Uberの自動運転車がピッツバーグで走行開始、早速乗ってみた

uber_atc_pitt_10

今日から、ピッツバーグのUberユーザーの中には、配車を依頼する時、自動運転車に乗る選択肢が登場するので驚くかもしれない。

Uberがカーネギーメロン大学のロボティクスセンターから何十人もの研究者を採用し、技術開発を進めてから1年半経ってからの発表だった。

Uberは火曜日、レーダー、カメラを始めとするセンサー機器を搭載した14台のFord Fusionの一部を少数の記者に公開した。これらの車は、ピッツバーグのダウンタウンから北東に位置するUberのAdvanced Technologies Campus (ATC)に並んでいた。

私は街中を45分かけてこの車を試乗した。これは、Uberの初となる完成形自動運転車のローンチではない。まだ走行検証の一環だ。Uberは、自動運転車が現実世界にどのように反応しているかを学び、技術を高めたいと考えている。車が歩行者にどのように反応するか、そして歩行者が車にどのように反応するかを確認する。

「自動運転車の隣を走行するドライバーはこの車を見てどのように反応するでしょうか?乗客が初めて自動運転車に乗り、Uberのハードウェアとソフトウェアの完成形を体験する時、何を感じるでしょうか?そしてそれは何を意味するでしょうか?」とUber ATCのディレクターを務めるRaffi Krikorianは調査内容を説明する。

彼らが私と同じようなら、まずはそれに魅了され、続いて退屈さを感じることになるだろう。

自動運転車に乗る

私はUber社員からスマホを受け取り、そのスマホのUberアプリから自動運転車を呼んだ。数分すると、Ford Fusionが現れた。Uberのエンジニアが前の2席に座っていたので、私はドライバーの後ろに座った。

乗車してから、私は座席に設置されたタブレットのボタンを押した。出発の準備が整ったという合図だ。タブレットには、車が見ている景色が映し出される。道路の部分は青く、他の物体は赤く表示される。このドライブでは、ピッツバーグのローレンスビル地区にあるATCのビルからダウンタウンに行き、9th Street橋を通ってノース・ショアに向かう。まるで幽霊が操っているかのように、ハンドルが勝手に動いて車が発進した。

uber_atc_pitt_15

ドライバー席に座るエンジニアはドライブの間、ずっと道路を注視していた。ハンドルに手をかざし、足もペダルをいつでも踏めるように準備していた。車線を他の車が完全に塞ぎ、自動運転車が停止した場合は、ドライバーはマニュアルモードに切り替え、車線変更を行ってそこを回避する必要がある。Uberの自動運転車はまだこの操作を行うことができないからだ。もう一人のエンジニアは、助手席に座ってラップトップを開いていた。通常の運転時には、ドライブの様子をメモしているのだという。

初めて自動運転車が障害物に直面した時、相当な緊張感があった。1台のSUVがバックしながら道路に入ろうとしていた。車のハンドルをロボットに預けるまで、普通のドライブでも予期せぬことがこんなに起きているなんて気づきもしないだろう。自動運転車にとっては、そもそも橋の上でどこを走行するかを決めるのが難しいタスクだが、橋を渡っていた時、走行していた車線に大型トラックが停車していた。ドライバーはマニュアルに切り替えて車線変更したが、その時、市の職員がトラックの前から飛び出し、私たちが乗っている車の前に垂れ幕が落ちた。

車のハンドルをロボットに預けるまで、普通のドライブでも予期せぬことがこんなに起きているなんて気づきもしないだろう。

もし、その時自動運転モードだったのなら、この車がどのように通行人や垂れ幕に反応していたかは分からない。これ以外では、自動運転車が周囲の状況に反応している様子が見て取れた。乗客の乗り降りのために停止しているバスの後ろに止まり、バスが右に曲がろうとしている時も止まった。信号を読み取った。1回だけ黄色信号で止まったが、他の黄色信号では走行を続けた。交通ルールも守った。あまりに普通のドライブだったので、少し退屈になるほどだった。緊張感は早々になくなっていた。

