Theranos解散から1年、Truvian Sciencesが低コスト血液検査に挑む

一時は飛ぶ鳥を落とす勢いの血液検査のスタートアップだったTheranos(セラノス)が解散してから1年余り。新たなスタートアップが、ポイントオブケア(ラボよりも身近な場所での検査)を提供する医療施設に、低コストの血液検査をもたらすというビジョンの達成に向け2700万ドル(約29億円)以上を調達した。

Theranosは、血液検査のほとんどが米食品医薬品局(FDA)の認可を必要としないと主張していたが、Truvian Sciences(トルビアンサイエンス)は違う。資金調達したのは、技術を改良しFDAの承認を得るには1年以上かかると見込んでのことだ。

「ヘルスケアの現状に不満を覚える人が増えている。高価な検査、不便な予約、自分の検査結果へアクセスできないことなどだ」と同社の社長兼最高経営責任者であるJeff Hawkins(ジェフ・ホーキンス)氏は声明で述べた。「他方、ドラッグストアの存在感は高まっている。手頃な価格で健康を維持向上する拠点になりつつある。検査機関での正確な血液検査をもっと身近にすることで、我々はよりシームレスな体験を消費者に提供し、通常の血液検査で得られる膨大な医学的洞察に基づいて消費者が次の行動を決められるようにする」。

ホーキンス氏はIllumina(イルミナ)で生殖・遺伝子健康事業の副社長兼ゼネラルマネージャーだった。ライフサイエンスの分野で経験豊富な経営陣が同氏を支える。Epic Sciencesの共同創業者だったDena Marrinucci(デナ・マリヌッチ)博士もその一人。Truvian Sciencesの共同創業者であり、事業開発上級副社長を務める。

Image courtesy of Flickr/Mate Marschalko

Truvian Sciencesはまた、Epic SciencesおよびIlluminaの経営陣だったKatherine Atkinson(キャサリン・アトキンソン)氏を新しく最高営業責任者として、Thermo Fisher Scientific(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)の取締役会会長だったPaul Meister(ポール・マイスター)氏をディレクターとして迎えると発表した。

資金を提供したのはGreatPoint Venturesのほか、DNS CapitalTao Capital Partners、既存株主であるDomain Associatesなどだ。

Truvian Sciencesの究極の目標は、20分間でしかもわずか50ドルで、微量の血液サンプルから正確な検査結果を提供できるような血液検査システムを開発すること。 通常こういった検査は、施設によって異なるが数百ドルから数千ドル(数万円から数十万円)の費用がかかる、とホーキンス氏は言う。

同社は、新しい自動化技術と検知技術で、生化学・免疫血清・血液学検査を単一の機器に統合し、脂質パネル、代謝パネル、血球数、甲状腺、腎臓・肝臓機能の検査などの標準的な血液検査の実施を目指している。

Truvian Sciencesの声明によると、同社のシステムにはリモート監視機能とメンテナンスを容易にする機能が含まれている。ドライ試薬技術により材料を室温で保管できるため、低温物流や冷蔵保管の必要がない。同社は欧州経済領域(EEA)でCEマークの取得に取り組むほか、FDAに510(k)クリアランスと、機器をドラッグストアなどの小売店舗や小規模の医療機関で使用する「臨床検査改善修正」免除申請書を提出した。

「指から採取した一滴の血液であらゆる事ができるとは考えていない」とホーキンスは言う(セラノスとは反対の立場)。「基本的な点を断っておきたいが、当社はヘルスケアの経験が豊富な経営陣が率いている」

Truvianは検査技術を市場に投入するにあたり、診断ツールキットを補完する手段として、企業と検査結果を受け取る患者を結ぶアプリ開発も検討している。ホーキンス氏によると、TruvianのデータはAppleとGoogle両方の健康アプリで使えるほか、同社独自アプリでも使える。

「結局のところ、精密医療はデータソースを統合することから生まれる」とホーキンス氏は言う。「当社が達成したいことができたら、定期的な血液検査がはるかに利用しやすくなる」。

画像クレジット:WLADIMIR BULGAR / SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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