Nikola、EVトラック量産に向けた進捗と厳しい損失を報告して激動の2021年を締めくくる

SPAC経由で上場した電気トラックのスタートアップNikola Corp(ニコラコーポレーション)は、過大な約束、納期の遅れ、投資家への虚偽説明での創業者取り調べといった過去を経て、商業活動に近づいている。

米国2月24日に発表された第4四半期決算で、Nikolaは最近のマイルストーンの数々と、さらに重要なことに電動大型トラックの量産を開始する計画を強調した。

投資家にとっては、2020年半ばの最高値以来、株式市場でNikolaの価値の多くが失われたため、この進展は冷ややかな慰めにすぎないかもしれない。それでも、同社CEOのMark Russell(マーク・ラッセル)氏が第4四半期決算のダイジェストで書いているように、この上場企業は「車両を納入し、収益を上げる」ことに向けて非常に熱心に取り組んでいる。

サプライチェーンの制約による遅延と証券規制当局の調査に悩まされてきたNikolaは、3月に電気トラックの量産を開始すると発表した。同社によると、生産準備が完了したバッテリー電気トラック「Tre」300〜500台を2022年第2四半期に顧客に届ける予定だ。

この見通しは、若干の進展を示している。強調しておくが、若干だ。重要なのは、Nikolaが、2件の証券詐欺と1件の通信詐欺で米連邦検事局に起訴され物議を醸した同社の創業者で前CEO兼会長のTrevor Milton(トレバー・ミルトン)との間にようやく一定の距離を置くことができたことだ。同社は2021年12月、米国証券取引委員会との和解の一環として、1億2500万ドル(約145億円)の罰金を支払うことに同意した。同社は分割で支払っており、ミルトン前会長に弁済を求めると投資家向けのアップデートで述べている。

ロシアのウクライナ侵攻、中国と台湾の緊張、新型コロナウイルス感染症の大流行などを受け、世界中で株式市場が苦戦した日にNikolaは注目すべき決算を発表し、同社の株価は7%超上昇している。

同社のバラ色の見通しは、電気トラックNikola Treのプロトタイプから量産への移行だけではない。2022年中にアリゾナで同社初の水素製造ハブの建設を開始し、カリフォルニアでの2つ以上のディスペンサー・ステーションのパートナーを年内に発表する予定だと明らかにした。

Nikolaはまた、Anheuser-Busch(アンハイザー・ブッシュ)やTotal Transportation Services Inc.(トタル・トランスポーテーション・サービス)といった顧客とのパイロットテスト、Proterra(プロテラ)とのバッテリー契約の確保、トラックの資金調達を支援するCorcentric Fleet Funding Solutions(コーセントリック・フリート・ファンディング・ソリューションズ)との協力など、商業化に向けたより注目すべき進展も報告した。

Nikolaは、3カ月にわたるパイロットプログラムの一環として、カリフォルニアのTTSIに最初のTre BEV(バッテリー式電気自動車)2台を納車したという。これらのトラックは、1日に複数の荷物を運搬し、合計4500マイル(約7240キロメートル)超を走行し、1回の充電で204マイル(約330キロメートル)走行した。これは、TTSIがテストしたどのBEVよりも長い航続距離だと同社は述べている(読者のみなさんへ: あなたが好きな非GAAPベースの結果は何だろう。ソーシャルメディア企業のMAU/DAU比率か、EVに関する走行距離か)。

Nikolaはまた、Anheuser-Buschと燃料電池電気トラックTre FCEVの試験運用を開始した。Nikolaによると、2台のNikola Tre FCEVアルファが、Anheuser-Buschの南カリフォルニアの流通網で3カ月間の日常的な試験運転を行っている。

しかし、上記のポジティブな取り組みには共通点がある。それは、いずれも2021年には利益を生んでいないということだ。そのため、Nikolaの2021年第4四半期および通年の決算は大赤字だ。

決算内容

Nikolaは2021年第4四半期中、あるいは2021年のどの時点でも収益はゼロだった。つまり、売上高ゼロ、営業費は1億6270万ドル(約188億円)で2021年を締めくくった。したがって、同社の通年の営業損失はまさに1億6270万ドルだ。

この結果は、1億4680万ドル(約170億円)とやや控えめだった2020年の営業損失よりも大きく、したがって悪化した。しかし、この指標には約1440万ドル(約16億円)の減損費用が含まれていて、同社の経費増加ペースは営業損失の額面から見えるよりも大きく、経費増加ベースは収益性(またはその欠如)に重大な影響を及ぼしている。

はっきりさせておくと、これはTechCrunchも市場も予想していたことだ。Nikolaは、前述のように成長に向けた加速モードのままだ。つまり、経費は増加し、収益は将来期待されていて、潜在的な利益ははるか未来にあるということだ。これらの損失は2022年に拡大し続けるかもしれないが、最初の生産用トラックの納車が始まり、これは実際の資本、つまり収益が同社に流入し始めることも意味するはずだ。

それでも、同社の決算報告には、2021年第4四半期の損失が予想より少なかったという良いニュースもあった。Nikolaは同四半期にすべてのコストを考慮に入れると(GAAP)1株当たり0.39ドル(約45円)の赤字だったが、調整後の1株当たり純損失はわずか0.23ドル(約26円)で、これは主に株式による報酬費用と規制費用の財務的影響をコスト構成から除外した結果だ。市場は、調整後ベースで1株当たり0.32ドル(約37円)の赤字になると予想していた。これは、同社の商業的な進展と相まって、励みになると解釈されるかもしれない。

良いニュースかどうかは別として、同社は米証券取引委員会との和解に関連する支払いを前倒ししており、収益はゼロで、経費は増加している。トラックを大量に、しかもポジティブなユニットエコノミーで販売できるかどうかは、依然として不透明だ。それでも、投資家は本稿執筆時点でNikolaを30億ドル(約3470億円)と評価している。これは、同社のトラックが今後走り出し、そして走り出したときに利益が発生する、というかなり大きな賭けだ。

画像クレジット:Nikola Corp.

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(文:Kirsten Korosec、Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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