目的地に到着し、エンジニアは、今度は私がUberのキャンパスまで「運転」してみることを勧めた。ダッシュボードに青い光が付いて、コンソールにある銀色のボタンを押すと車は自動運転に入る。ブレーキを踏んだり、加速したり、あるいは赤いボタンを押すとドライバーが自分で運転を行うことができる。道中、車線にバンが停車していたので、その時だけ自分で運転を行った。

uber_atc_pitt_17

自動運転中は何もしなくて良いのだが、周囲の状況を注視しなければならない。これは奇妙な感覚だった。他のことを考えたいという誘惑があり、ハンドルに手を添えなくともいいかなとさえ思ってしまう。自動停車や駐車と完全な自動運転にするかどうかという線引きが曖昧になってしまうのは分かる話だ。

私はもう一人のエンジニアと席を交代し、もう一度街中の周回した。今回はピッツバーグで交通量の多いStrip Districtを通る。道には多くの車が駐車していた。道に並ぶ商店やレストランに配達をするため、バンがひっきりなしに停車したり、発車したりしている。自動運転車は、駐車スペースから飛び出して停車している車に気が付くと、少しだけ左に避けた。大抵の場合は、滞りなく道を進んだ。途中で、特徴的なLidarを屋根に乗せたUberの自動運転車がもう1台すぐ近くを走行していた。白いSUVが2台の自動運転車に挟まれる状況だったが、白いSUVがそれを気にしている様子は特になかった。

そのあと、別の橋で渋滞につかまった。数十メートルづつ進んでは止まりを繰り返した。自動運転車は緩やかに止まる時もあれば、急停車することもあった。Uberの地図は目的に到着したと告げるまで、ドライブはほとんど人が運転している車に乗っているのと同じ感覚だった。

uber_atc_pitt_32

予期せぬ事態に備えて

Uberが乗客に配車する自動運転のFord Fusionは、ほとんどの部分で通常車と同じだ。一見して分かる違いは、屋根の乗っているいくつものセンサーを搭載した器具だ。他にもセンサーは車の側面に内蔵されている。

Lidarユニットは、1秒間に140万の地図ポイントを収集し、車の周り360度分のイメージを生成する。カメラとGPSシステムが、それにさらに情報を加えている。

試乗を終えて、私はこのテクノロジーに安心感を覚えた。自動運転車は周りの物、人、さらに道路のくぼみまで検出し、賢く対応することができた。予期できることは、すでに対応できる。Uberにとってより大きな課題は予期せぬ事態にどう対応するかだ。

Uberはピッツバークのいくつかの地区で自動運転車の配車サービスの提供を開始する。数週間内には、空港と北部の地区にも展開するという。ゆっくりと展開するのは、Uberは車が走行する道を予め地図に落とし込む必要があるからだ。カーネギーメロン大学の研究者 Aaron Steinfeld(Uberとは関係していない)によると、これは普通の工程だという。自動運転車が事前に速度制限や汎用的な情報などを収集した地図データを受け取ることで、車はリアルタイムに変化する、例えば通行人といった要素を検知することに注力することができる。

Uberは全てのロードテストのログを残し、そのデータを元に、車が特定の状況下ではどのように反応すべきかを調整しているという。例えば、車が十字路に差し掛かった際は、十字路に到着した順に車が走行するルールだ。しかし、他の車がその順番に従わなかった場合はどうだろうか?車が飛び出してきたら自動運転車は止まることを知っているが、もし別の車が渡るのに時間がかかり過ぎるようなら走行するという判断を覚えておく必要がある。

人は運転する時、様々な社会的サインを感覚的に読み取っている。他のドライバーとアイコンタクトをするし、ジョギングしている人の細かなボディーランゲージを読み取って、道を渡ろうとしているかどうかが分かる。Uberの車も通行人が道を渡ろうとしているかどうかを予測することができるが、こうした社会的サインを読み取ることに関してはまだ目標のままだ。

