PayPal創業者率いるフィンテックAffirmに約1600億円の増資観測

消費者向け金融会社がまた1社、創業以来最大の増資観測で投資家の注目を集めている。

PayPalのMax Levchin(マックス・レブチン)氏が創業したAffirm(アファーム)が、同社の資金調達の動きに詳しい筋によると、デットとエクイティの組み合わせで最大15億ドル(約1600億円)を調達するとのことだ。Josh Kushner(ジョシュア・クシュナー)氏が立ち上げたニューヨークのベンチャーキャピタルであるThrive Capitalが資金調達をリードするとみられている。サンフランシスコのSpark Capitalも参加する見込みだ。

Affirmはコメントを控えた。Affirmの既存株主であるThriveとSparkの代表も、コメントの要請に対し沈黙している。

Affirmは、これまでの典型的な個人向けローンやクレジット提供に代えて、消費者がオンラインで買い物をするときにファイナンスを提供する。Affirmに近い情報筋は、今回のラウンドの大部分が大規模な金融機関からのクレジットライン、いわゆるウェアハウス・ファシリティ(短期で回転する資産を担保にした貸付)で調達されると推測する。

Affirmは4月にThriveがリードしたシリーズFラウンドで3億ドル(約320億円)を調達したばかりだ。その際のバリュエーションは30億ドル(約3200億円)だった。しかし、融資とその回収が本業であるフィンテック企業は事業を維持するために膨大な資金を必要とするため、さらに資金を必要とするというのはあり得る話だ。投資マネーが余り気味な現状ではベンチャーキャピタルも応じるはずだ。

PitchBookによると、AffirmはこれまでRibbit Capital、Founders Fund、Andreessen Horowitz、Khosla Ventures、Lightspeed Venture Partnersなどから10億3000万ドル(約1110億円)を調達した。参考情報として、フィンテック「ユニコーン」クラブのBrex、Stripe、SoFi、Kabbageは、これまでにデットとエクイティ合わせて約50億ドル(約5390億円)を調達した。

Affirmは、オンラインで買い物をする消費者に分割払いプランを提供する。従来、車や高級家電などの大きい買い物に利用されてきた後払いの方法だ。消費者がAffirmを利用すれば、StockXで販売されているスニーカーからDiamond Nexusのダイヤモンドの婚約指輪まで、自身にあった分割払いプランを設計することができる。

Affirmはクレジットカードに代わる役割を目指し、加入時の各種書類への記入や、加入に必要なクレジットスコア(クレジットの信用度を表す指標)または収入額の最低基準を消費者に求めない。同社はクレジットカード会社と同様の収益を上げており、Affirmの貸出利率は10%から30%の範囲だ。

Affirmの資金調達は、消費者向けおよびB2Bの貸付に注力する企業が増えている傾向を象徴している。AffirmはB2Bビジネスにも力を入れており、今年初め、企業向けの新しい金融サービスビジネスを生み出した。Resolveという会社で、B2Bの販売フローに合わせて、企業が「今すぐ購入、後で支払い」できるサービスを提供する。

「従来のB2Bの資金調達には時間がかかり、不正確で、ビジネスが成長する可能性を制限している。電子メール、コールセンター、ファックス、および手作業の請求プロセスに過度に依存しているからだ」と、Resolveは4月のプレスリリースで説明している。「多くの企業は、標準の支払いサイトである30日という日数を、取引実績のある優良な一部の顧客にのみ提示する。その他の顧客は資金の手当てをクレジットカードや分割払いローンに頼らざるを得ない」。

StripeやSquareなどの企業は、金融サービスにおける他のフロンティアを開拓している。Stripeは今月、企業向け資金調達ツールコーポレートカードビジネスをそれぞれ立ち上げた。Squareは最近、Square Cardと呼ばれる新しいデビットカードを導入した。企業はSquareを通して回収した資金を引き出し、すぐに使うことができる。

米国に本社を置くフィンテック企業へのベンチャー投資は、過去最高水準に達する勢いだ。2019年は8月までに105億ドル(約1兆1300億円)がこのセクターに集まった。2018年は通年で過去最高の116億ドル(約1兆2500億円)だった。PitchBookによれば、世界的にも、フィンテックへの投資が増加しており、今年の調達額は200億ドル(約2兆1500億円)に迫っている。

フィンテック業界の競争が成長と革新を加速している。消費者にやさしく、ストレスを与えないツールが、保守的で高度に規制された金融業界を浸食しつつある。

フィンテックのメガラウンドが相次いだ今年に続き、来年すぐにフィンテック関連のIPOが続くと予想される。Affirm、Robinhood、Stripe、SoFi、Coinbaseなどが注目の企業だ。

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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