Salesforceが約3兆円で買収したSlackとの初の統合を発表

2020年12月にSalesforceSlackを277億ドル(約3兆300億円)で買収したとき、Salesforceには大きな計画があるはずだと思わずにはいられなかった。米国時間8月17日、Salesforceは同社顧客の利便性を向上させる統合の第一歩を発表した。

SalesforceのSlack担当シニアバイスプレジデントであるRob Seaman(ロブ・シーマン)氏は、Slackは同社を前進させるコミュニケーションプラットフォームであると考えている。シーマン氏は「Slackを、Salesforceユーザーとそのコミュニケーション、業務、ワークフロー、プロセスとアプリにおけるメインのエンゲージメントの場にしたいと真剣に考えています」と語る。

同氏は「我々が今回発表するのは、セールス、サービス、マーケティング、分析に適したSlackのビジョンに対応する新しい機能です。こうした分野のために我々が取り組んでいるのは、この新しい世界においてセールス、サービス、マーケティングの組織をどのような形にできるか、どのような形にすべきかをベストプラクティスと体系化の両方に関して明確に示すことです」と述べた。

外部のエンタープライズアプリを統合できるSlackの優位性を活かすことで、連携してSalesforceのさまざまなタスクの高速化と自動化を図り、状況に応じて切り替えをしなくてもすばやく簡単に使えるようにすることを目指している。

手始めとして、Sales Cloudに専用のディールルームが設けられる。これは財務などの社内部門や製造チーム、外部パートナーなど、コンプレックスセールスに携わるあらゆる人がセールスサイクル全体を通してSlack内に集まり、販売活動全体の動きに関して常に最新情報を把握できる場だ。

シーマン氏は次のように説明する。「ディールルームは、SalesforceからSlack内で顧客やパートナーも含めて誰もがつながって効果的に業務ができる、とてもシンプルな方法を表したものと考えています。このような場面でSlack Connectは(外部パートナーを接続することができ)極めてパワフルです。結果としてセールスサイクルを劇的に短くできると思います」。Slack Connectは2020年に発表されたサービスで、これを利用するとSlackユーザーが社外の人とつながることができる。

統合すれば、複雑な取引に関わっているセールスチームのメンバーが日々最新情報を得ることができる。情報は自動でSlackに集められ、これには各人の日々のタスクリスト、ミーティング、取引の優先度などが含まれる。

サービスチームは、Salesforceがスウォーム(「群れ」の意)と呼ぶ部屋に集まり、具体的な質問や問題についてお互いに助け合うことができる。取扱製品が多い企業では、回答をすばやく得ることができて特に役に立つだろう。SalesforceのAIプラットフォームであるEinsteinで関連するコンテンツを推奨することはできるが、もっと具体的な質問があってそれに関する知識を持つ人がいるならスウォームが有用だろう。サービスチームのメンバーは、すばやく質問に答えたり問題を解決したりすることのできる専門家を検索してスウォームに招待することも可能だ。

マーケティング部門にも恩恵があり、Salesforceが2018年に買収したDatoramaを活用してインテリジェントなインサイトを得られる。マーケティングキャンペーンに変更があれば、マーケッターはSlack内で定期的に最新情報を把握できる。

そして、Salesforceが2019年に157億ドル(約1兆7200億円)で買収したTableauとの統合もある。こうして改めて見るとSalesforceは買収に貪欲な企業だ。マーケッターがキャンペーンの最新情報を把握するのと同様に、Tableauで重要と思われるデータがアップデートされるとすぐにSlackがアップデートされる他、重視している指標に関するその日のまとめもSlackで見ることができる。

シーマン氏は、今回の発表は第一歩でSlackとのさらなる統合は2021年9月に開催される顧客向けカンファレンスのDreamforceで、そして今後数カ月間で公表すると約束した。同氏は「これはほんの始まりで、今回発表したセールス、サービス、マーケティング、分析の4つの分野に関するSalesforceとSlackの統合は今後広がり続けます。そしてさらにSalesforceの(製品ファミリーである)あらゆるクラウドや業界向けソリューションも統合に取り組んでいます」と述べた。

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カテゴリー:ネットサービス
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画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

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TechCrunch Japan

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