pixiv、収益度外視のクリエイター向け無料ECサイト構築サービス

イラスト投稿サービス「pixiv」を運営するピクシブは、クリエイターがECサイトを無料で構築できるサービス「BOOTH(ブース)」を12月19日に公開する。初期費用や月額料金、販売手数料はゼロ。ピクシブの片桐孝憲社長によれば、自社の収益は考えず、「クリエイターを支援する一機能」と割り切っているのだという。ショップを開設するにはpixiv IDが必要となる。

BOOTHはpixivに投稿されているイラストだけでなく、書籍や同人誌、グッズ・手作りのアイテムのほか、イラストやゲーム、音楽、写真、動画、電子書籍といったデジタルコンテンツを販売できるプラットフォーム。商品登録数は無制限。サンプル配布向けの「ゼロ円設定」も可能だ。

BOOTHの倉庫で商品の保管・梱包・発送を代行するサービスも用意している。送料は一律700円。倉庫の保管費用は半年間無料、その後はサイズに応じて料金が発生する。現時点でサポートしている決済はクレジットカードのみだが、1月より銀行振込とコンビニ決済にも順次対応していく。

無料のECサイト構築サービスは国内では「STORES.jp」「BASE」などがあるが、BOOTHの強みは900万人以上が利用するpixivと連携している点だ。クリエイターはpixivのフォロワー(ファン)に自分の商品を通知できるほか、作品の検索結果画面や作者のプロフィールに商品を表示する機能も近々搭載する。今後はクリエイターの制作支援にも注力する。「例えば、自分の描いたキャラのぬいぐるみを作りたい!という要望にも応えていきたい」(片桐氏)。

片桐氏によれば、2007年にpixivをリリースした1、2年後くらいから、「pixivは作品の発表と販売の場にしたい」と考えていたという。このタイミングでBOOTHを公開したのは、「ユーザーが900万人を突破し、pixivを中心にしたECサービスでも成立する規模になったと判断したため」と話している。

クリエイターからは初期費用や月額料金、販売手数料を徴収しない。クレジットカード決済にかかる手数料(商品代金の3.6%+10円)は発生するが、当面はBOOTHでの収益は考えていないという。「今の予想では数年は大赤字ですが、将来的にpixivとの相乗効果でビジネスモデルを作っていきたいと思っています(笑)」。

pixivといえば、登録ユーザー数900万人突破を記念して、有料会員限定で提供していた一部機能を無料会員にも開放したところ、有料会員が大幅に減ってしまったことが記憶に新しい。「うちなんか一生収益化なんかできませんよ」と自嘲気味に語る片桐氏だが、BOOTHではpixivのユーザーが楽しく創作活動ができたり、作品の売買を介したコミュニケーションが生まれればと話している。


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TechCrunch Japan

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