Netflixと彼らの世界進出で作り出されるグローバル・モノカルチャー

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編集部記Spencer LazarはCrunch Networkのコントリビューターである。Spencer Lazarは、General Catalystのプリンシパルを務めている。

Netflixは驚異的な会社だ。

もし彼らに2008年の大規模な景気後退のまっただ中で投資し、今日まで保有していたのなら、株価は最初の投資額の20倍以上になっていたことだろう(これはベンチャーキャピタルが望むほどのリターンを公開市場で得られることを意味している)。その時期、NetflixはNASDAQ全体より12倍以上のパフォーマンスを示した。ただただ驚異的だ。

Netflix Run vs. NASDAQ (1)

彼らの財政的なパフォーマンスもさることながら、大胆なプロクト展開を継続的に行っていることも等しく驚異的なことだ。

彼らが達成してきたことがいくつかある。
1. 当初のアナログなDVDレンタルビジネスに変革をもたらし、デジタルサブスクリプションへと移行したこと。(Qwiksterを覚えているだろうか?)
2. 真のウェブサービスの先駆けとなり、デバイスやプラットフォームの制限をなくし、コンテンツを提供したこと。
3. 品質の高い「オリジナルコンテンツ」を追求するコンセプトを掲げ、顧客満足とコンテンツの粘着度を高め、長期的にも強い運営上の利益を確保できるようにしたこと。
4. ストリーム動画に対するコンシューマーの期待を裏切らずに成長してきたこと。

まだ彼らの動画カタログにユーザーが求めている特定の映画がないことも多い。だがNetflixは間違いなく、止めどなくエンターテイメントを継続的に提供できる場となり、ユーザーがリラックスした体験を求める時に利用するパートナーの位置を確立した(ユーザー数は7500万人にもなる)。

1月に開催されたCESで、Netflixが1夜の内に新たに130カ国にも拡大すると発表した時、世界中の人々がNetflixの到着を祝福するだろうと考えるのは自然なことだ。

しかし、最近のNPRの記事「 Is Netflix Chill? Kenyan Authorities Threaten To Ban The Streaming Site(訳:Netflixに冷水?ケニアの権力者はストリーミングサイトの規制に向けて圧力をかける。」で、私は違う視点でNetflixを見た。この記事では、ケニアのコンシューマーとその地域のエンターテイメント業界の反応を伝えている。

当地のコンシューマーはとても喜んでいるようだった。長年に渡って彼らはNetflixのようなコンテンツの「宝箱」にハックする方法を考えてきた。Netflixが正式に各地域でローンチしたことにより、アクセスする手間はなくなった。そして当地のユーザーは、グローバルメディアのコミュニティー内に参加を許可されたようにも感じた。

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一方で役者、監督、プロデューサーといったその地域のコンテンツ制作に関わる人たちにとってこれは面白くない事態だ。彼らはNetflixのコンテンツ、資本力、テクノロジー、プロダクトが強力過ぎて、国内のコンシューマーの興味関心を得る競争に敗れてしまうことを懸念している。その地域固有のストーリーや感覚が廃れていくかもしれないと感じているからだ。

どちらも真実なのだろう。

エンターテイメントはアメリカ最大のグローバルな輸出商品だ。それはアメリカが移民の国で、多くの人が何かしら共感する要素があるからかもしれない。作品を通して伝える野心的なストーリーが根本的な理由なのかもしれない。理由はなんであれ、アメリカのタレントや商品を海外に届ける新たなインフラの中核としてNetflixがその一部を担っているのは明らかだ。

地域のビジネスがグローバル向けのストーリーを伝える経済的な力が足りない構造であるのなら、Netflixがもたらす移行がどんな痛みを伴おうと、私はNetflixが主導するマーケット効率化を支持したい。もし地域のクリエイティブを制作する人たちがNetflixとパートナーシップを結び、自分たちのコンテンツをより効率的に低コストで開発し、配信できるのならそれは素晴らしいことだと思う。

しかし、Netflixのプラットフォームで人々の想像力と関心を引き、初めて特定の地域で成功するコンテンツは、その地域独自のコンテンツではないだろう。

それらはNetflixの人気番組「Narcos」「 House of Cards」「Orange is the New Black」などだ。これらのオリジナルコンテンツはNetflixにとって利益を最大化する戦略であり、彼らはその制作に何十億ドルの資金を投入し続けている。私はNetflixがそれぞれの地域の文化にもリーチし、その地域独自のストーリーをも引き出すことに期待している。

インターネットは私たちをつなげ、1つにしてくれるのと同時に、帝国主義やモノカルチャー(単一文化)を助長する可能性を持っている。

Netflix以外にも、Facebook、Twitter、Mediumといった企業がグローバルに進出するほど、これらの企業は世界が探求に値する場所であり続けるために、各地域独自の特色を残せるように取り組むべきだと私は思っている。

ディスクレーマー:この記事のコメントや見解は個人の考えであり、投資に関するアドバイスを行うものではない。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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