Uberからスピンアウトした歩道走行ロボットServe Roboticsが約15億円獲得

Uber(ウーバー)傘下のPostmates(ポストメイツ)から3月にスピンアウトした自動運転によるサイドウォークデリバリー(宅配)会社のServe Robotics(サーブ・ロボティクス)が、拡張シードラウンドを1300万ドル(約15億円)で完了した。得た資金で、成長に向け歩道走行ロボットを増産し、新たな顧客層や地域への拡大計画を加速する。

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「当社の目標は、今後2~3年のうちに、米国の主要都市すべてにロボットを配備することです」と、Serveの共同創業者でCEOのAli Kashani(アリ・カシャニ)氏はTechCrunchに語った。

今回のラウンドには、Uberが戦略的投資家として参加した。また、Delivery Heroが出資するDX Ventures、セブン-イレブンのコーポレートベンチャー部門である7-Ventures、Wavemaker Partners傘下で、フードオートメーションのベンチャースタジオであるWavemaker Labsも参加した。本ラウンドは、Serveが3月に実施したシードラウンドを拡大したもので、ベンチャーキャピタルのNeoやWestern Technology Investmentなどの既存投資家に加え、起業家や、エンジェル投資家のScott Banister(スコット・バニスター)氏も参加した。

Serveは2018年から、ロサンゼルスの複数の地域でPostmatesの顧客に配達を行ってきた。その頃同社は、まだ「Postmates X」という社名で、配達プラットフォームPostmatesのロボット部門だった。2020年に商用サービスを開始した。同社のロボットは、ロサンゼルスとサンフランシスコの100以上の加盟店から、非接触型の配達を数万件実施したという。同社は11月の発表で、2022年初めからLAでUber Eats(ウーバーイーツ)の顧客に対し、オンデマンドのロボット配達サービスを提供すると明らかにした。

カシャニ氏は、シリーズAラウンドの前に新たな戦略的投資家を迎えることは意味のあることで、参加した投資家の顔ぶれに同社の2022年の動きに関するヒントが隠されていると述べた。

「Uber Eatsの顧客やPostmatesの顧客以外にも浸透しつつあります。2022年はLAで営業地域を拡大するとともに、新たな都市にも進出する予定です」とカシャニ氏は話す。「セブン-イレブンとDelivery Heroが出資しました。彼らとのコラボレーションについて今後ご紹介できると思います。他にも数多くのパートナーと協議中であり、準備が整い次第お伝えします」。

コンビニ大手のセブン-イレブンは、自動運転による配送に馴染みがある。同社は最近、Nuroと共同で、Nuroの自動運転車を使った商業配送の小規模試験を開始した。また、韓国のセブン-イレブンの運営会社が、同国のスタートアップNeubilityが開発した歩道走行ロボットの実験を開始した。2016年には、セブン-イレブンはネバダ州リノで、ドローン企業Flirteyと共同で自動運転配送の実験を行った。Delivery Heroも過去に歩道走行ロボットの実験を行った。2018年にはStarship Technologiesを起用して、デリバリー会社Foodoraの顧客にサービスを提供した

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「Serve Roboticsは、米国の主要都市に自動運転による配送をもたらし、最先端の自動技術でロボット分野をリードしています」と、DX VenturesのパートナーBrendon Blacker(ブレンドン・ブラッカー)氏は声明で述べた。「この革命的な技術は、配送の未来を再構築する可能性を秘めています。私たちはアリ氏のビジョンと彼が集めたワールドクラスのチームに投資します」。

カシャリ氏によると、シードラウンドの完了以外にも、Serveは自主性の向上についてのニュースをいくつか予定しているが、具体的な内容には触れないという。Segwayのロボットプラットフォームを自社の将来の車両に採用する契約を締結したばかりのCocoのように、自動運転のためには人間の関与が重要だと主張する競合他社もある。一方Serveは、可能な限りリモートパイロットを方程式から排除することを目指している。

「私たちのロボットは、ほとんどの場合、自動運転モードで独立して動くことができます」とカシャニ氏はいう。「このことは、安全性と経済性に非常に重要な意味を持ち、当社の車両を商業運用できる理由の1つでもあります」。

人間が関与すると、海外のリモートオペレーターを使ったとしても、経済的にはうまくいかないとカシャニ氏はいう。ただし同氏は、人間に頼ることが合理的ではないケースは、1対1の関係、つまり1人の人間が1台のロボットをモニターするということを1つ1つ行う場合だけだと認めた。CoCoと同様、Serveの問題は、街中に配置した複数のロボットを、1人の人間がモニターするというところまで自律性を高めるにはどうすればよいかということだ。

「ロボットには、ネットワークが切断されたときや誰かがミスをしそうになったときに、自分自身を安全に保つためのオンボード機能が必要です」とカシャニ氏は話す。「ロボットが道路を横断するときなどは、ロボットを見守っていただきたいのです。それは単に、安全の観点から、そういう時に人間とクルマが関わるからです。ロボットが理解できない場合、人間にバトンタッチすることもあれば、そうでないこともあります。通常は、ロボットが自分で状況を把握しようと試み、それができなければ人間が介入します。そうするのは、1つには時間がかかるからです。時間に追われていると、待ちたくないですからね」。

歩道走行ロボットによる配達は、業界としての盛り上がりと、最も洗練された技術と最良の市場戦略を持つ企業間の競争が始まったばかりだ。今回の資金調達と、それにともなうパートナー企業の登場により、Serveはすでに規模拡大に向けて準備を整えつつある。

「セブン-イレブンは私たちと協業できるコンビニエンスストアの代表であり、Delivery Heroは私たちが協業できる配送プラットフォームだといえます」と、Serveの広報部長であるAduke Thelwell(アデューク・テルウェル)氏はTechCrunchに話した。「私たちは、レストランチェーンとの提携、将来的には医療品の配送、薬、アルコール、大麻なども視野に入れています。このように、私たちはさまざまな分野でパートナーシップを築いています」。

画像クレジット:Serve Robotics

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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