次の半年内に、Uberはエンジニア1名が共に乗車するプランに切り替える予定だ。最終的にそのエンジニアもリモートのヘルプセンターにする計画でいる。車が未知の状況に直面した時、乗客はヘルプセンターの人と連絡することができる。Uberはまた、渋滞などで身動きが取れなくなるなどの突発的な状況に陥るのを防ぐ方法、そして道に多くの歩行者がいる場合にどのように対応すべきかを検証している。

uber_atc_pitt_26

ピッツバークから開かれる可能性

Uberはエンジニア人材に惹かれてピッツバーグにやってきた。カーネギーメロン大学には高名なロボティクス教科があり、アメリカ中の自動運転開発チームのメンバーを輩出している。

この都市は支援にも積極的だ。市長のWilliam Pedutoは、Uberを利用していて、都市に新しいサービスや雇用を生み出す革新的な会社を迎い入れると話す。

「ピッツバーグ、特にカーネギーメロン大学は何十年にも渡って自動運転車の研究を牽引してきました。そのため、これは合理的なステップなのです」とPedutoは言う。「州法により、免許を持つドライバーがハンドルの前に座っていれば自動運転車はペンシルベニア州の公道を走行することができます。Uberのサービス展開時にもドライバーはいます」。

私たちを会場まで送ったUberのドライバーでさえ、関心を寄せているようだった。彼女は、自動運転車の検証期間中に自分も自動運転車の付き添い運転手となる機会があるか気になると言っていた。

Uber社員は、ピッツバーグで自動運転車を検証するのは気候的にも有利と話す。Googleは自動運転車をシリコンバレーで試運転をしているが、そこではあまり雨は降らない。ピッツバーグには四季があり、いびつな格子状に道が走る古い都市には橋もあり、道には多くのくぼみもある。

「ピッツバーグは運転におけるアルペンスキーのような難しさと言っています」とATCのKrikorianは言う。「ピッツバーグでの運転を完全に攻略できれば、世界中の他の都市でも同じように攻略できると自信を持って言えるでしょう」。

  1. uber_atc_pitt_01.jpg

  2. uber_atc_pitt_11.jpg

  3. uber_atc_pitt_08.jpg

  4. uber_atc_pitt_13.jpg

  5. uber_atc_pitt_05.jpg

  6. uber_atc_pitt_20.jpg

  7. uber_atc_pitt_21.jpg

  8. uber_atc_pitt_29.jpg

自動運転車のリトマス試験紙

今回の発表でUberは、現在のテクノロジーがマス向け展開できるとは一切示唆しなかった。Googleと同じように、カーネギーメロンや他の研究所でも自動運転テクノロジーの開発を行っていて、何時間ものロードテストを丁寧に記録している。Uberのチームも、自動運転車を公道に解き放った時に直面するだろう膨大なシナリオを少しづつ検証している。

「シミュレーションをどれだけしようと、全てを掌握することはできません。だから実際の道をたくさん走行することが重要なのです。Googleの車も道路のデータを大量に集めています」とSteinfeldは言う。「実世界の現場で研究を行うこの重労働の検証はこの世界の伝統なのです。ロボティクス学術協会で見るものは全てこういった検証を元にしています」。

人々が自動運転車にどのような反応を示すかは近い内に分かるだろう。Uberの自動運転車の一部である、14台のFord Fusionsを公道でみかけたドライバーは、ロボットの隣を走行することにオプトインしたわけではない。Uberのユーザーは自動運転車に乗車することに対してオプトインすることはできるが、彼らにとっても新しい体験だ。また、Uberの既存ドライバーがどのように思うかも分からない。自動運転車の付き添いエンジニアになるかもしれないし、自動運転車に仕事を奪われることになるかもしれない。

世界は初めて、1つの都市にこれだけ多くの自動運転車の連帯が登場したのを目撃することになるとSteinfeldは話す。人々の関心と興味が十分に高まり、それは人々が持つ自動運転車に対する見方を変える力になるだろうという。

「自動運転に対して、多くの人は少し落ち着かない気持ちでいるでしょう」とSteinfeldは言う。「しかし、一度体験すれば親しみを持ち、徐々に許容されるようになるでしょう。ピッツバーグでの検証は、アメリカ中で自動運転に対する人々の許容を得られるかどうか、社会全体がどのように捉えるかを理解することにつながります」。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。