Noya Labsは200万本の冷却塔をCO2回収装置に変え産業に二酸化炭素を販売する

企業創設者は、みんなが地元の爆弾処理班と名前で呼び合う親しい間柄というわけではない。しかもすべての企業がNoya Labs(ノヤ・ラブズ)であるわけでもない。この会社は、米国内の工業地帯や建物に備えられているおよそ200万本の冷却塔を、二酸化炭素吸着兵器に転換して、世界的な気候変動と戦おうとしている。

同社が最初に水冷器に接続するデバイスのプロトタイプを開発し始めた頃は、善良な企業創設者がみなそうであるように、自宅の庭で工作作業を行っていた。

55ガロンの石油用ドラム缶と低温調理用のコンテナに入った黄色い冷却水のタンクに赤と青のケーブルがつながっている。ご近所さんには異質な代物だ。そこでJosh Santos(ジョシュ・サントス)氏とDaniel Cavero(ダニエル・カヴェロ)氏は、何度も爆弾処理班のふりをしたと、同社の最高責任者であるサントス氏は話す。

「それでCO2が回収できることを、私たちは実証しました。スタートアップにあるまじき手法でしたが」とサントス氏はインチキ爆弾処理班の功績を称えた。

サントス氏とカベロ氏がこの直接空気回収法の実験を始めたのは、2019年、サントス氏が職場に向かうカリフォルニアの通勤列車カルトレインの中で読んだ、植物の二酸化炭素吸収能力が低下しているという研究報告がきっかけだった。この記事が、起業家を目指す彼とそのルームメイトを触発し、炭素の化学実験へと突き動かしたのだ。

最初の製品は、消費者向けの空気清浄器だった。家の中の二酸化炭素を捕らえて回収するというものだ。回収した二酸化炭素は、その家の人間がサントス氏とカベロ氏に売ることができ、彼らはそれを転売する。しかし、このビジネスモデルは経済的ではないと2人はすぐに気がついた。そして原点に戻ることにした。

やがて彼らは、その技術を1日に500キログラムから1トンまでの二酸化炭素を回収できるように発展させ、工場の冷却塔を応用することを考えた。

Noyaの技術では、CO2を吸収する化学物質を混ぜた冷却水が使われる。そして、冷却塔にアタッチメントを取りつける。これはサントス氏が再生プロセスと呼ぶ、取り込んだCO2を気体に戻す処理を行うものだ。回収したCO2は、産業用CO2として販売することにしている。

CO2は隔離されず、再利用に回されることから、今の段階ではまだ完全にグリーンとはいえない。だがサントス氏は、アンモニアとエタノールを使った現在の二酸化炭素製造方式よりはグリーンだと話す。

Noya Labsの共同創設者ジョシュ・サントス氏とダニエル・カベロ氏(画像クレジット:Noya Labs

「5年後には、二酸化炭素の回収と隔離の垂直統合を可能にしたいと強く願っています。第1のステップは、その場で低コストに空気からCO2を回収することです」とサントス氏。「二酸化炭素回収に全面的に向かうには、技術開発の時間がもっと必要です。この第1のモデルは、市場参入への長期戦略を練りながら、私たちの回収技術を洗練させることが目的です」。

サントス氏はそれを「テスラ・ロードスターのアプローチ」と呼ぶ。資本を積み上げて、利益を出し、その技術の1つをMVPとして成功させ、それを計画に沿った次のステップの成功に繋げるというものだ。

Noya Labsはすでに、家族経営のオーガニック農場Alexandre Family Farm(アレクサンダー・ファミリー・ファーム)と共同でパイロットプラントの建設を行っている。そこでは、500キログラムから1トンの二酸化炭素の生産が見込まれている。

この初のパイロットプラント建設と人材集めのために、同社は120万ドル(約1億2700万円)の資金調達に成功した。出資を行ったのは、Ela Madej(エラ・マデイ)氏とSeth Bannon(セス・バノン)氏が設立した先端技術を対象とする投資会社Fifty Years、Chris Sacca(クリス・サッカ)氏のLowercarbon Capital(「地球をフ●ックしない」ための時間稼ぎができる企業に投資するというこの投資会社の企業理念は最高)。また同社はY Conbinatorにも参加している。

「この技術で大いに期待できることの1つに、米国だけでも冷却塔が200万基もあるという点があります。控えめに見ても、最初のパイロットプラントの処理量を1日1トンとすると、50万トン教のCO2が回収できることになります」。

しかも、Noyaが市場に向けて販売を予定しているCO2を買いたいという企業が、すでに何社も手を挙げている。CO2から製品を作るスタートアップも数多く成長している。これらの中には、Aether Diamonds(イーサー・ダイヤモンド)のようにCO2を原料に、なんとダイヤモンドを作るという冗談のような企業から、CO2から合成燃料を作るPrometheus Fuels(プロメシアス・フュエルズ)や、石油化学製品の代替品にCO2を使うOpus12(オーパス・トゥエルブ)などがある。

サントス氏によれば、産業用CO2の価格は、1トンあたり125ドル(約1万3000円)から5000ドル(約53万円)。Noyaは1トンあたり100ドル(約1万600円)以下で生産する予定だ。既存の直接空気回収各社は、1トンあたり600〜700ドル(約6万4000〜7万4000円)で販売している。

Noyaの導入初期費用は25万ドル(約2650万円)程度になるとサントス氏はいう。これなら、バノン氏が提唱する「ミスター・バーンズ・テスト」にパスできる。

持続可能性企業に「ミスター・バーンズ・テスト」を。ミスター・バーンズ(典型的な自己中で利己的で強欲な資本家)が買いたがる製品、つまり持続可能などではなく、良質で最安で最も便利なものを製造しているか。それが大規模なインパクトをもたらすカギになる

「私たちは直接空気回収(DAC)を模索してきましたが、これまで見てきたテクノ経済は好きになれませんでした。従来のアプローチでは、資本支出と運営コストがかかりすぎて、十分な収益が望めません」とバノン氏は電子メールで語ってくれた。「Noyaが解決したのはそこです。既存の工場設備を利用する彼らのモデルには収益性があります。しかも、二酸化炭素回収のパートナーにも収益をもたらすため、急速なスケールアップが可能です。これにより、年間100万トン以上の二酸化炭素を収益性のあるかたちで回収するという機会が創出されるでことしょう」。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:Noya Labs二酸化炭素

画像クレジット:plus49/Construction Photography/Avalon/Getty Images / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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