TechCrunch Tokyoにメッシュセンサーでビルの省エネを実現する「Enlighted」が来る

Christian-Rodatus1約2週間後の11月17日、18日に迫ったTechCrunch Tokyo 2015の海外ゲストスピーカーについて、またもう1人紹介したい。日本ではほとんど知られていないだろうけど、広い意味でIoT系スタートアップ企業といえる「Enlighted」から、グローバル・ビジネス部門を統括するChristian Rodatus氏にご登壇いただけることとなった。

フロアのヒトの位置、流れを把握してオフィスの電力消費を最適化

IoTというと最近出てきたバズワードだけど、Enlightedが生まれたのは2009年と、もう少し歴史は古い。Enlightedは過去5回の投資ラウンドで5560万ドル(67億円)の資金を調達している。何をしているかをヒトコトで言うと、センサーネットワークを使ったオフィスビルの省エネだ。以下のようなセンサーデバイスを主に天井に取り付け、オフィス内の光と温度、動きの分布を検知して、電灯や空調をコントロールする。

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Enlightedのセンサー。天井に貼り付けるもの、屋外利用できるもの、小型タイプなどがある

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ヒートマップでヒトの動きを把握

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実際にヒトがいるところだけ電気をオンに

Englightedの1つのポイントは、光を検知するといっても光の強度のことであり、映像を撮影するというわけではないということ。

Enlightedのセンサーデバイスのもう1つのポイントは、ZigBeeを使った無線ネットワークを独自に構築していること。つまり既存のWiFiに依存することはない。Enlightedは、もともと無線技術のプロが集まって「メッシュネットワークが何に使えるか?」という議論から始まった会社なのだそうだ。メッシュネットワークなので、WiFiのアクセスポイントのように複雑なネットワーク設計が不要でインストールが容易というメリットがある。ゲートウェイを介してクラウド側に送った各種メトリックスは、ブラウザ経由で見ることができて、各種設定も利用者がブラウザから直接行える。

オフィスといっても全フロアに常に人がいるわけではない。例えば、夜になって一部の残業組のためにオフィスの電灯が煌々と全フロアを照らしているという光景は、多くの人が見覚えがあるだろう。最近だと「こまめに電気を消しましょう (総務部)」と書いてあるのかもしれないが、もう人間が電気のオン・オフをやる時代は終わるのだ。「まだ人間が消灯してるの?」ということだよね。

オフィス環境の空調も同じだ。ヒトの分布を調べ、空調を最適化することができれば、エネルギー効率は高まる。曜日や時間帯でパターンを学習していくことができれば、人間がやるよりも、はるかにきめ細かなコントロールができて、しかも快適ということになる。

将来的には家賃や人件費の最適化にも

Enlightedは、すでにOracleやGoogle、AT&Tのコールセンターといった大企業など約60社でも採用されていて、6万5000平米のオフィスをカバーしているという。もしこれが日本の話で島型レイアウトオフィスで執務室25平米あたり8人の席があるとすると、だいたい2万人分だ。

Englighted導入による省エネ効果は、学校やオフィスで50%程度の照明用電気代の削減、ビルの通路だと78%の電力カットという事例があるそうだ。エアコンのほうは20〜30%程度の電力削減効果という。

電気代は固定費だから定常的に削ることができれば大きなメリットになるが、実は多くの企業は初期導入コストが大きくなると簡単にEnlightedのようなシステムを導入できない。特にEnlighted立ち上げの初期には、コスト削減効果を証明しづらいために企業は導入をためらった。この問題に直面したEnlightedは「GEO」(Global Energy Optimization)というファイナンス面でのスキームも考案。導入企業に代わって借入を行い、効果を保証した上で初期導入費用の問題を解決しているという。Enlightedはスタートアップ企業だが、テックのイノベーションだけでなく、こうしたビジネス面で工夫も注目だと思う。TechCrunch Tokyoに登壇してくれるChristianはSAPから引き抜かれてCEOの右腕となっている人物だから、この辺の苦労話も聞かせてくれることと思う。

さて、EnlightedをIoT企業と紹介したが、それはセンサーネットワークとして電灯のオン・オフ以上の価値を生み出す可能性が高いからだ。例えば、会議室が10個ぐらいあって、その稼働率を正確に把握できれば、8個に減らして最適化することができるかもしれない。ヒートマップでヒトの流れが分かれば、コピー機をわざとフロアに1つだけに限定して人的交流を生み出すという施策が効果を発揮しているかといった洞察に繋がるかもしれない。小売業者なら、ヒートマップによって売場レイアウト見直しの重要な気付きが得られるだろうから、これは電気代じゃなくて家賃や人件費の話になってくる。

リストバンドのようなヘルスケアアイテムで認知が広がった感のあるIoTだが、企業活動にインパクトのあるプロダクトを生み出しているエンタープライズ系IoTの最先端の話を、ぜひTechCrunch Tokyoに聞きに来てもらえればと思う。あ、ちなみにEnlightedは日本でのビジネス展開を、今まさに始めたところだそうで、パートナー企業になりたいような関係者も注目だ。

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投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。