Spotifyのポッドキャストサブスクを米国の全クリエイターが利用可能に

米国時間8月24日、Spotifyはポッドキャストのサブスクリプションを米国の全ポッドキャストクリエイターに公開した。このサービスはテストとして2021年4月に少数のクリエイターを対象に開始されていた。大手から個人まですべてのクリエイターがSpotifyのポッドキャスト制作ツールであるAnchorを利用して特定のエピソードをサブスク利用者限定コンテンツに指定し、Spotifyや他のプラットフォームで配信できる。Spotifyによれば、サービス開始以降、100以上のポッドキャストがサブスクを利用しているという。同社はこのサービスを広く公開することにともない、早期に利用したクリエイターからのフィードバックに基づいて、価格と機能に関していくつか重要な変更を加えている

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これまでクリエイターは月額2.99ドル、4.99ドル、7.99ドル(約330円、550円、880円)のいずれかの価格を選ぶようになっていた。クリエイターは自分のオーディエンスにとって最適と思われる価格を選ぶことができた。

しかしクリエイターがもっと柔軟な価格設定を望んでいることがわかり、価格を20通りから選べるようになった。最低価格は0.49ドル(約55円)で、そこから徐々に上がっていって最高価格は150ドル(約1万6500円)だ。

画像クレジット:Spotify

Spotifyは調査の結果、クリエイターは価格を完全に自由に設定するよりも最初にある程度設定されている方を望むことがわかったと説明している。そのため、現在はクリエイターが価格を自由に入力するようにはなっていない。今後はテストの結果が良かった3通りの価格として0.99ドル、4.99ドル、9.99ドル(約110円、550円、1100円)が先頭に表示され、その下に17通りの価格が表示される。SpotifyはTechCrunchに対し、先頭の3通りのうち4.99ドル(約550円)が最もパフォーマンスが良かったと述べた。

価格設定と、別のポッドキャストアプリを使いたいリスナーが利用できるプライベートRSSフィードへのアクセスに加え、ポッドキャストクリエイターはサブスク利用者の連絡先アドレスのリストをダウンロードできるようになる。クリエイターはサブスク利用者に追加のベネフィットを提供してエンゲージメントを高められるとSpotifyは説明している。クリエイターが自分の顧客との直接的なつながりを構築するチャンスを失うとなれば、有料サブスクのようなサービスを利用するつもりがなかったクリエイターにも訴求するかもしれない。

画像クレジット:Spotify

有料ポッドキャストを提供しているのはSpotifyだけではない。Appleも2021年4月にポッドキャストのサブスクプラットフォームを発表した。しかし今のところ、Spotifyの方がクリエイターに有利だ。Appleは1年目はポッドキャストの売上の30%を徴収し、2年目には15%になる。これは他のサブスクアプリと同様だ。一方のSpotifyは、今後2年間はこのプログラムを無料に据え置く。つまりクリエイターは2023年まで売上の100%を受け取れる。その後はサブスクの売上のたった5%を徴収する計画だ。

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マーケットプレイスモデルに参入する第一歩にあたり、Appleの独占的な振る舞いを厳しく批判するSpotifyが手数料をこれほど小さなパーセンテージにしたことは注目に値する。Spotifyは長年、AppleがSpotifyのサブスクビジネスから手数料を取るのは競争を阻害する行為だと主張してきた。AppleはApple MusicのサブスクによってSpotifyのビジネス上のライバルになっており、今度はポッドキャストのサブスクでもライバルになる。

現在、Spotifyはサブスクベースのポッドキャストを多数配信している。NPRのような大手から、Betches U Up?、Cultivating H.E.R. Space、Mindful in Minutesといった独立系クリエイターまでさまざまだ(NPRはAppleの有料ポッドキャストサービスでも配信されている)。Spotifyで配信するクリエイターは他のプラットフォームを利用してもよい。プライベートRSSフィードを自分の顧客と共有し、Appleのポッドキャストなど他のプラットフォームに配信できる。

Appleのサブスクサービスが出だしでつまづいていることに対してクリエイターの不満の声が高まる中で、Spotifyはサブスクをクリエイターに広く公開することにした。The Vergeの記事には、バグや紛らわしいユーザーインターフェイス、相互運用性の問題などに対するクリエイターの不満が書かれている。これに対してSpotifyは、ポッドキャストのサブスクに関心を持つクリエイターから「数千件」の登録があったと述べている。

Spotifyは米国以外にも利用を広げるとしている。2021年9月15日には米国以外のリスナーもサブスク専用コンテンツを聴けるようになる。その後すぐにクリエイターもポッドキャストのサブスクを利用できるようになる予定だ。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

投稿者:

TechCrunch Japan

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