SNSやGitHubのデータから最適な人材を発掘、AIヘッドハンティングの「scouty」が公開

ソーシャルメディアや開発者向けサービスなどに公開されたエンジニアの情報。それを自動で収集し、AIを使って分析することで、最適な企業とマッチングする。そんな新しい切り口で、人材採用の仕組みに変革を起こそうとしているのが「scouty」だ。

2016年の秋からクローズドで公開されていた同サービスだが、5月25日よりオープンベータ版の提供が開始。クローズドベータ版の段階ですでに楽天やサイバーエージェント、freeeといった企業で導入実績がある。

またオープンベータ版の提供に先立ち、同社は2017年2月にInfinity Venture PartnersやCandle代表取締役の金靖征氏、その他個人投資家1名を引受先とした第三者割当増資により、総額約1億円の資金調達を実施している。

オープンデータを元に、自社に合った潜在転職者にもリーチ可能

冒頭でも触れたようにscoutyは、公開されているエンジニアの情報をもとに自社が会社の要件やカルチャーに合った人材をマッチングしてくれる「AIヘッドハンティングサービス」だ。

scoutyではTwitterやFacebookといったSNSやGitHubをはじめとする技術情報共有サービス、個人ブログなどで公開されているオープンデータを収集。同時に要件やカルチャーといった企業のオープンデータを取得した上で、過去の成約データも活用した独自のアルゴリズムを駆使して、最適なマッチングを図る。

履歴書の登録などが一切不要な一方で、経歴に加え公開しているコードやブログの投稿など、定性的な情報も含めて技術力をスコアリングし、マッチングの資源としている。

「『人工知能が、天職を探し出す。』をテーマに掲げているようにマッチングの質をとにかく重視している」と話すのはscouty代表取締役の島田寛基氏。ネット上にアウトプットを公開していないと一切スカウトはこないが、質の高いアウトプットを出していれば名だたる企業からスカウトされる可能性もある「実力主義のサービス」だという。

特徴的なのは、ユーザー側の登録が不要なため、転職サイトにはいないような人ともマッチングされる可能性があること。個人情報の観点などからGitHubなどでメールアドレスを公開している人のみが対象となるが、すでにscoutyには約80万件の候補者データがあるそうだ。(メールアドレスを公開していなくても、サイト上から申請すればスカウトを受け取ることが可能)

島田氏によると、これまでは人事担当者が何人も何人も候補者を検索して「ある意味で、数を打てば当たるという部分もあった」が、収集したデータから成約率が高そうな人材をマッチングすることで、担当者の負担も減らせるという。エンジニアとしても、趣向やアウトプットに基づいて「存在を知らなかったが実は相性がいい企業」と出会える可能性がある。

人材マッチングの課題をAIの力で解決

scouty代表取締役の島田寛基氏

scoutyは2016年の5月に創業されたスタートアップ。創業者の島田氏は京都大学でAIを研究した後、インキュベイトファンドに技術者として勤務。その後AIの研究が盛んなエディンバラ大学で人工知能修士を修了したという人物だ。

学生時代から、技術を世の中の課題解決に活かしたいという思いがあったという。高いデザインスキルを持った学生時代の友人が、大手企業に就職後その技術を活用できないポストについている現状を知り、人材業界の課題を感じたそうだ。

「会社ではExcelをいじるなどスキルを全く活かせない一方で、Twitterで自分の作品をアップロードするなどアウトプットを続けている。そのような情報を拾うことができれば、ミスマッチを解消し天職と出会える可能性もあるのではと思った」(島田氏)

「人材業界は今、変遷が起きている」と島田氏が話すように、リファラル採用や新たな採用ツールなど新たな仕組みが生まれてきている。たとえばヘッドハンティングサービスに限っても、ユーザーがヘッドハンターになる「SCOUTER」のようなサービスもある。

scoutyでは企業側のニーズが強く、公開されている情報も多いエンジニアのマッチングをメインに進め、その後デザイナーやディレクター、ビジネスサイドなど職種を広げながら、人材業界の課題解決を目指すという。

投稿者:

TechCrunch Japan

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