PayPalは英国にまで暗号資産の購入、所有、売却のサポートを拡大

PayPal(ペイパル)は、暗号資産(仮想通貨)の購入、所有、売却を初めて米国以外のユーザーに提供する。同社は米国時間8月23日、英国のユーザーがBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Litecoin(ライトコイン)、Bitcoin Cash(ビットコイン・キャッシュ)の4種類から暗号資産を選び、連携している銀行口座またはデビットカードを使って購入できる新サービスを発表した。

同社は2020年秋、Paxos Trust Company(パクソス・トラスト・カンパニー)と提携して、まず米国内で暗号資産サポートをスタートした。サービスは2020年11月中旬には米国の全ユーザーに公開された。PayPal傘下のVenmo(ベンモ)も今春、暗号資産サポートを追加した。

英国で暗号資産を利用したい顧客は、PayPalのウェブサイトまたはモバイルアプリを通じて購入できる。そこでは事前に決められた購入額の中から選ぶか自分で額を入力できる。暗号資産は、ユーザーが望めば、1ポンド(約151円)から購入できる。ただし、 暗号資産の購入または売却には所定の手数料および為替手数料がかかる、と同社は注記している。手数料は売買される暗号資産の額によって異なる。

新しいサービスの内容そのものは米国内のサービスと概ね変わらないが、1つだけ例外がある。PayPalは、英国ユーザーの取引高制限の調整についてTechCrunchに語った。開始当初、1回の暗号資産購入の上限は1万5000ポンド(約225万7600円)に設定されている。米国では開始当初、1週間の購入限度を2万ドル(約219万4300円)に設定していた。しかし、2021年7月に限度額を10万ドル(約1097万1700円)に引き上げるとともに年間購入額制限を撤廃した。

また同社は暗号資産の最初の海外進出先が英国である理由について、当地がフィンテックハブであること、およびPayPalの世界第2位の市場であり、消費者顧客の大規模な基盤があるからだとTechCrunchに話した。

「私たちは英国の暗号資産エコシステムをさらに発展させる手助けができると考えています。米国でこのサービスに高い需要があることはわかっていました。それでも、PayPalのアプリ内暗号資産サービスに対する顧客エンゲージメントの大きさには初日から驚かされました」とPayPal広報担当者は語った。「サービス開始以来、当社ユーザーの驚くべき、かつ持続的なエンゲージメントが続いています。当社の米国プラットフォームで暗号資産を購入、所要、売却する消費者は、以前の2倍の頻度でログオンしています」と広報担当者は付け加えた。

暗号資産は、今後数カ月のうちに公開が予定されているPayPalの来るべき「スーパーアプリ」の主要機能でもある。

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他の暗号資産サービスをいつ、あるいはいつか英国でも展開するかについて同社はコメントしなかった。最近提供を開始した「Checkout with Crypto」(暗号資産でチェックアウト)がその1つで、ユーザーは所有する暗号資産を使って無数のオンラインショップでチェックアウトできるようになる(取引に必要な暗号資産は事前に不換通過に変換しておく)。しかしPayPaylは、英国で追加機能を提供する前に、まず新機能を使った暗号資産の購入、保持、売却を現地顧客がどう受け入れるかを観察、学習したいと語った。

自社アプリでの暗号資産サポートに加えて、PayPalのベンチャーキャピタル部門は過去数カ月間に暗号資産とプロックチェーンにいくつか投資を行った。暗号資産リスク管理ソフトウェアのTRM Labs(TRMラボ)のシリーズAに1400万ドル(約15億4000万円)、デジタル資産取引インフラストラクチャー会社、Talos(タロス)のシリーズAに4000万ドル(約43億9000万円)、および暗号資産税務ソフトウェア会社のTaxBit(タックスビット)のシリーズAに1億ドル(約109億7000万円)を投資している。

「パンデミックは私たちの生活全般にわたってデジタルの変化と変革を加速しました。金銭のデジタル化や消費者のデジタル金融サービス利用の拡大もそうです」とPayPalのブロックチェーン・暗号資産・デジタル通貨担当ゼネラルマネージャー兼パイスプレジデントであるJose Fernandez da Ponte(ホセ・フェルナンデス・ダ・ポンテ)氏が声明で語った。

「PayPalの世界展開力、デジタル決済の専門知識、および消費者と企業に関する知識に、堅牢なセキュリティとコンプライアンス管理が組み合わさることで、英国の人々が暗号資産を探求するのを手助けする独自の機会と責任が当社に与えられました。今後も英国および世界中の規制当局と密に協力することで、当社のサポートを提供し、将来の世界の金融と商業におけるデジタル通貨の役割を明確にするために意味のある貢献を続けていくことに注力します」。

現在PayPalは、英国以外に米国のハワイ、米国海外領土を除く地域で暗号資産をサポートしているが、世界中の認可・規制された暗号資産プラットフォームおよび中央銀行と提携を結ぶことでデジタル通貨の可能性を探求していくと語った。

画像クレジット:Dan Kitwood / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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