PinterestのARショッピング機能が家具やインテリアにも拡大

Pinterest(ピンタレスト)の新機能は、拡張現実(AR)を使って、家具やその他のインテリア用品が自分の家でどのように見えるかを、消費者が確認できるようにする。同様の技術は、Amazon(アマゾン)、IKEA(イケア)、Wayfair(ウェイフェア)などの大手小売業者や、Houzz(ハウズ)のような住宅デザイン分野の企業によってすでに実用化されている。Pinterestの場合、Crate & Barrel(クレート&バレル)、Walmart(ウォルマート)、West Elm(ウェストエルム)、Wayfairなどの米国の小売業者と協力して、オンラインの買い物客がPinterestアプリの「Lens camera(レンズカメラ)」を使って自宅に仮想的に商品を配置できるようにする。そして、ユーザーが気に入れば、小売店から直接商品を購入することができる。

このインテリアのバーチャルショッピング体験は、米国で8万以上のショッパブルピンで開始され、Pinterestにとってこれまでで最大のARショッピングへの投資となる。

また、これは、Pinterest が過去2年間に発表した「Try On(トライオン)」の3つ目の製品でもある。最初の試みは美容市場で、消費者がさまざまな口紅の色合いやアイシャドウを仮想的に試すことができるトライオン機能で、合計1万4000のショッパブルピンを提供した。Pinterestはまだ、部屋の中に直接商品を置くことはやっていなかった。つまり、ユーザーの顔の上にだけ商品を置いていたのだ。これまでと同じ技術ではないが、Pinterestのトライオン体験はすべて、商品のインスピレーションを購買につなげるという同じ目標を掲げている。

iOSまたはAndroidでこの機能を利用するには、米国のユーザーは、サポートされているホームデコレーションのピンをクリックし「Try in your Space(トライ・イン・ユア・スペース)」をクリックすると、カメラレンズを通してバーチャル製品を見ることができる。ユーザーは、自分のスペースで製品を調整し、価格などの製品情報を閲覧することができる。購入する場合は、再度ピンをクリックし、販売店のウェブサイトのレジに進む。

画像クレジット:Pinterest

このように、消費者の気軽なブラウジングを小売の取引につなげる試みは、Pinterestが長年にわたって力を入れてきたものだ。しかし、同社は、例えば、買い物のインスピレーションとして、静止画像から動画への移行など、さまざまな市場の変化への対応が少なくとも最近までは遅れていた。2021年、同社は遅ればせながら、動画優先のデビュー商品「アイデア・ピン」をリリースしてこの分野に参入し、以来、オンラインインフルエンサーが自分のコンテンツから収益を上げられるようにするためのクリエイターツールに投資している。

Pinterestはまた、家具やインテリアのショッピングのための新しいAR機能で、明らかに市場に先駆けているわけではない。しかし、ARショッピング市場はまだ初期段階だ。この市場では、Apple(アップル)のARKitのように、AR開発者が利用できるツールによって初期の導入が制限されており、時間の経過とともに着実に改善され、エンドユーザー体験が煩雑でなくなってきているのだ。また、アプリメーカーは、ARショッピングを消費者にアピールする方法をまだ探している段階だ。例えば先に、Snapchat(スナップチャット)は自社の AR 機能をアップグレードし、消費者が複数の商品をリアルタイムの価格で一度に閲覧できるショッピング・レンズが追加された

ARショッピングの初期の実験のいくつかは、よりギミック的なものに感じられたが、ARをうまく使えば、小売業者のコンバージョンを増やすのに役立つという兆候もある。そして、このような体験に対する消費者の需要もあるのかもしれない。例えば、2019年のGoogle(グーグル)の調査では、66%の人が買い物の際にARを使ってみたいと答え、ARに対する消費者の関心が示されている。実際の調査やコンバージョンに関するデータはより限定的なものだった。しかし、eコマースプラットフォームのShopify(ショッピファイ)は、自社の社内データを引用して、ストアに3Dコンテンツを追加しているマーチャントは、平均で94%のコンバージョン上昇を確認していると共有した。そして、ARで3Dモデルを使用した一部のマーチャントは、最大250%もコンバージョン率が上昇したとShopifyは述べている。また、同社は、Vertebrae(ヴァータブレイ)による2020年の調査を引用し、ARを利用する顧客は利用しない顧客と比較してコンバージョン率が90%上昇することを明らかにした。

一方、Pinterestは、自社のユーザーが「トライオン」可能なピンから購入する確率は、通常のピンの5倍であると述べている。また、2021年の検索クリック数は33.7億回で、ホームデコレーションがサイト内のトップカテゴリーであると述べている。そのため、この最新のARの取り組みは、ARビューティーショッピング機能よりも多くの利用者がいる可能性があるものとなっている。同社は、ビジュアル検索機能の利用が前年比126%増加したことをアピールしたが、総検索数については明確な数字を示さなかった。

「パンデミックが始まって以来、何百万人もの人々が意思決定プロセスの一環として、購入前に試したり、パーソナライズされたレコメンデーションを見たり、情報収集するための仮想およびモバイルオプションを期待しており、これまで以上にデジタルに精通した買い物客が増えています」と、Pinterestのエンジニアリング担当SVP、Jeremy King(ジェレミー・キング)氏は発表で述べている。「これらの行動は、毎日Pinterest全体で起こっています。だからこそ、私たちはAR Try Onのような技術を進歩させ続け、Pinterestを、アプリ内のどこでもインスピレーションから購入まで人々を導くフルファネルの買い物先にするのです」。

同社はTechCrunchに対し、現在、ARショッピング機能を収益化していないと語った。しかし、この取り組みにおける小売パートナーは、すでにPinterestでオーガニックと有料広告の両方の成功を収めているブランドであり、消費者が有機的に商品を発見するための別の方法を利用しようとしている。

ARショッピング機能は、発売当初はiOSとAndroidで米国のみだが、後にグローバル市場にも展開されるとPinterestは述べている。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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