TikTokの親会社ByteDanceが香港上場を前に2065億円調達を模索か

大人気のソーシャルメディアTikTok(ティックトック)の親会社であるByteDance(バイトダンス)は、Bloombergの報道によると、海外事業のかなりの部分を香港証券取引所に上場させる前に20億ドル(約2065億円)の調達を画策している。

Bloombergの情報筋は、新たな調達によりByteDanceのバリュエーションは1800億ドル(約18兆6000億円)になるとしている。

SequoiaなどByteDanceの既存出資者を含む投資家が新たな出資を実行中だとBloomberg(ブルームバーグ)は報じている。

Sequoiaは、ByteDanceの最も価値のある海外資産であるTikTokの米国事業をOracle(オラクル)に引き継がせるという、トランプ政権が押し売りしいまや行き詰まった取引を主導する企業の1社として登場した。

Sequoia、Oracleともに、Sequoiaのマネジングパートナーで共和党に巨額を献金しているDoug Leone(ダグ・レオン)氏、Oracle社長Safra Catz(サフラ・キャッツ)氏、Oracle創業者Larry Ellison(ラリー・エリソン)氏を通じてトランプ大統領と密接な結びつきがある。

ByteDanceは長らく、同社の売上高に貢献しているアジアでの最大事業Douyin(抖音)とToutiao(今日頭条)の上場を計画してきた。

TechCrunchは以前、ByteDanceの財務状況を知っている投資家の話として、同社2019年の売上高が1200億元(約1兆8800億円)だったと報じた。その売上高の67%が、TikTokの中国版であるDouyinと人気のニュースアリゲーターであるToutiaoでの広告売上によるものだった。Douyinそしてその他のByteDance傘下のアプリのユーザーをターゲットとするライブストリーミングが売上高の17%を占めた。ゲーム、eコマース、TikTokを含む初期段階にある事業は約17%、額にして200億元(約3100億円)だった。

ByteDanceは2020年の売上高は2000億元(約3兆1300億円)と予想している。投資家によると、うち15%、額にして300億元(約4700億円)がTikTokと他の新興事業によるものだ。Reuters(ロイター)やBloombergの以前の報道も似たような数字を報じた。

ByteDanceはすでに、世界で最も価値のある株式非公開のベンチャー支援テクノロジー企業だ。しかしそうした価値の少なくとも一部は、TikTokの売上を生み出すポテンシャルとつながっている。そして新たな調達は、TikTokのスピンオフがByteDanceに影響を与えるかもしれないという懸念を投資家が払拭していることを示すものとなりそうだ。

今後どうなるかは米国大統領選挙と進行中の法廷での争いに左右されそうだ。バイデン政権になればTikTok、Oracle、Walmart (ウォルマート)間で計画されたディール、そしてTikTokが米国で上場するというタイムラインはなくなるかもしれない。

またTikTokのディールの参加者間で、誰がどれくらい株式を所有し、それがいつ決着して、ディールが前に進むのかについて内部で混乱もある。

TechCrunchの9月の報道は以下の通りだ。

TechCrunchの仮定では、OracleはTikTok Globalの12.5%を、Walmartは7.5%を取る。取引条件ではTikTokの価値を約600億ドル(約6兆2000億円)と見積もることが予想される(Bloomberg記事)。

シンプルな話だが、明らかに完全なものではない。というのも、別の問題が起こっているからだ。

Oracleの副社長Ken Glueck(ケン・グリュック)氏の名前で出された声明の中で、同社は「TikTok Globalの設置に関し、OracleとWalmart は投資を行い、TikTok Globalの株式はオーナーに分配される。米国人が大多数となり、ByteDanceはTikTok Globalの所有権を持たないだろう」と述べた。

ドナルド・トランプ大統領はCNBCなどでTikTokは完全に米国人によって管理されなければならない、と訴える発言をしていた。

米政府のTikTokとのしがらみは、いくつかの原因に起因している。その1つが、プラットフォームのユーザーがかなり執念深い大統領を揺さぶり、計画されていた大統領のイベントを茶番に変えたことだ。明らかにトランプ政権にとってはそうではなかったが、米国にとってさらに大事なこととしてTikTokの中国とのつながりは米国市民のデータをCCP(中国共産党)にさらすことになるかもしれず、アプリに何を投稿し、そして投稿しないかというTikTokの判断を通じて操作される可能性もある。

SequoiaとByteDanceはこの記事執筆時点でコメントの求めに応じていない。

関連記事:トランプ政権のTikTok禁止令が予想どおり遅れる

カテゴリー:ネットサービス
タグ:ByteDanceTikTokドナルド・トランプ

画像クレジット:Sean Gallup / Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。