SpaceXとNASAが4人の宇宙飛行士を乗せた初の有人Dragon運用ミッションの打ち上げに成功

SpaceX(スペースエックス)は国際宇宙ステーション(ISS)への人の輸送を行う初の民間企業となったわけだが、これはNASAとのパートナーシップにより長年積み重ねてきた有人宇宙飛行能力の開発努力の結晶だ。米国東部標準時間11月15日午後7時27分(日本時間11月16日午前9時27分)、NASAのShannon Walker(シャノン・ウォーカー)、Victor Glover(ビクター・グローバー)、Michael Hopkins(マイケル・ホプキンス)、そしてJAXAの野口聡一宇宙飛行士は、フロリダ州ケネディー宇宙センターの39−A発射台からISSに向けて飛び立った。

SpaceXの有人打ち上げプログラムは、NASAのCommercial Crew(商業乗員輸送開発)計画の元で開発が進められてきた。そこでNASAは、米国の国土からISSへ宇宙飛行士を送り込む有人打ち上げシステムの構築を行う民間企業2社を選定していた。SpaceXは、2014年にBoeing(ボーイング)とともにNASAに選ばれ、それぞれが打ち上げシステムの開発を開始した。そしてSpaceXのDragon(ドラゴン)カプセルとFalcon 9(ファルコン・ナイン)ロケットが、2020年の初めに2人の宇宙飛行士をISSへ送り届けるというDemo-2テストミッションの最終テストに成功し、先にNASAから有人飛行の認可を取得した。

ここへ来るまでに、SpaceXはいくつもの関門を通過しなければならなかった。無人飛行でのISSへの完全自動ドッキングや、地上の打ち上げ台と打ち上げ後のロケットの両方での宇宙飛行士の命を守るための緊急脱出安全システムの実証などがこれに含まれていた。Demo-1ミッションでは、実際の打ち上げ、ドッキング、着陸までのすべてがSpaceXの完全自動のソフトウェアとナビゲーションによって行われたが、必要な場合には人間がバックアップに入り、予定どおりに運行できることを実証する短時間の手動操縦も試された。

現在のところCrew-1(クルーワン)は、フロリダからの完璧な打ち上げの後、順調に飛行を続けている。Crew Dragonを打ち上げたFalcon 9の第1段ブースターは、無事に帰還している。Crew Dragonの有人宇宙船Resilience(リジリエンス)は、打ち上げ10分後に予定どおりFalcon 9の第2段から切り離された。27時間軌道を飛行した後にISSにドッキングすることになっている。ドッキング予定時間は、米国東部標準時間11月16日午後11時前後(日本時間11月17日午後1時ごろ)となっている。ドッキングが完了すると、宇宙飛行士たちは下船してISSに移り、2021年6月まで滞在して、それぞれの任務を遂行する。

Crew-1の乗員、左からNASAのシャノン・ウォーカー、ビクター・グローバー、マイケル・ホプキンス、JAXAの野口聡一宇宙飛行士(画像クレジット:SpaceX)

ミッションの4人の宇宙飛行士のうち3人は宇宙飛行の経験を持つが、パイロットのビクター・グローバー氏はこれが初飛行となる。4人は、現在滞在中のNASAのKate Rubins(ケイト・ルービンス)、Roscosmos(ロスコスモス)のコスモノートSergey Ryzhikov(セルゲイ・リジコフ)、Sergey Kud-Sverchkov(セルゲイ・クドスべルチコフ)氏と合流し、ISSは7人体勢となる(通常は6人体勢だが、1人増えることで、日常の定期メンテナンスに関連する作業は増えるものの、宇宙飛行士が実験を行う際の時間的余裕が生まれるとNASAは話している)。

定期的なNASAの運用ミッションとして宇宙飛行士が宇宙に打ち上げられたのは、2011年にスペースシャトル計画が終了して以来となる。これで米国は、有人宇宙飛行能力を公式に取り戻したわけだ。さらにこれは、今後期待されるSpaceXとDragonによる数多くの宇宙飛行ミッションの最初のものとなる。それは、NASAの計画と、企業顧客が運営する宇宙飛行の両方にわたって展開されることになる。

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(翻訳:金井哲夫)