SilviaTerraはカーボンオフセットの恩恵を世界中すべての土地所有者にもたらしたい

カーボンオフセット企業であるSilviaTerra(シルビア・テラ)の共同創業者であるZack Parisa(ザック・パリサ)氏とMax Nova(マックス・ノバ)氏は過去10年間、収益を生み出すカーボンオフセットへのアクセスを民主化する方法に取り組んできた。

森林クレジットがビジネスとして活況を呈している。ビジネスの脱炭素化に取り組む複数の世界最大級の企業による数十億ドル(数千億円)のコミットメントが背景にある。2人の創業者が10年間の人生を捧げ築き上げてきたテクノロジーは価値を増す一方だ。

すでに利益を計上している同社が外部から440万ドル(約4億6000万円)を調達したのはそうした理由による。資金調達はUnion Square VenturesVersion One Venturesがリードした。Salesforce(セールスフォース)の創業者であり、One Trillion Trees Initiativeを推し進めるMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏も参加した。

「気候危機に対処するための鍵は、いわゆる炭素循環のバランスを変えることです。私たちは現在、毎年約5ギガトンの炭素を大気中に追加しています。大気中の炭素は温室効果ガスとなり、宇宙に放射されずに留まるエネルギーが増え、地球が熱くなります」と、Union Square VenturesのマネージングパートナーであるAlbert Wenger(アルベルト・ウェンガー)氏はブログ記事に書いている。「減らす方法はたくさんあります。今後数週間でさまざまなアプローチについて説明します(二酸化炭素の直接回収や海のケルプの成長など)。私たちがよく理解している方法で、すぐに行動できる対象の1つは森林です。今日の世界の森林は、大気から年間1ギガトンを少し超えるCO2を吸収し、バイオマスに変えています。既存の森林の伐採や焼却(大規模な山火事の防止を含む)を止め、より多くの新しい樹木を植え始める必要があります。そうすれば、森林の潜在力は年間約4〜5ギガトンになります(ある推定では9ギガトンにもなります)」

2人の創業者にとって、新しく得た資金はパリサ氏が育ったアラバマ州北部の森で始まった長い旅の最新のステップだ。

ミシシッピ州立大学で森林科学を学んだ後、パリサ氏はイェール大学の大学院に通い、ケンタッキー州ルイビル出身のコンピューターサイエンスの学生であるマックス・ノバ氏と出会い、パリサ氏と一緒に後にSilviaTerraとなる会社を創業した。

SilviaTerraの共同創業者であるマックス・ノバ氏とザック・パリサ氏(画像クレジット:SilviaTerra)

2人は衛星画像とフィールド測定を組み合わせて、1エーカー(約4047平方キロメートル)ごとに森の木の大きさと種類を特定する方法を開発した。

最初のステップは米国内のすべての森林の地図を作成することだったが、2人の最終的な目標は、炭素市場を木材産業と対等な立場に置く方法を見つけることだった。地主は現金を得るために、木を切る代わりに森林を維持することがどれだけの価値になるかを知ることができるようになった。同社が指摘するように、森林の管理は以前は木材収穫の経済性が推進力となっており、米国では毎年100億ドル(約1兆400億円)以上が費やされていた。

SilviaTerraの創業者らは炭素市場も同じくらい大きくなる可能性があると考えていたが、ほとんどの土地所有者にとってアクセスが困難だ。カーボンオフセットプロジェクトを成立させるには20万ドル(約2100万円)もの費用がかかる可能性がある。これはパリサ氏自身の家族のような土地所有者が関わる小規模なオフセットプロジェクトやアラバマ州で彼らが所有する40エーカー(約16万1874平方キロメートル)の森の価値を上回っている。

パリサ氏とノバ氏は、小規模土地所有者が炭素市場から利益を得るには、より良い方法が必要だと考えた。

炭素経済を生み出すには、米国内のすべての木を記録する単一のソースが必要だった。SilviaTerraにはそうした地図を作成する技術があったが、地図を作成するための計算能力、機械学習の能力とリソースが不足していた。

