The Shedはあらゆるモノをレンタルするビジネスの復活を狙うバージニア州のスタートアップ

レンタルビジネスを拡大することによって資源のムダを省き、消費者に各種の製品へのアクセスを確保することは、スタートアップにとって長年のいわば聖杯ともいうべき目標となってきた。

この目標はファッションやアクセサリーの場合には極めてうまくいく(我々も報じたRent the Runwayの株主に聞いてみればよい)。しかし一般の製品の場合にこれを実現するのは難しかった。

バージニア州リッチモンドに本拠を置くThe Shedはこの状況を変えようとしている。

The Sedの共同ファウンダーは長年マーケティング分野でエグゼクティブを務めてきたKaren Rodgers O’Neil(カレン・ロジャーズ・オニール)氏とエンジニア、連続起業家のDaniel Perrone(ダニエル・ペローネ)氏だ。ペローネ氏が創立したBroadMapはApple(アップル)に買収されている。The ShedはDIYチェーンの巨人、The Home Depotが扱うアイテムをレンタル化して幅広いユーザーに届けようとしている。ただしThe Home Depotとは異なりThe Shedは取り扱いを工具、園芸、アウトドアといった8分野に絞っている。電動工具の老舗であるStanley Black & DeckerはThe Shedの立ち上げ初期からのパートナーで、いわば同社が看板とする企業だ。The Shedによれば他の企業も次々に加わっているという。

ペローネ氏は「我々は製品を買い取らない。カバーする地域ごとにウェアハウスとマーケットプレイスを設け、製品を展示、登録する。メーカーに代わってレンタルに必要な手続きを行い、また消費者の元に製品を配送する」のだと説明する 。

メーカーが提供するのは製品そのものとThe Shedのスタッフがメンテナンスを行うために必要なサービスキットだ。

The Shedの共同ファウンダー、カレン・ロジャーズ・オニール氏(左)とダニエル・ペローネ氏(中央) 画像クレジット:The Shed

2020年4月にリッチモンドでスタートしたThe Shedだが、デンバーをカバー範囲に加えた。ペローネ氏は「ポートランド、オースティン、サンノゼにも拡大する予定だ」という。

今後同社が加えようとしている機能の1つにダイナミックプライシングがある。これは需要に応じてレンタル価格を変動させる仕組みだ。製品を提供するメーカーは需要の高まりに応じて最大の利益を得られるようになる。

オニール氏は2012年にGeneral Electricのボストン本社でマーケティングエグゼクティブとして働いているときにこの仕組みを考えついた。ペローネ氏はボストンで開かれた人脈作りのイベントでオニール氏に出会い、新しいレンタルの仕組みが資源の利用を効率化すると同時に消費者にとっても利益になると説明を受け、納得したのだという。

もちろんレンタルビジネスを広い範囲に拡大することによって消費者の利便性を高め資源の効率化を図ろうとするのはThe Shedが初めてというわけではない。ロサンゼルスのスタートアップ、Joymodeの狙いもほぼ同様だった。同社はニューヨークの小売ビジネス向け投資企業が買収している(未訳記事)。

JoymodeのCEOであるJoe Fernandez(ジョー・フェルナンデス)氏はこのようなレンタルビジネスを運営する難しさについて「こうしたビジネスのメリットは消費者が金を節約できるということだが、事業を運営するのに十分な数の消費者を引き付けるにはそれだけでは十分でなかった」と述べている。
電動工具のBlack & Decker、アウトドア用品のPrimusなどの企業に加えてMobility PlusもThe Shedに製品を登録している。Mobility Plusは車イスやキックスクーターなどパーソナルな移動を助ける製品を提供している。また世界最大の陶磁器販売業者であるReplacementsからは「パーティー・イン・ボックス」というディナーやカクテルパーティーの食器セットをレンタルできる。

これまでに同社はリッチモンド地区の投資家から175万ドル(約1億9000万円)を調達している。現在60社のメーカーと提携し、毎月15社から18社が新たに加わっているため、さらに企業規模の拡大を狙っている。

「(オニール氏と)一緒にThe Shedを創立したのは、この仕組みがレンタルビジネスに革命をもたらすだろうと考えたからだ。さまざまな製品分野で、セールスチャンネルがオンライン化されていない企業が多数ある。そうした企業にとってThe Shedは消費者に製品を提供する最適の手段だ」とペローネ氏はいう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

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