Nikeが自動靴ひも調整シューズHyperAdaptの販売を開始

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720ドルの価格がついたNikeの自動靴ひも調整シューズHyperAdapt 1.0は、スニーカーマニア向けの商品だ。華やかな見た目で値段も高い上、Nikeは具体的な数を発表していないものの、当然ごく少数しか販売されないだろう。しかし、Tiffany Beersによると、自動靴ひも調整の仕組みは見掛け倒しではないようだ。

Nikeでシニア・イノベーターを務める彼女は、10年以上このプロジェクトに携わってきた。そもそもこのプロジェクトが生まれたきっかけは、伝説的なAir JordanのデザイナーTinker Hatfieldが、約11年前に描いたスケッチとコンセプトだった。そして、自動靴ひも調整のテクノロジーは、先日ようやくバック・トゥ・ザ・フューチャーにインスパイアされたNike Magという形で世に出ることとなった。なおこの商品は、オークションやラッフルを通じて、たった89足しか販売されなかった。

明日ニューヨークの店舗で販売されるHyperAdapt 1.0によって、自動靴ひも調整のテクノロジーをもう少しだけ多くの人が試せるようになる。「実際に使ってみるとギミックぽさも感じず、今後はこのような商品が主流になっていく可能性があります。アスリートは常に動き、彼らの足の状態は刻一刻と変化しています。そして彼らの環境に関しても同じことが言えるため、常に最適なフィット感を提供するのが重要になってきます。靴も私たちの足に合わせて変化していけばいいと思いませんか?これこそHyperAdaptが向かっている未来の靴のカタチなんです」とBeersは話す。

巨大な箱を開け、実際の商品を試してみて1番驚くのは、HyperAdaptの履き心地の良さだ。最初はちょっと窮屈に感じるかもしれないし、靴を履くときにも、上手く足を入れて、かかとの部分についている輪っかを引っ張らなければいけない。しかし、一旦履いて立ち上がると、かかとについたセンサーがトリガーとなってシステムが起動し、ウィーンという音と共に靴がぴったりと足を包み込むようになっている。

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このノイズはもちろん、実際に靴ひもを締めている機械部品の駆動音なのだが、これも嬉しい特徴のひとつと言えるだろう。というのも、正直言って700ドル以上ものお金をつぎ込んでいれば、周りにいる人に自分が自動靴ひも調整シューズを履いていると知って欲しいと感じるものだ。ソールに埋め込まれた大きな青色のバッテリーライトや、かかと上部に搭載された三色に光る5つのLEDもその雰囲気をもり立てている。

さらに両足の外側に2つの小さな青いボタンが取り付けられており、これを使って靴ひもの締め具合を調節できる。しかし、青いドットと生地の下に埋め込まれた実際のボタンの位置が完全には揃っていないため、操作するのには少々手間取るかもしれない。とはいっても、これはそこまで大きな問題ではなく、靴ひも調整の動き自体は素晴らしい。ちなみに、何か問題があったときのために、システムを再起動する手段も準備されている。

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HyperAdaptのフィット感は良いのだが、恐らく大方の予想通り、重さが問題だ。Beersによれば、Nikeはソールの中央部に埋め込まれたシステムの重さを相殺するために、アッパーにNike独自のFlyweaveとよばれる軽量素材を採用した。しかし、機械的なシステムと1回の充電で1ヶ月ももつバッテリーが搭載されていることを考えると、(軽さのために靴を頻繁に充電したいと思う人もいないだろうし)この重さが限界だろう。

重量の問題によって、HyperAdaptがランニングシューズとして機能するかや、徒歩での移動が多い人は、靴ひもを自分で結ぶのと重さのどちらをとるかという疑問が生まれてくる。この点について、Beersは「HyperAdapt 1.0は、コンセプトカーのようなものです。私たちはトレーニングやランニング、バスケットボールなどのスポーツでこの靴をテストし、特に耐久性を見るためにランニングのテストには時間をかけました」と話す。

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現状のHyperAdaptは間違いなく、アーリーアダプターやスニーカーマニア向けの商品だ。しかし今後改良が進み、価格や重量の問題が解決されていくとすると、この商品は面白い可能性を持っている。

なお、Beersはその他の注意点として、子どもや高齢者、身体的な障害を持った人などには、自動靴ひも調整がうまく機能しない可能性があると話す。そもそも、このような広範にわたる消費者を対象にするには、Nikeは現状の価格からいくつかゼロを落とさなければいけないだろう。しかしお金がある人は、今週販売開始予定のHyperAdaptをチェックしてみてはいかがだろうか。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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