The.comがローコードでコラボレーション可能なウェブサイトビルダーを発表、テンプレートではなくカスタマイズ可能な「ブロック」を使用

The.comという覚えやすい名前のスタートアップ企業が、ウェブサイト構築を刷新すると同時に、ウェブクリエイターが自分の作品の功績を認められるようにする取り組みを行っている。440万ドル(約5億1000万円)のシード資金を携えてひっそりと登場した同社は、業界標準であるテンプレートベースのアプローチを捨てた「ローコードのウェブサイト構築プラットフォーム」と呼ばれるものを開発した。The.comのサイトビルダーは、テンプレートの代わりにコミュニティが作成したコンポーネントを使用している。コンポーネントは、サイトにドロップして他のユーザーと共有できる。サイト作成者は、サイト構築の過程で互いに協力し合い、直接チャットすることも可能だ。

同社は、NFXが主導し、Sound Ventures、VSC Ventures、Village Global、Harry Stebbingsが参加する440万ドルのシード資金をクローズした。

The.comのアイデアは、共同創業者であり兄弟でもあるJeff McKinnon(ジェフ・マッキノン)Clarke McKinnon(クラーク・マッキノン)から生まれた。この創業者らは、The.comを設立する前の2012年から2019年まで、ボルダーで自らウェブ開発会社を経営し、ウェブサイトの開発とデザインに携わってきた経歴の持ち主だ。この間、彼らは従来のウェブ開発で生じるフラストレーションを身をもって体験したと、クラークは語る。

「私たちは、誰かが私たちのニーズをすべて解決してくれる完璧なプラットフォームを作ってくれるのを待っていました。でも、そんなことは起きなかった」とクラークはTechCrunchに語った。「だから、自分たちで作り始めたんです」。

共同創業者、ジェフ&クラーク・マッキノン氏(画像クレジット:The.com)

当初、彼らのプラットフォームは社内ツールとなる予定だったが、現在の顧客が関心を持ち、兄弟にこの製品をもっと広く利用できるようにしてビジネスにすることを勧めた。そこで兄弟は、2019年5月に代理店事業を停止し、現在のThe.comに取り組み始めた。

クラークの説明によると、従来のウェブ開発や古いプラットフォームには速度とセキュリティの問題がある。しかし顧客からより細かいカスタマイズを求められると、ハードコーディングが必要になり、更新のための継続的な作業が必要になるという葛藤も常にある。さらに現在のウェブ構築プラットフォームの多くは、すでにサイトデザイナーである人たちを対象にしている。しかしクラークら共同設立者たちは、自分たちの経験から、ウェブサイトに貢献する人の中にはデザイナーではない人が大勢いることを理解していた。

「誰もが同じ土俵に立てるウェブサイト構築プラットフォームが必要だっただけなのです」とクラークはいう。

The.comでは「サイトを作成」ボタンを押すだけで簡単に新しいウェブサイトを立ち上げることができ、すぐにサイトのインフラを導入できる。ユーザーは他の人を共同制作者として招待でき、ボタンをクリックするとサイトの編集を開始できる。一から作ったり、テンプレートを選んだりするのではなく、クリエイターは使いたいパーツやコンポーネントを個別に選べる。つまり、The.comの1人のクリエイターからナビゲーションを、そして別のクリエイターからはフッターを、そしてヒーロー画像、ヘッダー、バナー、ボディ要素など、さまざまな要素をコミュニティのメンバーから選ぶことができる。要素を選ぶと、画面上に紙吹雪が舞い上がり、元のコンポーネントの制作者に称賛としてクレジットが与えられる。The.comは、今後クリエイターに金銭的な報酬を与える方法を展開する予定だ。

画像クレジット:The.com

クラークは「目標は、要素を使ってサイト構築している人たちが、要素を最大限に活用できるようにすることです」という。再利用可能な要素を作る動機について「私たちが代理店だった頃、すばらしいサイトをたくさん作りましたが、それらは一度使われただけで、それっきりでした。お客様にあまり気に入らないと言われたもの、合わなかったものなど、実際のサイトには登場しなかったものがたくさんあります。そのようなものから繰り返し収入を得ることができれば最高だと思います」と語った。

