TC Disrupt London―DeepMindのMustafa Suleyman、汎用人工知能は「遠い先の話」

2016-12-06-deepmind-mustafa-suleyman

Googleが 2014年に買収したApplied AIの共同ファウンダーであり、現在DeepMindの責任者を務めるMustafa Suleymanは今日(米国時間12/5)、ロンドンで開催中のTechCrunchカンファレンス、Disrupt Londonに登壇し、スペシャルプロジェクト編集長のJordan Crookのインタビューを受けた。Applied AIという会社、DeepMindのGoogle内での役割、AIの未来などがテーマだった。

SuleymanによればDeepMindの目標は「知性を解明し世界をもっと良い場所にする」ことだという。われわれ人間の知性とまったく同様に作動するシステムを創ることがDeepMindの目標だという。「われわれは複雑な社会的課題の多くはますます解決が困難になるだろうという予測の下に会社を創立した」。この複雑な課題とはたとえば、気候変動や食料問題だという。

しかしSuleymanは汎用学習システムの実現は「数十年も先」だと考えている。「科学者が何かの実現が20年先だとか、もっと先だとか言うとき、実はあまりに遠い先なので時期を正確に予測することはできないという意味だ。当面われわれは個別の問題の解決に集中する」とSuleymanは述べた。

これに関連してSuleymanはまた「映画で見るような人間そっくりのAIはわれわれが研究しており、おそらく数十年後に実現するであろう汎用AIとはほとんど類似点がないだろうという。

またJordan CrookはSuleymanに機械学習に関する重要な点について訊ねた。「機械学習アルゴリズムはわれわれ人間の知性の欠陥もそのまま受け継いでしまうのだろうか?」とCrookは尋ねた。Suleymanは「この点についての私は、われわれの判断は偏見も含めてコンピューター・システムに組み込まれてしまうよう運命づけられていると考えている」と答えた。「デザイナーとしてまたエンジニアとして、こうした問題を意識的に考える努力をしないなら、われわれはそれと気づかぬまま偏見を含めたシステムを構築してしまうだろう」という。

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DeepMindとGoogleの関係についてSuleymanはあまり具体的なことを明かすのを好まないようだった。「われわれが人工知能のスタートアップとして成功を収めた理由の一つはロンドンに本拠を置いており、シリコンバレーとその流儀からかなり離れていたこともある」と述べたが、つまり組織上親会社になる組織に対して細かいことを話したくないという意味に受け取れた。とはいえ、Suleymanは「Googleのおかげで買収された後は各種のコンピューター資源を潤沢に使えるようになったという。また「〔Googleによる買収後も〕独立の組織として運営することができ、従来通り研究が続けらたのははわれわれにとって非常に大きな意味があった」という。

もうひとつの話題はDeepMindのヘルス関連事業についてだった。DeepMindはイギリスの 国民保険サービス(NHS)と協力して急性腎臓障害の早期発見に関する研究を行っている。一部ではNHSとDeepMindの協力範囲は公表されている部分よりずっと広いはずだという批判も聞かれている。またMoorfields眼科病院と協力して病院における眼底検査のアルゴリズムを改良して高速化と診断精度の改良を図っている。NHSのプロジェクトでは、診断に関しては主としてNHSが開発したアルゴリズムが用いられ、DeepMindは主としてフロントエンド・アプリの開発を担当している。Suleymanはこの点について「NHSとの協力プロジェクトは歴史が新しい。12ヶ月前に始まったばかりだ」と説明した。

DeepMindとGoogleの関係は個人情報の取扱に関してユーザーからの疑念を招くおそれがあるのではないかとCrookは質問した。Suleymanは「われわれのシステムはデータのコントロール権限について明確な基準を定めており、このプロジェクトの場合、データの所有権は完全に病院側にある」と述べた。またDeepMindは可能な限りの透明性を目標としており、第三者の監査を受けていることを強調した。DeepMindはまた「透明性確保のための汎用アーキテクチャー」を開発中で、これによればデータがアクセスされた場合、アクセス元など詳細なログが記録されるようになるという。

今日、こうした議論に加えてDeepMindはステージでDeepMind Labを発表した。 これはゲーム的な3Dプラットフォームで、エージェントによるAI研究に役立てられる。DeepMindでは社内ですでにこのシステムを利用していたが、今回オープンソースで公開された。すべてのAI研究者、開発者がこのプラットフォームを利用することができる。ソースコードとゲームのプレイに必要な多数の付属マップは数日中にGitHubにアップロードされる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

投稿者:

TechCrunch Japan

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