PayPalが仮想通貨でオンライン精算できる新機能を導入、まずは米国で

PayPal(ペイパル)は米国3月30日、消費者が何百万というオンライン事業者のサイトで仮想通貨を使って精算できる新機能「Checkout with Crypto」の立ち上げを発表した。機能の拡大は、PayPalが現在行っている仮想通貨マーケットへの投資の一環であり、投資の中には顧客がさまざまな仮想通貨の売買や保持ができるようにするためのPaxosとの提携も含まれる。また、直近の動きとしては仮想通貨セキュリティスタートアップCurvの買収がある。

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PayPalによると、仮想通貨を持つ米国の顧客は数百万の事業者との取引で自身が所有する仮想通貨を使って精算できるようになる。PayPalはこのサービスを今後数カ月で世界中の同社の顧客、2900万のオンライン事業者に拡大する計画だ。この機能には追加のインテグレーションや手数料はない。

実質的には、Checkout with Cryptoでは顧客が精算時にPayPalを通じて仮想通貨を売却し、その後米国ドルで実際の決済を行えるようにする。事業者側には何ら変更はない。事業者はこれまで同様、仮想通貨ではなく米国ドルで支払いを受ける。しかしPayPalの機能ではこうした決済がこれまでと同じ精算の流れで行われるようになっており、買い物客が簡単に仮想通貨を使ってすばやく買い物できるようにしている。

立ち上げにあたっては、Bitcoin(ビットコイン)、Litecoin(ライトコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Bitcoin Cash(ビットコインキャッシュ)を扱う。しかしそれぞれの決済で使えるのは仮想通貨1種類のみだ。

顧客がオンライン購入の支払いをするのに十分な仮想通貨を持っている場合、銀行口座やPayPal残高、クレジットカード、デビットカードといった従来の決済方法とともにCheckout with Crypto機能が表示される。他の決済方法と同様、Checkout with Cryptoは詐欺防止や対象となるアイテムの返品・購入保護を含むPayPalの安全とセキュリティ保障の対象となる、と同社は記している。

決済が終わると、客は仮想通貨の売却の記録と決済レシートを受け取る。

同社は仮想通貨マーケットに参入した2020年、仮想通貨での決済のサポートを開始する計画を発表していた。その際、仮想通貨売買サポートを開始した後、2021年に精算機能を立ち上げると述べている。

同社は現在、顧客が仮想通貨を買ったり売ったりする際に決済手数料をとることで収益を上げている。これが、販売業者側から手数料を徴収しない理由だ。

PayPalのサービス立ち上げは仮想通貨が実社会での購入に使える場所を大幅に増やすのに役立ち、デジタル通貨の浸透を加速させるのにもひと役買うかもしれない。

同社の上級副社長であるJim Magats(ジム・マガッツ)氏によると、事業者にとって仮想通貨を決済オプションとして提供することは、歴史的に統合要件、テクニカルの障壁、消費者の間での一般的な認識の欠如のために難しかった。

「Checkout with Cryptoでは、事業者が決済手法として仮想通貨の売却の手続きを受け入れられるようにします。すべて現在のPayPal統合の中で行われ、事業者が追加で何かする必要はありません」とマガッツ氏は述べた。「顧客との間で行われる仮想通貨の売却や変換はPayPalが受け持ちます。そして事業所に購入代金を米ドルで渡すことで、事業所側のプロセスを合理化しています」。

PayPalの今回の動きは、先のTeslaの発表から間もない中でのものだ。Teslaは米国の顧客がビットコインを使ってTesla車を購入できるようになったと明らかにした。そして日本のeコマース大手楽天のニュースもあったばかりで、ユーザーは日本のオンライン事業者からの購入を仮想通貨を使って精算できるようになると発表した。そしてVisaも3月29日に仮想通貨を使った決済を導入すると発表している

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「デジタル決済とデジタル通貨の使用は加速していて、PayPal顧客にPayPalウォレットを使った支払方法で選択肢とフレキシビリティを提供する一方で、Checkout with Cryptoの導入で仮想通貨が主流のもになるよう当社は引き続き注力します」と社長のDan Schulman(ダン・シュルマン)氏はCheckout with Crypto立ち上げについての声明で述べた。「世界中の事業所での購入に仮想通貨を使えるようにすることが、デジタル通貨のユビキタスと一般受け入れを促進するという点で次のステップとなります」と付け加えた。

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:PayPal仮想通貨

画像クレジット:PayPal

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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