そこで、Microsoft(マイクロソフト)のAI for Earthプログラムが登場した。

SilviaTierraはAI for Earthと協力して最初の製品であるBasemapを作成した。この製品はテラバイトの衛星画像を処理して、米国の森林地帯の1エーカーごとに木の大きさと種類を特定する。同社はまた米国森林局と協業し、そのデータにアクセスした。このデータは米国の森林資産の全体像作成に利用された。

Basemapのデータを使用して、同社は自然資本取引所と呼ばれるものを立ち上げた。このプログラムは、地域の森林に関してSilviaTerraが持つ比類のない情報へのアクセスと、そうした森林が現在どのようにプロジェクトに使用されているかについての情報を利用する。各プロジェクトは、もしオフセットマネーが入ってこなければ森に覆われていなかったであろう土地を示している。

現在、多くの森林プロジェクトは、そもそも森林に覆われることがなかったであろう土地を利用した合法的なオフセットとして購入者に提供されている。二酸化炭素排出量のオフセットとして、そうしたプロジェクトは実際には無意味で役に立たないものになっている。

「そこは血まみれです」と、業界における不正オフセットの問題の規模についてノバ氏はいう。「私たちは既存の森林炭素プロジェクトを再パッケージ化したり、需要側を既存のプロジェクトと結び付けようとしたりはしていません。テクノロジーの力で森林カーボンオフセットの新しい供給を解き放ちます」。

最初の自然資本取引所プロジェクトは、実際には2019年にマイクロソフトが始め、資金も提供した。その中で、20人のペンシルベニア州西部の土地所有者がプログラムを通じて森林炭素クレジットを生み出した。プログラムはオフセットが40エーカーの土地所有者にとって機能しうることを示した。

SilviaTerraのカーボンオフセットパイロットプログラムに関与する地主はマイクロソフトから支払いを受けた(画像クレジット:SilviaTerra)

「私たちは、すべての土地所有者の年間経済計画サイクルに参加しようとしているだけです」とノバ氏は述べた。「木材経済学にはあらゆる分野があります。そして私たちは次の質問に答える手伝いをしています。炭素の価格と木材の価格を踏まえると、計画されている木材の収穫を減らすことは理に適っているだろうか」。

2人の創業者は最終的に、森林の潜在的なカーボンオフセット値に関するデータを作成することで、土地全体の価値に対して支払える方法を見つけたと信じている。

炭素市場だけではない。SilviaTerraが作成したツールは、山火事の軽減にも使える。「私たちは適切なデータと適切なツールを持ち合わせて、適切なタイミングで適切な場所にいます」とノバ氏は述べる。「データをこれらすべての意思決定と経済性に結び付けるということです」。

SilviaTerra取引所の立ち上げにより、大規模な購入者はカーボンオフセットのために十分に調べられた情報源を得る。それはある意味でWrenようなスタートアップによって行われている仕事にとっては、企業として当然の帰結だ。WrenはUnion Square Venturesの別の投資先であり、消費者の日々の二酸化炭素排出量をオフセットすることに特化している。同様の森林オフセットを大規模に提供しようとしているPachama、3Degrees IncSouth Poleなどの企業の競争相手でもある。

バイデン政権下でカーボンバンクを設立するための議論が進行中であることから、オフセット企業にはさらに多くの機会があるとSilviaTerraの創業者らは述べた。米農務省が運営する既存のCommodity Credit Corp.を通じて設立されたカーボンバンクは、米国全土の農家と土地所有者に林業と農業のカーボンオフセットプロジェクトの費用を支払う。

「こうしたシステムには私たちが今利用している以上の価値があることを誰もが知っています」とパリサ氏はいう。「そのメリットを私たちが切り取って市場に送りだすものと同じレベルに置くまでは【略】価値は上がっていきます【略】絶対にそれは意思決定に影響を及ぼし、キャッシュで回収できます。これは必要とされているものを作るための米国沿岸部から米国中部への送金ポンプです」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:SilviaTerraカーボンオフセット資金調達二酸化炭素排出量

画像クレジット:Roine Magnusson/DigitalVision

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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