OCRに代わるAIによるデータ抽出・入力で事務処理をテック化するRossum

請求書など各種帳票からの毎日のデータ入力は大変骨の折れる作業だ。これを解決するには、従来の光学式文字認識(Optical Character Recognition、OCR)とそのソフトウェアを使うのをやめて、新しい形の機械学習に文書を読ませて処理をスピードアップすればいい。そう考えたRossumは、認識によるデータ捕捉(Cognitive Data Capture)と呼ばれる技術を利用して、コンピューターに人間と同じような文書理解能力を教える。同社のAIツールは、人間が読んで入力するよりも6倍も早くデータを取り出し、その部分の費用を最大80%節約する。

同社はMitonとStartupYardから100万ドル(約1億800万円)のプレシード資金を獲得し、さらに最近ではロンドンのLocalGlobeがリードするラウンドで350万ドル、合わせて450万ドルを調達した。後者のラウンドにはSeedcampも参加した。

多くのエンジェルたちもこの投資に参加した。Twitterの元戦略担当副社長でAirbnbやSquare、Pinterestなどにも投資しているElad Gil(エラド・ギル)氏、WishやLyftにも投資している元Yelpのエンジニアリング上級副社長であるMichael Stoppelman(マイケル・ストッペルマン)氏、WishとGet Roomの投資家でアドバイザーで元Twitterのエンジニアリング担当ディレクターのVijay Pandurangan(ビジェイ・パンドゥランガン)氏、FlexportとImport Geniusの創業者でCEOのRyan Petersen(ライアン・ピーターセン)氏が名を連ねる。

Rossumのソフトウェアは、いずれも元AIの博士課程の学生だった同社の3人の共同創業者、Tomas Gogar(トマス・ゴーガー)氏とPetr Baudis(ペトル・バウディス)氏、そしてTomas Tunys(トマス・タニーズ)氏が作っている。バウディス氏の仕事は、2016年のAlphaGo AI(囲碁AI)の歴史的勝利に関するGoogleの科学論文にクレジットされている。

ただしRossumの狙いは、人間を追い出すことではなく、人間の仕事をスピードアップして企業の顧客に対する柔軟性と信頼性を増すことだ。また社員の力を、複雑な仕事や創造性を要する仕事に振り向けることにある。Rossumによると、同社のソフトウェアの読み取り精度は平均95%ぐらいなので、どのデータ欄に関しても人間労働者からのフィードバックが必要だ。フィードバックをもらうたびにソフトウェアは学習して精度を高める。

Rossumのプロダクトはすでにあらゆる大陸の企業が使っており、その中にはSiemensのようなFortune 500に入る企業もある。Rossumの現在のシステムは主に請求書や納品書などの処理に利用されている。でもその技術は、会計経理やロジスティクス、保険、不動産管理などさまざまな分野の文書を処理できる。今回の投資は複数の分野向けの技術開発と米国にオフィスを開くなどグローバルな事業拡張に使っていく計画だ。

共同創業者のゴーガー氏によると、「テクノロジーはデータ入力を容易にし低コストにすべきだが、今はまだ古いシステムに依存している企業が多く、彼らのニーズは満たされていない。Rossumはこの問題を複雑で不格好な統合不要、デベロッパーチーム不要、そして高いコスト不要で解決する」という。

SeedCampのReshma Sohoni(レシュマ・ソホニ)氏は「Rossumの技術はビジネスのやり方を抜本的に変える。変革を目指す情熱と高度なスキルを持つチームが、今後もっと多くの企業にAIによるデータ抽出技術を広めて、彼らのコストと時間の節約に寄与していく様子を協力者として間近で見られることは実に素晴らしい」と語る。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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