TBSがデータセクションと資本業務提携、ソーシャルメディア活用で視聴率”以外”の指標を作れるか

2013年頃から、テレビ局がCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を立ち上げるなどして、スタートアップへ出資している。以前よりモバイル向けゲームの開発などで比較的スタートアップと接点を持っていたフジ・メディア・ホールディングス(FMH)グループでは、フジ・スタートアップ・ベンチャーズを通じて創業期のスタートアップに積極的に投資をしているし、日本テレビ放送網もスタートアップコミュニティを運営するcrewwのほか、一部のスタートアップに出資をしている。だが同社の場合、中期経営目標として2012年〜2015年度に総額500億円の投資枠を設定しており、スタートアップへの出資はその一端。今はhuluの買収のような大型案件に注力しているようにも見える。

そんな中で東京放送ホールディングス(TBS)グループのTBSイノベーション・パートナーズ(TBS-IP)も新しい出資先を発表した。同社は5月8日、ビッグデータの分析事業を手がけるデータセクションとの資本業務提携を発表した。

出資額は非公開。ただし、TBS-IPでは通常1億円までの出資を実行している。今回もその範囲内と見られており、金額は数千万円とみられる。またデータセクション代表取締役社長の澤博史も、「資金調達以上に大きな目的は業務提携にある。継続的に両社で研究開発を進めたい」と語っている。

データセクションは2000年の設立。現在のUNITEDの前身であるネットエイジグループで、それこそ「ビッグデータ」という言葉が使われる以前からウェブ上のデータ解析を手がけてきた会社だ。同社と組んで、TBSグループはソーシャルメディアを使ったコンテンツ制作からソーシャルメディアの調査・分析までを進めていく。

たとえばNHKなどはすでに番組内にTwitterのコメントを取り入れたり、ソーシャルメディアで人気のキーワードをニュース番組内で紹介するといった動きがある。TBSでもこういったかたちで、コンテンツとしてソーシャルメディアの分析結果を活用することを考えているようだ。

しかしコンテンツへの活用だけで資本業務提携となるわけではない。キモになるのはテレビ局の新しい指標作りだ。

多くのウェブメディアがページビュー(PV)を追うように、テレビ局で指標となるのが視聴率だ。しかし視聴率のみを指標にコマーシャルやスポンサーの枠を販売するのであれば、例えば「ニッチながら一部では非常に人気のある深夜番組」といったものの価値を顕在化することは難しい。だがソーシャルメディアでの反応をもとに、その視聴者の属性を正しく分析できるのであれば、より価値を高めて枠を販売することができる。データセクションは、すでに博報堂DYホールディングスと提携してソーシャルメディアの分析ツールを開発しているが、TBSもテレビに特化したソーシャルメディアの分析ツールを手がけることを検討しているという。また将来的には、ソーシャルメディアで注目の情報をもとに取材を行うなどの可能性もあるという。


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TechCrunch Japan

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