TC Tokyo 2014バトル優勝は、家庭用プリンタで電子回路を「印字」するAgIC!

毎年秋に行われるTechCrunch Tokyoも今年で4回目の開催となる。米国に比べると起業を巡る環境がまだまだ厳しいと言われるが、2日目に開催されたスタートアップバトルでは、ネット環境の変化も見据えた日本ならではのユニークなプロダクトを、12社がプレゼンし競い合った。その模様を結果とともにお伝えしたい。

AgIC(AgIC株式会社):最優秀賞、インテル賞、PR TIMES賞

優勝賞金100万円と、2つのスポンサー賞を獲得したのは、AgIC(エージック)。家庭用インクジェットプリンタで導電性をもった専用インクを「印字」して紙の上にも電子回路を打ち出せるプロトタイピング向けプロダクト。専用カートリッジを装着する。AgICを使うことで電子回路の試作に要していた時間を1週間から、2〜3分へと短縮し、コストも大幅に抑えることを可能とした。インクの技術はパテントを獲得しているが、自社サイトでの回路図の共有などサービスを拡充することで、ユーザーの囲い込みを図っていきたいと意気込む。3Dプリンターだけではカバーできない部分を見事に解決したとして高い評価を得た。

オープンロジ(株式会社オープンロジ):審査員特別賞、CONOHA by GMO賞
「2分でできる物流プラットフォーム」を打ち立て、Amazonのフルフィルメントと真っ向勝負を挑むのが、openLogiだ。10ステップ以上の煩雑な手続きが必要なフルフィルメントに対し、3画面3ステップでの手続きが完了する。それを可能にしているのは物流企業との工程の綿密な見直し作業だ。EC市場の更なる拡がりに呼応したサービスとして、審査員特別賞、CONOHA by GMO賞を獲得した。

mikan(株式会社mikan):Amazon Web Services賞
TechCrunch Japanで紹介して大きな話題となった英単語暗記アプリ「mikan」は、シンプルかつスピーディな操作を可能とするUIで「1日で1000単語」が覚えられると標榜する。リリース後5日間で10万DLを突破し、既に1000語の暗記に到達したユーザーは1000人を超えるという。日本を再び世界で戦える国にすべく、まずは英単語という分野から成長を続けたいとプレゼンでは抱負を語っていた。

FiNC ダイエット家庭教師(株式会社FiNC):ぐるなび賞
スマホアプリを用い、非対面型のダイエット家庭教師サービスを提供するのがFiNC。ジムに通う限られた時間だけなく、食事や体重管理など生活全般をサポートできるのが強みだという。目標を達成し「卒業」するユーザーも、約40%引き続きサプリメントなどの定期購買を続ける。遺伝子検査からスタートする科学的なメソッドと、コストパフォーマンスの高さも魅力だ。

Akerun(株式会社フォトシンス):グローバル・ブレイン賞
スマホからのBluetooth通信によって、鍵の開閉を制御するakerun。賃貸大手のHOMESとも提携し、採用に向けた準備を続けている。物理的な鍵を介さないことによって、自分が不在であっても、リモートで認証した友人を先に招き入れたり、宅配便を部屋の中に入れておいてもらうといったことが可能になるという。貸しスペースの入場管理などその可能性は広がる。

マッチ(株式会社baton):ビットアイル賞
ゲーム感覚で競い合いながら世界史などを学べる学習アプリ「マッチ」。壇上を飛んだり跳ねたりとまさにゲームの楽しさが伝わってくるプレゼンテーションで会場を沸かせていた。教科や対象学年を増やし、企業とのコラボを進めることで、問題集関連市場3500億円への挑戦を続けると意気込みを語る。

WOVN.io(株式会社ミニマル・テクノロジーズ):PayPal賞、マイクロソフト賞
たった1行のスクリプトと3つのステップでサイトを多言語化するWOVN.ioは、PayPalとマイクロソフトの2つのスポンサー賞を獲得した。リリースからわずか4ヶ月で3000ドメイン、約5万ページが多言語化されたという。まもなくテキストだけでなく画像も置き換える機能も実装する予定だ。

今回のスタートアップバトルへのエントリーは113社。決勝に進めたのはそのうちのわずか12社となる。以下のプレゼンテーターは惜しくも受賞を逃したが、狭き門をくぐり抜け、このステージに立った。今後期待の持てる顔ぶれだと言えるだろう。

XZ(株式会社STANDING OVATION)
タンスの肥やしとなってしまうことのある洋服たちを、「ソーシャルクローゼット」に登録してもらうことによって、他のユーザーからの推奨による着回しのバリエーションを発見することができるアプリ。ファッション版クックパッドを目指す。

Bizer(株式会社ビズクラウド)
スモールビジネスのバックオフィスを支援するWebサービス。中小企業では専門の担当者がおけなかったり、非常に手間をとられてしまう労務、総務などのタスクを予めリスト化し、テンプレートを用意する予定だ。専門家のアドバイスを受けることもできる。

スペースマーケット(株式会社スペースマーケット)
貸しスペース版Airbinb。お寺や野球場、結婚式場などあらゆるスペースをオンラインマッチングで貸出し、遊休スペースの有効活用を図る。すでに1200箇所が登録され、40%という強気の手数料率でビジネスの成立を図る。

bento.jp(株式会社ベント・ドット・ジェーピー)
こちらも既にメディアでの紹介が相次ぐサービス。配送料込みの500円弁当をスマホでのわずか2タップ操作で、20分以内で届ける。渋谷のオフィス街を中心に予め需要を予測し、配達員を待機させているのが鍵だ。このノウハウを活かし、コーヒーなど商品展開の拡充を予定。

yTuber.tv(株式会社yTuber.tv)
YouTube動画をキュレーションし、TVのようにジャンル毎に11チャンネルに人力で分類。YouTuberのマネジメント業務を行いながら、スマートフォンでのセカンドスクリーン獲得を目指す。

2時間半以上にピッチと質疑応答が続いたが、渋谷ヒカリエの広いホール会場も立ち見がでるほどの満員。熱気の中4回目となったTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルは幕を閉じた。この中から、次代を担い世界で活躍するサービスが生まれることに期待したい。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。