サイトビルダー自体もおもしろいデザインになっている。作成するウェブサイトの前面に、フローティングウィンドウが表示される。だが他のWYSIWYGデザイナーより少し高度な作りになっており、サイトのページ、ブロック、シート(基本的には自由形式のデータベース)を管理するセクションがある。個々のウェブサイト要素を追加した後、ウェブサイトのコードを書いたり編集したりするのと同じように、フォント、色、画像、テキストなどを変更して細かくカスタマイズすることができる。また、生のJavaScriptを追加したり、一から新しい要素を作成することによっても変更を加えることができる。

サイト上での作業が進むにつれて、変更した内容は画面上にライブで反映されるため、実際の見た目を確認するために「プレビュー」をクリックする必要はない。また、カスタマイズした要素は、必要に応じてコミュニティのマーケットプレイスで再度共有することもできる。

画像クレジット:The.com

The.comはこのマーケットプレイスで、クリエイターが自分の作品に対して直接報酬を得るという、クリエイターエコノミーのトレンドを利用している。創業者たちの考えでは、自分のツールを使ったサイトのカスタマイズを勧める「ウェブサイトのインフルエンサー」になるトップクリエイターもいるかもしれないということだ。

クラークは「マーケットプレイスでは、品質、優れたデザイン、印象的な構築があれば、クリエイターはどんどん人気になっていくでしょう」と指摘する。「これから人々は、自分の仕事への評判を期待するようになります」。要素が繰り返し利用されると、The.comは、コミュニティやウェブサイトを含め、元のクリエイターが称賛を得られるようにする予定だ。

The.comによると、現在のコミュニティ規模は、顧客数で数千人、日々のアクティブユーザー数で数百人であるという。

The.comのウェブサイトビルダーでもう1つ注目すべきなのは、共同作業の要素である。The.comの顧客の多くは、個人ユーザーではなく、代理店や中小企業だ。つまり、複数の人が一緒にサイトを更新することができるようになる。現在は、それぞれの人が編集しているパーツの横にプロフィールアイコンが表示されるが、将来的には、ユーザーが並んで編集できるようになる。また、チャット機能も内蔵しているので、他のサイト協力者と構築について直接話すこともできる。

画像クレジット:The.com

ひっそりと登場したこのスタートアップ企業は、最初の料金プランも発表している。まずは試してみたいという人のためのベーシックプランは無料。他の階層は、機能セット、サポートの必要性、サイズに応じて、月額36ドル(約4160円)、199ドル(約2万2990円)、1499ドル(約17万31080円)となっている。The.comの顧客は、中小企業やスタートアップ企業から大企業に至るまで幅広い。高性能なサイトでは、Shopifyの上にThe.comをヘッドレスオプションとして使用し、ウェブサイトの速度を上げ、直帰率を減少させているものもあるとのことだ。

The.comは、表向きはサンフランシスコに本社があるが、11人のフルタイム従業員から成る分散型チームを抱え、合計15人のチームで事業に取り組んでいる。今回発表されたシード資金を使ってエンジニアとコミュニティ分野で雇用し、さらなる製品開発に取り組む予定だ。

The.comという憧れのURLを獲得したことについては、創業者たちによると、彼らの親友がこの取引の力になってくれたらしい。

クラークは、このメンターが誰であるかは明かさなかったが「家族・友人割引です。この人は長い間ドメインの世界に関わっていて、たくさんのいいものにアクセスができたので、私たちは幸運でした」と述べた。

NFXのジェネラルパートナーのJames Currier(ジェームス・カリアー)は「The.comのプラットフォームには、Web1.0や2.0のウェブサイト構築システムとは異なり、ネットワーク効果とコンポーザビリティがあります」と語る。「クリエーターにオーナーシップが与えられ、クリエーターは新しいプリミティブを使ってウェブを再構築できるようになります。私たちは、このようなカテゴリー革命を待ち望んでいたのです。もしあなたがまだWordPressを使ってウェブサイトを作成しているなら、The.comに乗り換えたくなるでしょう」。

画像クレジット:The.com

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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