Truphoneは調達した3億3900万ドルで負債を返済し、IoTデバイスの接続事業に賭ける

低コストの国際的なモバイル音声通話およびデータプラン通じて名を上げた、ロンドンを拠点とするモバイル企業Truphoneは、通信の未来に突き進むための戦略として、とても大きな一歩を踏み出した。同社は2億5500万ポンド(3億3900万ドル)という巨額の資金を調達し、負債を帳消しにした上で携帯電話にとどまらないデバイス間のデータ接続に賭けようとしている。

この投資は、株主割当発行(rights issue)としておこなわれる。すなわち株式が既存株主に対して特別価格で発行されるのだ。今回のケースでは2つの投資ファーム、MindenとVollin Holdingsがその対象だ。これらはロシアの新興財閥で特にサッカーチームChelseaを所有していることで有名なRoman Abramovichが関係するファームである。本日(米国時間10月2日)のニュースに先立ち、彼らはすでにTruphoneの株式の83%を所有していた。

Truphone CEOのRalph Steffensは、TechCrunchに対して、このラウンドはTruphoneを、3億7000万ポンド(4億9100万ドル)と評価したと語った。これは、Truphoneのこれまでに報告されたラウンドに比べて大きなプレミアムではなく、会社がこれまでに調達した資金よりも遥かに少ない。2013年には Truphoneは3億ポンドの評価で7500万ポンドを調達し、現在までに合計で6億ドル弱を調達している。

Steffensによれば、本日の投資の大部分は、Truphoneの負債を返済し、綺麗な状態で進めるように使われるということだ。

同社は2006年以来営業を続けており(私は同社を「スタートアップ」と呼んでも良い期間は、いささかオーバーしていると思っている)、最後の3〜4年の間にビジネスの拡大に伴い約2億3900万ポンドの負債を抱えることになった、とSteffensは語った。

調達資金の残りの部分は会社の投資に回され、特にIoTビジネスでのさらなる買収に使われる。この領域は、Truphoneが既にある程度の基礎を作り上げているところなのだ。「数日の内には発表できる、戦略的買収を進めているところです」と彼は語った。

インターネットに接続できる新しいスマートデバイスの急増は、そうした接続を提供する新たなスタートアップグループの参入を招いている。Truphoneに加えて、同じ事業分野の他の企業としてはCubic Telecomが挙げられる。同社はAudiとコネクテッドカーで協業し、その成長のための資金調達も行っている。

Steffensによれば、Truphoneは「自動車メーカーとの取引」もしているが(メーカー名を挙げることは拒否)、同社のIoTへの関心はそれをさらに超えているということだ。「 当初は自動車業界に焦点を当てていたのですが、ここ6〜9カ月の間には、他の業界からも大きな商談が持ち込まれています」。

興味深いことに、Truphoneの基本的な技術は、同社のレガシービジネスの根幹であると同時に、これから参入したいと考えているビジネスの根幹でもあるのだ。

Truphoneがユーザーに低価格の音声通話並びにデータプランを提供できていた理由は、複数の国の複数のキャリアからの通信容量を、組み合わせることのできるソフトウェアを持っていたからなのだ。これによって、Truphoneユーザーはある容量を購入するだけで、それを様々な国で追加料金なしで利用することができるようになる。

そしてこれからは、安価な音声通話とデータに対するものと同じフレームワークを使って、それを必要とする任意のデバイスに適用し、新しいホームセキュリティや工場の機械のための通信路を提供することができるのだ。

「私たちは投資家のコミュニティから、正しい方向に進んでいるという点で、高い信頼を寄せて貰っています」とSteffensは、TruphoneがIoTに深く入り込もうとしている点について語った。「高度なソリューションを提供するために、一流企業や優良企業の皆さまたちと密な話し合いをする機会が増えています」。これらは自動車だけでなく、これから市場に登場する、より広い範囲の「スマート」なデバイスに対応する可能性があると彼は語った。

一方、同社の現在のビジネスは、従来のサービスの上で継続していく。

これには、220カ国で現在3500社の企業顧客向けに提供されている、Truphoneの低価格モバイルサービス(ローミングパッケージの明白なターゲット市場)、そして新しいAppleとの戦略的パートナーシップのような活動が含まれている。

TruphoneはAppleのeSimベースハードウェアの接続プロバイダーとして働いている(現段階ではiPadだけが対象となっている)。Steffensは、このパートナーシップのことを、現時点で「フルスピード」で取り組んでいる事業だと表現した。Truphoneは、今年の末までに30の市場で、そして来年には54の市場で、Appleデバイスを用いることができるようにすることが目標だ。

Steffensは、Truphoneは2018年には「高い収益性を達成するでしょう」と付け加えた。「それは英雄的な努力を必要とするものではありませんし、超一流企業との契約が必要となるものでもありません。つまり現在のビジネスの延長線上で達成できるということなのです」。

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(翻訳:Sako)
FEATURED IMAGE: NICOELNINO/GETTY IMAGES

投稿者:

TechCrunch Japan

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