Twitterの2015年を検討する―財務は上昇、ユーザー数は頭打ち、株価は急落

2015-12-25-twitter-down

Twitterにとって2015年は最良の年ではなかった。世界的に知らぬもののない大企業となり、売上はアップしたが、ユーザー数は頭打ちで、株価は急落した。

Twitterは結局今年も根本的な問題を解決できなかった。財務状況は良好なトレンドを示しているが、ユーザーベースの拡大がどうしてもくうまいかない。結果論になるが、市場は後者の要素をやはり重視した。今年、新しいCEOが就任したが、これまでのところ同社のユーザーを目に見えて増加させるような成果は上げていない。

その結果、年の終わりを迎えてTwitterの株価は上場以来最低水準のまま取引されている。

グラフを見れば一目瞭然だ。Twitterの株価は上場直後に60ドル近くまで急伸した。その後しばらく30ドル台の半ばで推移し、40ドル台を回復することはなかった。しかし夏を過ぎるとTwitterの株価は20ドル台にまで急落した。

報酬の一部として株式取得のオプションを得ているものの、その行使価格がはるかに高く設定されている社員にとってこの実勢価格は深刻な問題だ。こうした人々は被害者の分かりやすい例だが、株式の取引価格が下落すると現に巨額の損失を被る人々が存在する。また上場株の下落は人材の採用を困難にし、社内の士気を下げ、、幹部の離職を促す。

今年Twitterには何が起きていたのか? 順を追って検討してみよう。

Twitterの財務状況

あらゆる企業にとって極めて重要な情報、つまり財務のパーフォーマンスの数字はTwitterの成功を告げている。決算報告によれば、同社の売上は順調に拡大しており、ウォールストリートのアナリストの予測を上回っている。ユーザーベースの1人当たり売上も印象的な数字だ。以前Twitterは一過性のブームに過ぎないとか財政的に維持可能ではないなどと批判されたものだ。それに対して現状は次のようなものだ〔下記のTwitter決算記事はいずれも翻訳ずみ〕。

ソーシャルメディアのマネタイズの可能性に関する限り、Twitterは輝かしいパイオニアだと評してよいだろう。この良好な財務状況を考えれば同社の経営チームは称賛されるべきだ。

しかしこの優れた財務状況にも問題があった。経営チームがユーザーあたり売上額アップさせるという堅実かつ優秀な仕事をしたとはいえ、Twitterの売上総額は依然としてアクティブ・ユーザー数に比例する。長期的にみればTwitterが収入を増やすにはユーザーベースを拡大するしかない。単純な理屈だが、もしTwitterのユーザー数が現状のままで推移し、要するに拡大に失敗するなら、長期的な成長は望めない。

いくら全力で絞ってみても、乾いた雑巾では得られる水滴には限界があるということだ。

Twitterの経営陣は、これまでの優れた仕事にもかかわらず、このサービスこそ日常使うべきソーシャル・ツールだと一般ユーザーを説得することに失敗している。.

Twitterのユーザーベースはなぜ拡大しないのか?

2015年の第2四半期の決算報告に際して新CEOのジャック・ドーシーはTwitterの経営の困難さを非常にシンプルに表現してみせた。「第2四半期の決算は収益化の良好な進展を示しているが、オーディエンスの拡大の分野ではわれわれは不満を感じている」

ドーシーの声明はTwitterの置かれた状況を非常に的確に要約していると思う。各種の財務指標は良い。しかし実際にログインしてくるユーザー数は期待ほどに伸びていない。月間アクティブ・ユーザー数は実際のところ頭打ちだ。株価の将来性がユーザーベースの拡大にかかっているソーシャルメディア企業としては投資家への深刻な警告だ。

もちろん、Twitterのユーザーベースの拡大が完全に停滞しているわけでない。Twitterの公開投稿を読むだけならログインは必要ないので、さまざまな理由でログアウト中のユーザーも多数存在する。Twitterも努力を重ねているが、こうしたユーザーを追跡することは非常に難しい。またTwitterではサービスへのエンゲージメントを高めるためにさまざまなプロダクトを開発している。しかしTwitterがマネタイズを劇的に改善する最良の方法はユーザーの関心グラフの可視化だろう。ユーザーはこの情報を利用するためにはサービスに登録し、ログインしていなければならない。そうして他のユーザーをフォローして始めてそうした人々が何に関心を抱いているかを知ることができる。

いくらTwitterの財務パフォーマンスがアナリストの予測を上回り続けてもログイン・ユーザー数がフラットなまま推移するのでは今後の大きな成長は望めない。企業の損益、つまりボトムラインを改善する方法はいくつか存在する。まったく新しい広告手法を開発する、あるいは広告収入を得る新しい分野に参入することは有効だ。しかし結局のところ、投資家の目を覚まさせるような劇的な効果はユーザー数の爆発的な伸び以外には期待できない。

要約すれば、Twitterの売上は増加はしているが、ユーザー数は頭打ち、株価は低下しているという状況だ。

投資家はTwitterに冷たすぎるのだろうか? 同社は十分な額のキャッシュを抱えているし、何十億ドルも稼いでいる。しかしコンテンツのレベルのカギを握る優秀なジャーナリストや著名人の関心を失うことなく一般大衆をユーザーに引き込めるかどうはTwitterにとって今のところ未知数だ。

Twitterは以前からそうだったが、現在も非常に理解しにくい企業だ。経営チームは新たな広告プロダクトを多数発表してきた。またPeriscopeの例でも明らかなように、大金を投じてビデオ広告の分野にも進出した。これらはすべて必要なことであるが、理論としても現実としても、効果が現れるまでには時間がかかる。こうした事情がTwitterの株価を低い水準に留めているのだろう。

Twitterが成長を必要としているなら、いわば「全部の気筒に点火して仕事をさせる」必要がある。つまりオーディエンスのモニター、獲得、満足の最大化などに社員全員がもっと真剣にならなければいけない。

先日、2015年第3四半期の決算についてTwitterにコメントを求めたところ、広報担当社員は決算発表の際に行われた電話会議のページへのリンクを送り返してきただけだった。こんなことではいけない。

画像: Bryce Durbin

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

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TechCrunch Japan

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