなものでも(車、時計、鏡、テーブル、等々)「ハードウェア」になれる ― は始まったばかりだ。そして今日(米国時間1/13)のGoogleがNestを32億ドルで買収したニュースは、Googleがどれほどハードウェアの中心プレーヤーになりたがっているかを如実に示している。

GoogleがNestを買収しても、Nestのアプリ、サーモスタット、煙検知器等に渡る全データを検索の巨人がアクセス可能になるわけではないが、Googleは別の何かを手にする。それは次期先端ハードウェアの一流デザイン知識 ― Apple出身のハードウェアのベテランで、うち一人はiPodの父という2人が集めたチームを通じて。

これはGoogleにとって非常に大きな節目だ。

現在まで、検索の巨人はビジネスの要所 ― デスクトップ・インターネット、モバイル・デバイス ― をソフトウェアを通じて支配し、これらの市場をデータ ― 具体的には広告データ ― によって収益化してきた。

それは、プラットフォームとその上で動くサービスのみならず、動作するためのハードウェアも支配する(そしてそれによって高級な製品から高い利幅を得ている)垂直統合企業、Appleとは根本的に異なるアプローチである。

NestはGoogleに、全く新しい市場 ― つながれたホームデバイス ― に垂直的アプローチで立ち向かうことによって、収益を多様化する機会を与えるだろう。

「これは新しいハードウェアのムーブメントだ」とある人は説明した。「デバイス+サービス、製品と市場の一致、クラウドファンディング・プラットフォームを使った調査、提携小売販売とオンライン直販の混合等々」。

Googleにとって、Nestはとりわけ魅力的な例の一つだ。つながった家庭用ハードウェアの統合システムを作っているだけでなく、Nestは相互運用性を中心に据え、初期バージョンでは、iOSまたはAndroidスマートフォンで制御するアプリと、よく整備された直販および小売販売チャネル、および誠意に満ちたサポートによってそれを実現してきた。

いずれにせよ、それはGoogleが以前から注目していた分野であることに間違いない。例えば昨年12月にThe Informationは、GoogleがEnergySenseと呼ばれる節電を手助けするスマート・サーモスタットらしきものをテストしていることを暴露した。テストは、Nestのライバル会社、Ecobeeのデバイス上で行われたと言われているが、今度はNestのサーモスタットを使う可能性もでてきた。

「NestとGoogleの製品は相互に協力して動作するのか?」という今日の仮想 Q&A 記事の質問に対して、共同ファウンダーのMatt Rogersは、「『Nest』の製品ラインがGoogleの注目を浴びたことは間違いないので、一緒にできるクールなことはたくさんあると考えているが、今日言えることはない」と答えた。

しかし、この買収はGoogleにとって有益であるばかりではない。


この数ヵ月間、Nestは同社製品のソフトウェアにバグが多いという高まる批判に悩まされている。Googleのソフトウェア知識は頼りになるだろう(ただし、その点に関してはGoogle嫌悪者とNest愛好家の重なりが問題になるかもしれない)。

さらには、Nestの知的財産権と特許の争いもある。NestはHoneywellおよびFirst Alertのメーカー、BRKとの特許侵害裁判を抱えている。これらの戦いを有利に進め、さらに自らを模倣者から保護するために、同社は特許に関して積極的だ。すづに100件の特許が承認され、200件が申請中、さらに200件が申請準備済みで、Intellectual Venturesとのライセンス契約も進めている。ここにGoogleが加われば、同社がこれらの戦いを進める上でも予防策になる。

Nestの買収が、今後Googleの他のハードウェアに対する関心にどう影響を与えるかも興味深い。

Googleが2012年に125億ドルで買収したMotorolaは、Googleがスマートフォンとタブレットに新たな垂直型アプローチを取るための布石かと一時見られていた。結局Motorolaは他のAndroid OEMと平等なパートナーであり続け、買収の最重要部分は特許となった。果たしてNextの買収によって、Googleは新たなハードウェア製造に取り組み、Motorolaとの契約で得た知的財産と才能をそこに注ぎ込むことになるのだろうか。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


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TechCrunch Japan

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