NYのトップホテルMint House、新型コロナの影響でそのおもてなしビジネスに変化

ニューヨーク市内の一流ホテルはどこであろう?TripAdvisor(トリップアドバイザー)ユーザーによると、それは Mint House at 70 Pine(ミントハウスアット70パイン)だ。写真を見てみるとその理由は明らかだ。ニューヨーク市内のホテルの部屋は基本的には、必要なすべてのものがコンパクトに収まったお弁当箱のようなものだが、Mint Houseの客室は違う。Mint Houseの客室はまるでマンションの部屋のようであり、旅行者はそれに注目している。

新型コロナのパンデミックにより、Mint Houseの業務形態が変わったが、各国で経済再開が始まる中、同社は出張者と観光客を迎え入れる状態にある。

Mint Houseは2017年に創業し、サービスを拡大しながら2019年には1500万ドル(約16憶円)の資金を得た。当時、Revolution Venture(レボリューションベンチャー)の管理パートナーでMint Houseの投資家であるTige Savage(タイグ・サベージ)氏は同社について「Mint Houseはホテルの良いところとAirbnb(エアビーアンドビー)の良いところだけを併せ持つ最高のホテルだ」と説明した。

同社は従来のホテルとは異なり、Airbnbで借りられる部屋のような客室を提供しているが、ホテルのようなサービスも提供しているのだ。Lyric(リリック)と呼ばれる別の企業も同様のサービスを提供しようとし、最終的に廃業する前に 1億5000万ドル(約164億円)調達していた

Mint Houseはそもそもセカンダリーマーケット(訳者注:ニューヨーク市以外)の出張者をターゲットにしていた。新型コロナが流行する前は主にインディアナポリス、デンバー、ナッシュビル、マイアミ、デトロイトで部屋を提供していた。Mint HouseのCEO Will Lucas(ウィル・ルーカス)氏は当時、こうした市場は、主な市場よりも宿泊状況が悪い場合が多いため、機会があったと説明した。

コロナ禍により、Mint Houseの軌道に変化があった、とルーカス氏はTechCrunchのインタビューで語った。パンデミックになったばかりのころ、サービス業は落ち込んだ。Mint Houseでも利用率が60%から一桁台に落ち込み、顧客への返金に応じて、従業員を一時解雇する必要があった。だが新しい営業チームメンバーを通じて徐々にMint Houseの提供するサービスがパンデミックに適していることがわかった。職場に行けなくなった人々は住む場所と仕事をする場所が必要だったのだ。出張する医療専門家には、第2の我が家が必要になった。一部の大学生は学生寮から追い出されても、授業には出席しなければならなかった。Mint Houseのマンションの一室のような客室は、キッチンといえばコーヒーメーカーと小さな冷蔵庫だけといった従来のホテルの客室と比べて、魅力的なものであった。Mint Houseの客室には、キッチンとリビング、そして最近需要が高まっている仕事スペースが付いているのだ。

パンデミックの状況に慣れてくると、Mint Houseでは宿泊数に大きな変化が見られた。コロナ禍になる前の平均宿泊数は4泊だったが、コロナ禍における平均宿泊数は21泊であった。これは宿泊者のニーズが変わったためだ。会議のために飛ぶ代わりに、長期的にリモートで働く場所が必要とされていた。パンデミックの真っただ中では、宿泊客の81%がリモートワーカーであった。

Mint Houseの主な特徴は、ソーシャルディスタンスを実践するためのようにも見えるが、これはパンデミックの前から採用されていたものだ。宿泊客はフロントデスクでチェックインをする必要がなく、カードキーもない。また食品等を注文して、到着前に部屋に運んでもらうようにできる。このサービスはビジネス旅行者用のホテル以外ではほとんど見かけることはないが、今や観光旅行者にも需要がある。またすべてのロケーションでカスタマーサービスが一元化されている。

2020年はサービス業のほとんどが弱っていたが、Mint Houseはすばらしい成長を遂げていた。パンデミックが始まってから数カ月後、Mint Houseの利用率は新記録を達成した。6月までには、客室の84%が予約で埋まり、2020年はその後も平均して80%以上の利用率を保った。また2020年後半にはポートフォリオを50%以上倍増し、成長した。

パンデミックのどん底からおよそ1年経った現在、Mint Houseは13の市場で24棟のホテルを展開している。

同社はニューヨーク市内では大手と競合しているとCEOのルーカス氏は言及した。

「ニューヨーク市内では2021年、平均して2.2倍のRevPAR(販売可能客室売り上げ)を上げている」と同氏。「当社のCompSet(競合社、この場合は競合ホテル)は、2つのThompson(トンプソン)ホテル、3つのMarriott(マリオット)ホテルとHilton(ヒルトン)ホテルなど、非常に手ごわい大手ホテルだ。当社は利用率ナンバーワン、ADR(平均販売価格)ナンバーワンで、総合してもCompSetを上回っている」。

ルーカス氏は、これらのランキングはMint Houseの強みと従来のホテルブランドからの差別化を示していると確信しているが、さらなる成長のために老舗ホテルブランドからエグゼクティブを迎え入れた。

Mint Houseは最近、新しく数名のエグゼクティブが加わったことを発表した。Domio(ドミノ)、Hilton(ヒルトン)、MGM Hospitality(MGMホスピタリティー)、Marriott(マリオット)で働いていたJim Mrha(ジム・マルハ)氏をMint HouseのCFOとして迎え入れ、TPG Hotels & Resorts(TPGホテルズ&リゾーツ)とStarwood(スターウッド)の元投資担当者兼エグゼクティブのPaul Sacco(ポール・サッコ)氏は最高開発責任者(CDO)として加わった。また、トラベルeコマーススタートアップPorter & Sail(ポーター&セイル)のエグゼクティブであったJess Berkin(ジェス・バーキン)氏は新しくマーケティングおよび通信のエグゼクティブに就任した。

「当社はこれから本当に猛進すると思う」とルーカス氏は自慢げに語った。

世界が再開へと進む中、Mint Houseはアグレッシブな成長戦略に取り組もうとしている。同社は販売可能客室数を倍増し、1カ月以内のロンドンへの進出から初め、最終的には南米まで、全国に進出することを考えている。

2021年も半分を過ぎ、パンデミックも落ち着く中で旅行が再び変化し始めている。Mint Houseの平均宿泊数は2020年の21泊から6泊程度に下がっている。ルーカス氏によると、これは観光旅行者が増加しており、短期出張も戻っている。そしてホームオフィスから離れて、マイアミなどの新しい場所でリモートワークをする新しいタイプのビジネス旅行者もいる。

Mint Houseはホテルと、Airbnbが提供するような短期レンタルの中間に位置付けられる。ホテルが提供する利便性と信頼を提供しながら、短期レンタルのスタイルと心地よさも提供するのだ。同社がその計画を遂行できるのであれば. 最近行ったエグゼクティブの雇用が役に立つはずで、ニューヨーク市内、そして全米ならびに世界でHiltonやMarriottと十分に渡り合っていける。

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カテゴリー:その他
タグ:ニューヨークホテル新型コロナウイルス

画像クレジット:Mint House

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(文:Matt Burns、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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