TikTokが音楽配信プラットフォームのSoundOnを公開

TikTok(ティックトック)は現在の音楽業界にすでに多大な影響与えており、アプリ内で人気の曲はチャートの上位にランクインする。今度は自分の音楽をもっと聴いてもらいたいアーティストを支援するために独自の音楽マーケティング・配信プラットフォーム「SoundOn」を開始する。この新しいプラットフォームでは、アーティストは自分の音楽をTikTokと、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)の音楽ストリーミングサービスのRessoに直接アップロードでき、さらにApple Music、Spotify、Pandora、Deezer、Tencent(テンセント)のJooxといったグローバルなストリーミングプラットフォームにもアップロードできる。

配信に対する課金はなく、プラットフォームは手数料を請求しない。TikTokは、ByteDance傘下のプラットフォームに関しては無期限で使用料の100%をSoundOnから音楽クリエイターに支払うとしている。これにはTikTokでの配信の他、ブラジル、インドネシア、インドのRessoと、ByteDanceの動画編集アプリのCapCutの分が含まれる。

グローバルのストリーミングサービスに関しては、そのアーティストの1年目は100%が支払われるが、2年目以降は90%に下がる。比較のために挙げると、競合のDistroKidはサブスクリプションベースでアーティストとレーベルに対して課金し、アーティストは売上の100%を受け取れる。一方、TuneCoreは曲またはアルバム単位で配信に対して課金するが、こちらもアーティストはストリーミング売上の100%を受け取れる。

SoundOnのFAQによれば、アーティストはすべての権利と使用料を保持する。つまりマスターを所持しつつ、さらに使用料の100%(または一定期間後に90%)を受け取れるということだ。

画像クレジット:TikTok

SoundOnは音楽配信の仕組みだけでなくプロモーションのためのツールやサポートも提供する。具体的にはオーディエンスのインサイトと開拓、SoundOnマーケティングチームからのアドバイス、TikTokのミュージックタブの利用(自分のプロフィールページから曲へリンクできる)、TikTokによる認証、RessoとCapCutでの紹介、TikTokプラットフォームのクリエイターマーケティングを活用したプロモーションの支援などだ。

SoundOnのウェブサイトには、このプラットフォームでリリースするとTikTokクリエイターの目に触れると書かれている。

ウェブサイトでは以下のように説明されている。「TikTokクリエイターはこのプラットフォームの活力源であり、サウンドがヒットする理由です。あなたがこのプラットフォームでリリースすると、我々は多様なクリエイターがあなたの曲を使って動画を制作するように働きかけます。これによりあなたのファンは広がり、クリエイターたちの新しいコミュニティにリーチできます」。

SoundOnのバリュープロポジションに対するTikTokのマーケティング面としては、このサービスはキャリアの浅いアーティストに特にアピールするかもしれない。TikTokにはバイラルのトレンドがあり、特別にプッシュされれば自分がブレイクして多くの人へのリーチとにつながると理解されているからだ。その後、ファンは音楽ストリーミングサービスでそのアーティストをフォローし、その売上が自身の収入になる。

TikTokの音楽担当グローバル責任者のOle Obermann(オーレ・オルバーマン)氏はSoundOnの提供開始に関する発表の中で「TikTokには新人のアーティストや音楽クリエイターたちの活気に満ちあふれたコミュニティがあり、SoundOnはこうした人々がキャリアの最初の一歩を踏み出せるようにと開発されました。SoundOnチームはクリエイターが大きなステージへと成長するジャーニーをガイドし、TikTokの専門性とパワーをアーティストのために活かします。我々は新しい才能が表に出てきて前進し、SoundOnがますます多様化し成長するグローバルな音楽業界に貢献することをたいへん楽しみにしています」と述べた。

SoundOnプラットフォームでは2021年秋からベータテストを実施し、今後は米国、英国、ブラジル、インドネシアで一般に広く使えるようになる。すでにこのサービスを利用しているアーティストとクリエイターの人数は明らかにされていないが、Muni Long(マニー・ロング)、Games We Play(ゲームス・ウィ・プレイ)、Abby Roberts(アビー・ロバーツ)、Chloe Adams(クロエ・アダムズ)らが利用している。

TikTokが音楽配信分野に参入するのはSoundOnが初めてではない。同社は2020年にUnitedMastersとの提携を発表し、これがTikTokと音楽配信企業との初の統合になった。

ByteDanceが音楽配信を拡大するのはストリーミングサービス事業者としてはよくある流れだ。例えばAppleは2021年に、NBAやESPN、そしてTikTokとも大型契約を交わしているUnitedMastersに投資した。SpotifyはDistroKidに小規模な出資をしているが、2021年秋に出資分の3分の2を1億6700万ドル(約193億7200万円)で売却した。

TikTokによれば、SoundOnに関心のあるアーティストはus.soundon.globalまたはsoundon.globalで登録できる。

画像クレジット:TOLGA AKMEN / Contributor / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

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TechCrunch Japan

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