NVIDIAがArmの買収を断念、Armはリーダーが交代し株式公開を模索

NVIDIA(エヌビディア)によるArm(アーム)の買収案件は見送られると、両社とArmのオーナーであるSoftBank(ソフトバンク)米国時間2月8日に発表した(PDF)。SoftBankとNVIDIAは、Armの買収に向けた取り組みを止めることで合意したのだ。

これにともない、Armでは大きなリーダーシップの交代も行われる。同社の現CEOであるSimon Segars(サイモン・シーガーズ)氏が同日付けで退任し、ArmのIPグループ社長であるRene Haas(レネ・ハース)氏(元NVIDIA VP兼コンピューティング製品事業本部長)がその任につくことになった。

買収が見送られたため、Armは買収の代わりに株式公開を模索しているという。現在の計画では、今後12カ月以内にIPOが実現する予定だ。

Financial Timesは、米国時間2月8日未明、この買収が破綻したと最初に報じた

今日の発表の直前にハース氏が私とのインタビューで語ってくれたように、シーガーズ氏が会社を去るという決断は、非常に個人的な選択であった。「彼は会社を上場させることと、その他諸々のために必要な時間とエネルギーが、自分のキャリアのこの段階において、自分が手を挙げたいと思えるものではないと判断したのです」とハース氏は語った。「だから、彼は退任することになりました。私が彼の後を継ぐことになります」と語った。

「レネは、上場再挑戦を目指すArmの成長を加速させるために最適なリーダーです。過去30年にわたるサイモンのリーダーシップ、貢献、そしてArmへの献身に感謝します」とSoftBank Group(ソフトバンクグループ株式会社)の代表取締役社長兼執行役員会長兼CEOの孫正義氏は述べている。

ハース氏は、今日のArmのビジネスがかつてないほど強力であることを指摘した。

「私たちは、この会社の次の章にとても熱意と興奮を感じています。というのも、この会社の業績は絶好調だからです。【略】Armのビジネスはかつてないほど好調で、収益性も高く、SoftBankに参加する前では見たことがないレベルです。しかし、おそらくもっと重要なことは、SoftBankに入る前と比較して、事業の多様化が進んだことです。クラウドやデータセンターのような分野でより強力な企業になり、自動車のような市場でもより強力な企業になり、IoTやメタバースといった将来の市場にも大きな機会があります」と彼は語った。

ハース氏は、NVIDIAとSoftBankの決断についてこれ以上コメントしない一方で、ついに取引が破綻したが、リーダー交代の話し合いはもっと前から始まっていたことを認めた。

「買収が成立しなかったことは残念ですが、同時に、今後の展望に非常に期待しており、次の章の開始が待ち遠しい」と述べている。それが具体的にどのようなものになるのか、ハース氏はまだ明言していないが、CPUやGPU市場への進出や、AI分野での取り組みを継続することに言及した。「これまでやってきたことを継続し、それを実行することが本当に重要になります。というのは、我々はビジネスを成長させる方法に関するレシピを提示し、それをぜひ継続したいからです」と語っている。

NVIDIAのCEOであるJensen Huang(ジェンスン・ホァン)氏も、これとほぼ同じことを言っている。「Armには明るい未来があり、我々は今後数十年間、誇りあるライセンシーとして彼らをサポートし続けるでしょう」と彼は声明で述べている。「Armは、コンピューティングにおける重要な変遷の中心にいます。私たちは1つの会社にはなりませんが、Armと密接に連携していきます。マサが行った多大な投資により、Arm CPUがクライアントコンピューティングだけでなく、スーパーコンピューティング、クラウド、AI、ロボティクスにまでその領域を拡大できるよう、Armを位置づけています。Armが次の10年で最も重要なCPUアーキテクチャになることを期待しています」と語った。

ある意味、今日の発表はサプライズではない。米連邦取引委員会が、合併後の企業が「NVIDIAのライバルを不当に弱体化させる」ことができるとして、合併を阻止するために提訴すると発表した後、BloombergはNVIDIAが計画を断念する準備をしていると報じていた。Armの本社がある英国でも、EUの反トラスト法規制当局と同様に、ここ数カ月で合併の障害にぶつかっていた。

結局、GPUとAIアクセラレーター市場を支配し、事実上すべてのスマートフォンやIoTデバイスを動かすチップのIPも所有するNVIDIAは、あらゆる警鐘を鳴らすことになったのだ。両社はおそらく、規制当局のプロセスを通過させるために、取引内容を大幅に変更するか、あるいは断念せざるを得なかっただろう。

NVIDIAがこの巨大買収計画を最初に発表したのは、2020年9月のことだった。当時、NVIDIAのCEOであるジェンスン・ホァン氏は、これによって自社が「AIの時代に向けて素晴らしく位置づけられた企業」を作ることができると主張していた。

この間、NVIDIAとArmの首脳陣は公の場で、この取引が最終的に規制当局の審査を通過する、と楽観的な姿勢を崩さなかった。何らかの反発があることは承知の上で、両社は常にこの取引の完了に多くの時間を費やし、発表から18カ月後の2022年3月を完了予定日としていたのである。しかし、ここ数カ月、両社はこの期日を逃すことになると認めていた。彼らはまた、2022年9月というちょっとした期限もあり、それを過ぎるとSoftBankは12億5000万ドル(約1443億円)の解消手数料を保持することになっていた、取引がなくなった今、SoftBankはいずれにしてもそれを保持することになったのである。

画像クレジット:SAM YEH/AFP via Getty Images / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Akihito Mizukoshi)

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TechCrunch Japan

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