PayPalが仮想通貨の対応やHoneyの統合など2021年のデジタルウォレット計画の詳細を公表

PayPal(ペイパル)は今週、そのデジタルウォレットプラットフォームと、PayPalおよびVenmo(ベンモ)のアプリに関する将来の展望を公表した。米国時間11月2日に行われた第3四半期の収支報告にて、同社は2021年中に、そのモバイルアプリの大幅変更を行い、大量の新機能を盛り込む計画だ。それには口座振り込み、小切手の現金化、予算管理ツール、請求書の支払い、仮想通貨の対応、サブスクリプションの管理、後払い機能そしてHoney(ハニー)の買い物ツールを全体的に統合することなどが含まれる。

PayPalでは、以前からHoneyの機能をPayPalに取り込む計画を明らかにしていたが、CEOのDan Schulman(ダン・シュルマン)氏は、2019年に40億ドル(約4180億円)で買収(未訳記事)した、お得な買い物情報が探せるプラットフォームであるHoneyの統合で何を目指しているのか、またそれやその他のアプリのアップデート計画に関する詳細を公表した。

Honeyの買収によって、PayPalには月間1700万のアクティブユーザーを獲得した。これらのユーザーは、Honeyのブラウザ拡張機能とモバイルアプリを利用し、欲しい商品が最もお得に買える店の検索や価格比較などを行っている。

しかし、いまだにHoneyのサービスはPayPalからは独立した形で運用されている。そこを2021年には変えたいとPayPalは考えた。

シュルマン氏は、同社のアプリをアップデートしてHoneyの買い物ツールを組み込むと語る。欲しい商品を追跡できる「欲しいものリスト」や、割り引きや値下げを知らせたり、クーポンやオマケなどのお得情報を知らせてくれる価格監視ツールなどだ。これらのツールが、PayPalの決算ソリューション本体に統合される。

こうすることでPayPalは、顧客がお得情報の検索を開始した時点からトラッキングを開始できるため、顧客の特定の商品への興味を知り、彼らに的を絞った割り引きなどの特典を示して、商品の代金支払いまでの一連の体験を1カ所で提供できるようになる。

PayPalはさらに、Honeyのツールを利用した顧客のエンゲージメントに基づく「匿名需要データ」を販売業者に提供し、売上げ向上に協力すると話している。

しかもPayPalは、Honeyの統合とその他の計画中のアップデートを、2021年中に実施するようスケジュールを設定している。

Bill Pay(請求書の支払い)は、2020年11月からスタートするとPayPalは話している。デジタルウォレットの利便性に関する大幅なデザイン変更は2021年前半に実施される予定だ。新機能は、そのほとんどが2021年の第2四半期と後半に導入し、変更の大半は来年末までに完了することを目指している。

この変更には、PayPalの仮想通貨への対応も含まれることが、10月末に発表されていた。同社では、手はじめに米国内でBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Bitcoin Cash(ビットコイン・キャッシュ)、Litecoin(ライトコイン)に対応する。

収支報告でシュルマン氏は、PayPalがいつ、幅広い利用者や地域に仮想通貨をもたらすかについて投資家に語った。それによると、仮想通貨の購入、販売、保管は、まず米国内で開始し、後に国際市場に拡大、そして2021年前半にVenmoアプリに対応するとのことだ(現在、PayPalでは米国内の利用者を対象にアプリの仮想通貨機能の予約を受け付けている)。

仮想通貨の購入、保管、販売機能といった今後のPayPalのユーザーエクスペリエンス(画像クレジット:PayPal)

この変更によりPayPalの利用者は、同社の2800万件の販売業者から仮想通貨で買い物ができるようになる。その際、業者側には一切の追加的統合の手間をかけることがない。これは、決済プロセスの扱い方によって可能になると同社は説明している。利用者は、PayPal提携業者に支払いを行った時点の相場に従い、即座に仮想通貨を不換通貨に換金できるというものだ。

「このソリューションでは、消費者と販売業者のどちらの側にも、新たに何かを統合する必要や、価格変動リスクや増分取引手数料の心配がありません。基本的に仮想通貨の利便性を高めるものです」とシュルマン氏。「これは、規制当局と協力しながら新しい形態のデジタル通貨を受け入れることから期待されるチャンスの始まりに過ぎません」と彼は言い加えた。

PayPalは、最近になって、代金を4回の分割払いにできる「Pay in 4」(ペイ・イン・フォー)プログラムで「代金後払い」の競争に加わった。このサービスは、今年8月にアメリカに導入される以前に、フランスでスタートしている。その後、イギリスにも導入された(こちらは3回払いのPay in 3)。これも、数カ月以内に同社のアプリに統合される。

2021年の収益が9億ドル(約940億円)に達すると自身が見込むVenmoは、ビジネスプロファイルを拡大させ、より一般的な金融ツール、買い物ツールとしての仮想通貨の可能性を高め、さらには「Pay with Venmo(Venmoで支払う)」による決算体験も改善させることになるだろう。

シュルマン氏は、VenmoとPayPalのアプリを「根本的な改革」として見直す同社の計画も示唆していた。来年1年をかけて行われる変更にともない導入される大量の新機能と新しいユーザーエクスペリエンス、つまりはデザインの変更により、別のアプリを乗り換えたり、デススクトップ版ブラウザを使ったりすることなく、1つのエクスペリエンスから新しいものへ、利用者が簡単に移行できるようにするのが目的だ。

今週発表されたPayPalの収支報告にウォール街は落胆し、2021年度ガイダンスが示されなかったことで株価が落ち込んだ。しかし、PayPalのデジタルウォレットアプリの2021年は、おもしろいことになるはずだ。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:PayPal仮想通貨

画像クレジット:PayPal/Honey

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(翻訳:金井哲夫)