Starryはまったく新しい無線インターネット―Aereoのファウンダーが既存ISPに挑戦

2016-01-28-starry

スタートアップはインターネットを使ってありとあらゆる産業を変革中だ。しかし誰もインターネットそのものの構造に手を触れようとしていないのは不可解だ。

なるほどインターネット接続サービスは巨額の費用を必要とするビジネスだ。そして日毎に増大するビデオのトラフィックによる輻輳を理由としてますます料金を吊り上げることが可能となっている。決まり文句のように聞こえたらお許しいただきたいが、これこそまさに変革を必要とする状況ではないだろうか。

そこでStarry Internetが登場する。

計算

テレビの無料中継というサービスに失敗したAereoだが、ファウンダーのChet Kanojiaは現在新しいインターネット接続サービスであるStarryを立ち上げ中だ。

Starryはミリ波の無線テクノロジーを利用することにより、ブロードバンド接続のインターネット・サービスのあらゆる側面をカバーできるとしている。つまり各家庭に最大1GBpsの接続をワイヤレスで提供できるとしている。

われわれはKanojiaに電話でインタビューし、このビッグ・プロジェクトについて取材した。Kanojiaは次のように説明した。

既存のISPの場合、家庭にインターネット回線を施設するごとに2500ドル程度のコストがかかる。コストだけでなく、さまざまな規制がさらにスピードを遅らせている。Starryなら各家庭にわずか25ドルでブロードバンド接続を提供できる。しかも当局の規制による遅れはゼロだ。

Kanojiaは実際のユーザーへの課金の詳細については明らかにしなかったが、接続速度(最高1Gbps)に応じた各種のプランを用意しているようだ。KanojiaによればComcastやTime Warner Cableなど、現在のアメリカのISPの料金体系に比べて、「家庭の負担は一桁以上少ない」という。

Starryはまた「転送量の月当たり上限」などは決して設けないという。Kanojiaによれば、この「データ転送量の上限」は既存ISPにとって今後ますます大きな問題になってくるはずだという。

テクノロジー

Starryの作動の仕組みはこうだ。

このサービスはミリ波帯におけるアクティブ・フェーズドアレイと呼ばれるテクノロジーに基いている。そう聞くと難解だが、なんとかわかりやすく説明しみたい。

Starryは各都市の建物の屋上に無線ノードを設置する(Starry Beamと呼ばれる)。このノードはStarryが接続をカバーする人口密集地に置かれ、現在未使用の30GHz以上の波長の電波を用いる。

Starry Beamは多数の方向にミリ波を発信する(アクティブ・フェーズドアレイ)。この電波はビル壁などに反射し、最後にStarry Pointと呼ばれるユーザーのノードに達する。

Starry Pointはユーザーの家庭の窓外に置かれ、Starry Stationと呼ばれる室内の革新的なWiFiルーターと有線接続される(この点についてはすぐに詳しく説明する)。

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WiFiインターネット接続はかなり以前から実用化されているが、通常は見通し範囲でのみ作動し、最大速度もケーブルモデムなどと同等だ。無線接続は戸毎にに配線するとコストが高くなる田園地帯などでISPに利用されている。.

Starryのテクノロジーは、これと逆に、人口が密集した都市部を対象としており、アクティブ・フェーズドアレイ・テクノロジーを利用するため、接続に中継無線タワーが見通せることを必要としない。

ビジネス

しかしStarryがユニークなのはテクノロジー面だけではないとKanojiaは言う。Starryはルーターやらモデムやら配線やらのややこしいテクノロジーを一切廃している。そのためインストールに専門家は必要ない。簡単な英語さえ読めればいいのだという。

Starryとブロードバンド接続の契約をしたときにユーザーが受け取るパッケージにはStarru Beamと接続できるStarry Point送受信機が入っている。これは窓の外の適当な場所に設置するだけで終わりだ。専門知識は必要ない。

価格349ドルのStarry Stationはこれまでのインターネット・ルーターの常識を覆すものだとKanojiaは説明する。

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パッケージにはインストールと設定を容易にする3.6インチ・スクリーンのAndroidデバイスが含まれる。Starry StationにはInternet Health Scorと呼ばれるソフトウェアが付属し、 スピードテストの大手Ooklaによるインターネット接続のモニタリングが常時行われる。

Starry Stationにはデバイス探索ソフト、ネットワーク・マップ、時間と内容を規制できるペアレンタルコントロールなどのソフトウェアと、利用のためのアプリがバンドルされている。

なおユーザーは349ドルのStarry Stationを必ずしも購入しなくてもよい。.

歴史

ファウンダー、CEOであるKanojiaは、Starryには既存のISPに比べて3つの大きなな優位性があるとしている。 その1と2はコストに関連するもので、回線開設のためのコスト、その後の運用と維持のコストがStarryの場合、格段に安いという。

3番目の優位性はビデオに関するものだが、これはKanojiaのこれまでの苦闘に深く関連している。

Kanojiaの前回のスタートアップ、Aereoは画期的な集合アンテナにより、テレビ信号を家庭のコンピュータなどに配信するサービスを提供して大成功を収めかけたが、全国をネットするキー局に訴えられ、法廷で完膚なきまでに打ちのめされた

Aereoがテレビ局にとってかくまで脅威だったのはわれわれのビデオの視聴方法と深く関連する。つまり現在のビデオ視聴は断固として既得権にしがみつく構えの既存のケーブルネットワークごとに寸断されている。ところが視聴者はコード・カッターという新語ができたことでも分かるように、徐々にかつ不可逆的にケーブルテレビから去りつつある。

「バンドルの魅力は薄れてきた」とKanojiaは言う。バンドルとは多くの既存ISPがケーブルテレビとインターネット接続をパッケージにしてユーザーに提供している現状を指している。

Aereoはケーブルテレビに関する前例からいえば合法的なはずだったが、訴訟は最高裁まで持ち込まれ、そこで「〔Aereoは〕あまりにもケーブルテレビの事業に似ている〔ので違法だ〕」と認定されてしまった( こちらで全記録を読める)。

要するにAereoも新しい無線テクノロジーでインターネットに変革をもたらそうとしていたが、その対象はテレビ番組の配信に限られていた。

Aereoチームのメンバーを多数含むStarryは、今回、インターネットのブロードバンド接続という全く新しい武器を手にしている。

Starry Internetは2月5日にボストンで運用を開始する。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+