Rinkak運営のカブクが7.5億円のシリーズA資金調達、「工場デジタル化」で追い風

3Dプリンタを使ったデジタルものづくりプラットフォーム「Rinkak」を運営するスタートアップ企業、カブクが今日、総額7.5億円のシリーズAの資金調達をクローズしたことを発表した。すでに4億円分についてはリードインベスターとなったグローバル・ブレインから2015年8月に先行して発表があったが、今回のラウンドには電通デジタル・ホールディングス三井住友海上キャピタルも投資に参加している。カブクは2013年1月創業で、TechCrunch Tokyo 2013スタートアップバトルのファイナリスト。これまでサイバーエージェント・ベンチャーズフジ・スタートアップ・ベンチャーズから2014年6月に2億円を調達するなど、エンジェル投資によるシードも含めると総額約10億円の資金を調達している。東京・渋谷に拠点を置き、社員は15人。

rinkak

Rinkakは、iPhoneケースやアクセサリ、フィギュアの3Dデータをクリエイターがアップロードし、それを消費者が購入するというマーケットプレイスだ。成果物の物珍しさと3Dプリンタという話題性からコンシューマー向けの印象も強いカブクだが、いまビジネスとしての伸びに手応えを感じ始めているのは、C向けのRinkakではなく、むしろデジタル工場向け(BtoF)のクラウド基幹システム「Rinkak 3D Printing Manufacturing Management Service(MMS)」なのだそうだ。

デジタル工場向けのセールスフォースのようなもの

カブク創業者の稲田雅彦CEOによれば、Rinkak 3D Printing MMSは「デジタル工場向けのセールスフォースのようなもの」で、製造業におけるサプライ・チェーン・マネジメントに相当する部分を担うシステム一式をクラウドで提供している。

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3Dプリンタの普及はプラスチックを溶かして造形するプロトタイピング向けのものからスタートしているが、2014年に産業3Dプリンタ関連の特許が切れて、キヤノンやリコーが産業プリンタを出荷し始めたことで現在は転回点を迎えているという。レーザーで溶かす、紫外線で硬化させるといった方式などにより、プロトタイピングではなく最終製品を作れる段階になってきている。

例えば、カブクがトヨタと共同で取り組んだi-Road関連のOpen Road Projectでは、パーツの一部は3Dプリンタによる「打ち出し」となっているが、素人目にはそれが従来のような金型や削りだしによって製作されたパーツなのか3Dプリンタによるものなのか区別が付かないレベルという。素材価格の低下とあいまって、3Dプリンタが適する領域が「プロトタイピング→少量生産→大量生産」と徐々に広がってきている。3Dプリンタを製造の本番に使おうという「マス・カスタマイゼーション」は、最近「インダストリー4.0」と言われはじめたトレンドにおける重要な1つのピースで、カブクの大型資金調達の背景には、この流れがある。

「弊社顧客の中に、例えば北米市場だと航空宇宙とか医療といった単価の高い領域で顧客がいて、年率50%以上伸びている工場もあります。最終製品を、従来のように削り出しで作ってロボットでアセンブリするというのではなく、3Dプリンタで作るという流れが出てきています。数千ロット以下なら3Dプリンタのほうが安いという現在の採算分岐点は、今後2、3年で数万とか、数十万ロットになっていくでしょう」(カブク稲田CEO)

コスト低下はコンシューマー領域でも起こっていて、2年前だとiPhoneケースを作るのに原価2000円強、売値5000〜6000円といった相場だったものが、現在では原価数百円で売値が1500〜2000円となりつつあるという。

ただ、コンシューマー領域はボリュームが大きくならないとビジネスとしては成立しないため、まだ市場の立ち上がりに時間がかかりそうだ。カブクがロフトと組んで多店舗展開している「ロフトラボ3Dフィギュアスタジオ」も、そうだ。これは102台のカメラと3Dプリンタを使って人物をまるごとフィギュア化する面白い取り組みで、将来的には、かつて駅前の写真館で写真を撮ったように、子どもの成長の記念として利用する可能性など市場の広がりが感じられるものの、まだまだこれから。

一方C向けに比べると、デジタル工場向けソリューションは、すでにニーズも市場の伸びも大きい。

背景にあるのは、3Dデータを扱う工場で、これまで利用されていたソフトウェアパッケージが、年間ライセンスだけで数千万円かかっていた上に、それを稼働させるPCが高スペックである必要があったこと。ちょうど、既存会計パッケージ市場にクラウドサービスのfreeeやマネーフォワードなど安価で使いやすいものが登場してきているのと同じ構図で、Rinkak 3D Printing MMSは、既存の専門パッケージソフトの領域をクラウドで置き換えつつあるのだという。このパッケージソフトの役割は、営業案件の管理に始まり、3Dデータの整合性チェック、製造装置の運用管理、後工程の処理、梱包作業などといった一連の業務を管理する統合システムだ。3Dデータのチェックについては、クラウドによる分散処理などにより、多くの資金を集めている米国スタートアップ企業のShapewaysにも負けていないと稲田CEOはいう。

既存パッケージ市場があるとはいえ、そもそも工場の受注・生産管理がデジタル化されていないケースも多く、紙のメモを使っている工場などもまだまだあるという。現在Rinkak 3D Printing MMSの顧客数は数百工場で月間30%ずつ伸びているというが、このうち8割は欧米顧客。日本の工場はデジタル化への対応が遅れていて、電話やファクスが現役ということも。トヨタやオリンパスといった企業の先進的な取り組みを横目に、徐々に製造業のマインドセットが変わりつあるのが現状だと稲田CEOは見ている。

カブクでは工場側を「サプライ・サイド」、法人であるか個人であるかを問わず製作を依頼する側を「デマンド・サイド」と定義していて、その両者が集まるマーケットを作っていくことで「モノづくりの民主化」を目指すという。ちょうど証券取引所をモデルにしてAdTechが興隆したように、デジタルモノづくりもマーケットとなるだろうという。もしマーケットとなって世界中のデジタル工場を繋げていくことができれば、データだけをやり取りして「現地生産」することで物流も最適化できるだろうと話している。

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TechCrunch Japan

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