Red Hat Enterprise Linux(RHEL) 7.0がリリース、デフォルトで10年保証を提供

Red Hatが今日(米国時間6/10)、同社Linuxディストリビューションの企業向け商用製品Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のバージョン7.0をリリースした。その主な特長は、Windowsとの相互運用性、新しいデフォルトのファイルシステム、Dockerによるコンテナ化、そして、今後のすべてのメジャー/マイナーなリリースを対象とする10年間保証だ。

LinuxのカーネルがRHEL 6.xの2.6.32から3.10にアップデートしたことも大きい。調査会社Forresterのインフラとオペレーション担当アナリストRichard Ficheraは、それはRHELの、待ちに待たれていた現代化が目的だ、と言う。

Ficheraは次のように言う: “カーネルを3.xにアップしたことは、SUSEに追いつき追い越す意味でも重要だ。顧客向けにも大量の便利な改良が提供されるだろう”。

Red Hatのマーケティング担当シニアディレクターMark Cogginは、10年保証によって顧客が得られる安定性と安心感も大きい、と語る。これはRed Hatの顧客へのコミットメントの真剣さを表しており、10年保証とはバグフィクスとセキュリティリリースと公式アップデートが今後10年提供される、という意味だ。

また今回のバージョンは、RHELのインストールと管理と展開を容易にすることにも力が注がれ、その一環としてWindows Active Directoryとの相互運用性、スクリプトによってアップグレードの過程を自動化、などの機能が導入された。Cogginは曰く、顧客先のシスアドはニーズの変化を十分に把握してから、それらに合わせてアップグレードのプロセスを進めなければならないが、今回はそのために役に立つ重要なツールをいくつかご提供した、と。カーネルの件も含めて、今回はかなり重要なバージョンアップだ、と彼は強調している。

Ficheraによると、そのために今回は、シスアドの仕事を楽にするという点で大きく進歩したという。“RHEL 7ではインストールが簡単になり、管理のオーバヘッドが下がり、ユーザがすぐに使い始めることのできる既存のRHELからの更新や、ロールバック、それに、“プロファイル”と呼ばれる、用意されたテンプレートからの展開などが導入された。プロファイルでは、各種の構成オプションをワークロードの特性に合わせて指定できる。またインストールが終わると、大幅に改良されたランタイム管理とモニタリングの機能が提供され、ランタイムのパフォーマンスの最適化が図られる。

IDCでサーバとシステムソフトを担当しているAl Gillenは、重要なのはDocker対応化だ、と言う。“今回のリリースからDockerがデフォルトでサポートされたことの意義は大きい。サービスプロバイダや、アプリケーションの複数バージョン間のポータビリティを重視する顧客は、コンテナのサポートをとても便利に感じるだろう。 Red Hatの連中も、それを言っていた”。

デフォルトのファイルシステムが、EXT4からXFSに変わった。ただし、必要に応じてそのほかのファイルシステムもサポートされる。ForresterのFicheraは、この点が重要だと言っている:

“今のLinuxカーネルには、いろんなファイルシステムがある。もっとも多く使われているのが改良版(今では‘4’)のEXTファイルシステム、0.5PBまでの巨大なファイルをサポートするXFS、“Better File System”の頭字語btrfsのベータバージョン、などなど”。

RHELのメジャーアップデートは3年半ぶりだが、顧客のニーズはどこにあったのか。連続性を重視したゆるやかなアップデートが、望まれているのではないか。この点に関してIDCのGillenは、業界は二分している、と言った:

“Amazon Web ServicesやMicrosoft Azure、Google App Engineなどのプラットホームは利用の連続性を保証しつつアップデートを行わざるをえない。これに対して古典的なITショップは、何をいつどのようにアップグレードするかを個別にいちいち自分で意思決定する。どちらを採るか。今業界は、その分岐点に来ていると思う”。

彼の説では、今でも後者のやり方を必要とする企業はある。とくに、政府などの厳しい規制下にある業種の場合だ。Red HatのCogginによると、同社はアップデートの配布方法について検討しているが、顧客自身が具体的な要望を持っている場合も多い、と言う。

“うちは商用Linuxのマーケットリーダーで、大量の顧客がリリースの一定のリズムやライフサイクルを暗黙裡に期待している。ただし、そのライフサイクルの内容的な意味を、われわれベンダとしてはしっかり見定める必要がある”。同社はすでに、頻繁なリリースを必要とする企業には特殊なソフトウェアやツールセットを提供しているが、しかし大半の顧客は安定性を重視している。同社としては、両方のタイプのアップグレードパスを提供しなければならない、とCogginは言う。

Cogginによると、RHEL 7のベータに参加した顧客は1万弱だった。そして、とくに熱心だった60社からは、今後も継続的にフィードバックをいただいていく予定だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))
 


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TechCrunch Japan

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