Twilioによる3370億円でのSegment買収でデベロッパーはデータ活用アプリ開発が容易に

新型コロナウイルスのパンデミックで事業者は顧客とのやりとり方法の変更を余儀なくされた。商品あるいはサービスを提供しているか、またはどのようにコミュニケーションを取っているかにかかわらず、1つ共通することがある。すべてにおいてかなり迅速なデジタル化を強制されているということだ。

それは米国時間10月12日に発表されたTwilio(トゥイリオ)による32億ドル(約3370億円)でのSegment(セグメント)買収をある程度促した(この買収についてはすでに取り上げているForbesは10月9日夜に報じた)。この買収について突き詰めて考えると、2社は相性が良く、Twilioの顧客が価値ある顧客データにアクセスできるようにすることでプラットフォームが拡大する。Twilioの最高製品責任者でありうChee Chew(チー・チュー)氏は、同社が顧客エクスペリエンスの方向に転換しているように感じるかもしれないが、必ずしもそうではないととらえていると話す。

「多くの人が、当社をコミュニケーション企業だと考えていたでしょう。しかし我々は自社を顧客エンゲージメント企業だと考えています。事業者がより効率的に顧客とコミュニケーションを取れるよう当社がいかにサポートするかを真剣に考えています」とチュー氏はTechCrunchに語った。

共同創業者でSMB(中小企業)グループ担当パートナーのLaurie McCabe(ローリエ・マッケイブ)氏は、パンデミックに関連する動きと、企業がよりデジタルな方法で顧客に接しなければならないニーズを目の当たりにしている。「素晴らしい顧客エクスペリエンスの提供はパンデミックを生き残り、経済の回復とともに成長するための鍵だと多くの企業が認識するようになっています。企業は不透明な時代であるにもかかわらず、生き残って成長するために喜んで資金を注入します」とマッケイブ氏は述べた。

もちろんチュー氏は、デベロッパーが直接顧客データにアクセスできるようにすることでSegmentがTwilioに欠けていたものを与え、それが興味深い応用につながるかもしれないことを認識している。

Segmentが持つデータ取り扱い能力は顧客の全容を提供し、我々が行うすべてのものを真に網羅しています。チャンネルやそれ以外のものにも広く作用するでしょう。なので、顧客の全体像を得たり、当社の顧客がインテリジェンスサービスを構築できるよう、Segmentは異なる方法で当社を発展させてくれると考えています」と同氏は述べた。

CRM Essentialsの創業者でプリンシパルアナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、Segmentがデータを活用しているデベロッパーのエクスペリエンスを支えているとみている。「今回の動きで、Twilioは自社のプラットフォームを使っているデベロッパーから困難を取り除くことで、データ・洞察・相互作用エクスペリエンスのトランスフォーメーションプロセスに影響を及ぼすことができます」とリアリー氏は説明した。言い換えれば、TwilioのAPIを使ってこれまで以上に多様なアプリケーションを構築するためのデータをデベロッパーが使えるようになる。

「CRM at the Speed of Light」の著者で、56 GroupのプリンシパルアナリストであるPaul Greenberg(ポール・グリーンバーグ)氏は「Segmentは、すでにパワフルな統一コミュニケーションプラットフォームとハブで顧客データを使用する能力をTwilioにもたらします。そのため、両社のAPI、デベロッパーにとってのフレキシビリティは事実上、かなりのものです」と述べて賛同の意を示した。

そうなのかもしれない。しかしConstellation ResearchのアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミュラー)氏は、SMSのようにTwilioプラットフォームのコミュニケーション部分はかなりコモディティ化していて、今回の買収は2018年のSendGrid(センドグリッド)買収とともにTwilioにより儲かるデータ分野へとプラットフォームを拡大する余地を与える、とみている。

「Twilioはさらに成長するための方策を必要としていて、同社の戦略は少なくともSegment買収でステップアップしているように見えます。データの移動とデータ保管コンプライアンスは、次世代のアプリケーションを構築する際に企業にとって大きな頭痛の種です」とミュラー氏は述べた。

チュー氏が指摘したように、初期の問題はSMSメッセージをアプリケーションに組み込むのに関連するもので、デベロッパーが当時必要としていたためにTwilioが解決しようとしていたものだった。しかし状況は変わり、同社はより統一された顧客コミュニケーションエクスペリエンスを提供したいと考えていて、Segmentがその能力を大きく前進させるのに役立つはずだ。

関連記事:Twilioが顧客データのSegmentを3200億〜4200億円で買収へ

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Twilio買収API

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。