SpotifyがFindawayを買収、オーディオブックに進出

Spotify(スポティファイ)は、音楽以外の分野にも進出するため、数億ドル(数百億円)を投じてポッドキャスト事業を強化してきた。そこで、オーディオの別の形態に狙いを定め、デジタルオーディオブック配信会社であるFindaway(ファインダウェイ)を買収した。

Spotifyは、この買収の金銭的条件について明らかにしていない。買収は、規制当局の審査と承認を経て、2021年第4四半期に完了する予定だ。

2004年創業のFindawayは、世界中のリスナーに、より多くのオーディオブックを届けることに注力してきた。

同社は現在、さまざまなブランドや製品を展開しており、その中心は、コンテンツ制作者と再販業者をつなぐ大規模なオーディオブック配信事業だ。再販業者には、Apple、Google、Scribd、Audible、Nook、Rakuten Kobo、Chirp、Storytel(Spotifyのパートナー)、Overdrive、Audiobooks.comなどがいる。

Findaway傘下のブランドには、著者とプロのナレーターを結ぶFindaway Voices、一流の出版社向けにオーディオをプロデュースするAudioworks、図書館や学校に対しプリロードされたオーディオブック製品を提供するPlayaway、リスナーに多様なオーディオカタログを提供するOrange Sky Audio、開発者がオーディオブックの幅広いカタログを自社のプラットフォームに統合する際に必要なツールや技術を提供するAudioEngineなどがある。

Spotifyは、Findawayの約150人のチームを招き入れる。また、Findawayが行ってきたオーディオ業界への投資を活用していく予定だという。また、Spotifyの3億8100万人の月間アクティブユーザーへのアクセスに、オーディオブックを加えることも計画している。

「この買収をテコに、プラットフォームを拡大し、オーディオブック分野への参入を加速する計画です」とSpotifyのオーディオブック部門の責任者であるNir Zicherman(ニール・ジッカーマン)氏は話す。Spotifyのユーザーがオーディオブックにアクセスする場合、現在は他のプラットフォームを利用する傾向にあるが、今後はSpotifyのアプリの中でオーディオブックの消費を可能にしたいと考えている、とジッカーマン氏は説明する。当面、Spotifyのユーザーは、同社の新しいオープンアクセスプラットフォーム技術(OAP)と既存の認証情報を使って、Findawayや、Storytelなど他のオーディオブックパートナーのオーディオブックにアクセスすることになる。

だがOAPの用途はもっと広く、出版社が自社のビジネスモデルに合わせてコンテンツの販売方法を柔軟に選択できるようにするものだ。この先、消費者がSpotifyでオーディオブックのコンテンツを視聴するためのさまざまな方法が導入される可能性がある。

Spotifyによると、OAPが最初に統合されるのは2022年初めになる予定だ。

「業界として、オーディオブックには大きな可能性と成長が待ち受けていると考えています」とジッカーマン氏はいう。「SpotifyとFindaway、2社のすばらしいチームとすばらしい技術を組み合わせ、別々の会社だった場合よりも早く、そのような未来を実現したいと考えています」。

調査によると、オーディオブック業界は、2020年時点の33億ドル(約3800億円)から2027年には150億ドル(約1兆7000億円)に成長すると予想されている。Findawayに投資する価値があるとSpotifyが考えたのはそのためだ。また、Spotifyは、今回のFindawayの買収をオーディオブック分野での野心の始まりと捉えており、将来的にはさらにチームを拡大することも考えている。

Spotifyの計画では、Findawayは現在と同じように、さまざまなブランドやサービスを、同じスタッフやパートナーとともに、クリーブランド地域の本社から運営していく予定だ。このアプローチは、Spotifyが買収したポッドキャスト制作プラットフォームAnchorが、Spotifyの競合他社を含む他のプラットフォームへの配信を継続した例と似ている。

今回の発表の前に、Spotifyはオーディオブックへの関心を示していた。1月には「フランケンシュタイン」「ジェーン・エア」「説得」などの古典作品に著名人のナレーションをつけて、オーディオブックのフォーマットのテストを始めた。また、Daniel Radcliffe(ダニエル・ラドクリフ)氏、David Beckham(デビッド・ベッカム)氏、Dakota Fanning(ダコタ・ファニング)氏などのスターがナレーションを担当した「ハリー・ポッター」の第1作も提供している。

さらに5月には、オーディオブックのプラットフォームであるStorytelとの提携を発表した。これにより、Spotifyのユーザーは、同じくOAPを利用したSpotifyのアプリを通じて、オーディオブックにアクセスできるようになった(Findawayの買収が、同じような提携の話から生まれたのかどうかについてSpotifyは言及していないが、その可能性は高いと思われる)。

11月11日の買収は、Spotifyがオーディオという新たな投資分野を追いかけるために、ポッドキャストへのコミットメントから離れるというわけではない、ということのようだ。

「ポッドキャストは、今後も当社のビジネスにおいて重要な位置を占めます」とジッカーマン氏はいう。「これは、消費者が求めている、そして多くの場合、すでに聴いていると思われる新しいタイプのコンテンツへの進出です。そして、そのコンテンツをSpotifyでも楽しめるようにしたいと考えています」。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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