Uberの自動運転車部門は月に22億円超を費やしていた

IPOの準備段階で、Uberの巨額の支出と巨大な野心の詳細が、裁判所への提出書類から明らかになった。

先週公開された裁判所の文書によれば、Uberは今年、路上に7万5000台の自動運転車を配備し、2022年までには13都市で無人タクシーサービスを運用する予定だったという。この野心的な目標を達成するために、今年後半に公開を予定している同社は、自動運転技術の開発に毎月2000万ドル(約22.3億円)を費やしていた。

2016年に遡るその数字が描き出すものは、その大胆すぎる自動運転の目標を必死で追い求め、そのためにはたとえ無謀であろうとも糸目をつけず支出を行う企業の姿である。Uberが今年後半のIPOを準備する中で、この新たに明かされた詳細は、同社がいまでも、創業者のトラビス・カラニック氏が提唱していた、Uberが未来に「生き残る」ため技術の開発を続けているという、困惑するような事実を思い出させるものかもしれない。

このレポートは昨年のWaymo(ウェイモ)との間の、特許及び企業秘密に係る窃盗訴訟のためにUber向けに書かれたものだ。この訴訟でWaymoは、元Googleの技術者だったアンソニー・レバンドウスキー氏が同社を辞めてトラックのスタートアップOtto(オット)を起業した際に、Googleの技術的な秘密を持ち出したと訴えた。Uberは2016年にOttoを買収している。Uberは、Waymoが被った経済的損害額に対するWaymo自身の18億5000万ドルという莫大な評価に対して疑問を投げかけるために、専門家の立場の証人として、レポートの著者であるウォルター・ブラティック氏を雇った。ブラティック氏のレポートは、Waymoの企業秘密と言われているものを独自に開発するためのコストは、60万5000ドルだと報告している。

Waymoは最終的にUberの株式の0.34%を受け取ることになった。これは最近の同社の評価額である900億ドルが正確であるなら、IPO後には3億ドル前後に相当するものとなる。

ブラティック氏のレポートは内部の詳細な分析を行い、Uberが2016年に行っていたProject Rubicon(プロジェクトルビコン)というコードネームのプロジェクトについて報告している。その年の1月のプレゼンテーションでは、2018年には無人車によってUberは利益を得ることができると予測していたが、それが2016年5月になると、Uberは2019年までには1万3000台の自動運転車を所有することになるだろうとしていた。そのたった4カ月後、その見積もりは7万5000台へと急増した。

現在のUberの自動運転技術の責任者であるエリック・メイホーファー氏は、Uberが2022年までに数十の都市に数万台の自動運転車を投入するという当初の想定は「非常に憶測的」な「仮定と見積もり」によるものだったと証言した。メイホーファー氏はそれ以外の数字の開示を拒否したが、以下のように語った「13カ所以上の都市を考慮する多くのシナリオを検討していた筈です。他のシナリオでは200、あるいは100もしくは300カ所の仮定をしていたかもしれません。それは目標を達成するためのパラメータを理解するために、回してみる必要のあったツマミ群なのです」。

当時Uberの自動運転車を担当していたエンジニアであるジョン・ベアーズ氏によって設定された、1つの具体的目標は、2020年までに人間のセーフティドライバーを不要にできるようにすることだった。同社の技術者たちは、Ottoとレバンドウスキー氏を獲得することでその進捗が劇的に進むと確信していたようだ。

「ある時点で、ジョン・ベアーズ氏と(元Googleのエンジニアである)ブライアン・マックレドン氏は、そのことで(自動運転車の開発が)12から24カ月早まると見積もったのです」と証言しているのは、Uber社の開発マネージャーの1人だ。

新たに開示された、2016年1月のレバンドウスキー氏とのミーティング議事録によれば、ベアーズ氏は単にレバンドウスキー氏と話すだけでも数億ドル分の価値があると考えていた:「彼は何を行うべきで、何を行うべきではないかについての、洗練されたアドバイスを提供してくれるでしょう。彼と1日過ごすことで私たちのチームは2020年に向けて何カ月もの節約をすることができるでしょう(1カ月==2000万ドルの支出)」。

TechCrunchの試算によれば、もしUberが2015年の初頭に始めたその自動運転プログラムに対して月々2000万ドルの経費をつぎ込み、そしてOttoの買収に2億ドルを使ったとすれば、Uberは自動運転車の研究に9億ドル(100億円)以上を使った可能性がある。対照的に、Waymoは2009年から2015年末までに、独自の自動運転車に対して11億ドルをつぎ込み、現在は毎年10億ドルを支出している可能性がある。

しかし、OttoとUberの新婚旅行の期間は短いものだった。訴訟の宣誓の中で、ベアーズ氏は、Ottoの買収によりUberの自動運転車への取り組みが進むとの期待は「2016年1月初頭から3週間から4週間」続いただけだったと述べた。2016年8月までには、彼の証言によれば、実際には後退であることが判明した:「私たちはそれを活かすことができませんでした。アンソニー氏の管理と指導が結果としてもたらしたのは私たちのスタッフに対する管理上の混乱でした」。

ブラティック氏のレポートには、Uberが自動運転車に投入していたスタッフの数が詳細に書かれている。2017年6月におけるUberのハードウェア部門の人数は155人であり、ソフトウェアには405人が取り組んでいたという。それよりも2カ月前に出た別のUberのレポートには、それよりも2倍多い1500人が自動運転ユニットで働いていると書かれている。とはいえこの数にはおそらくUberのテスト運用チームと車両操作担当者も含まれているのだろう。

今回新たに開示された文書では、Uberが行ったとされるWaymoの企業秘密の不正利用で、Uberは自動運転のテクノロジーを3年10カ月以上加速することができた、とWaymoが主張していたことも明らかにされた。

「これが意味することは、2022年までに13都市での商用運行を行うとするUberの想定を考慮すると、Uberは13都市での自動運転技術そのものの商用化の準備が2018年までには整っていなければならなかったということである」とブラティック氏は書いている。もちろんこれは実現していない。実際昨年3月のアリゾナ州テンペでの死亡事故の後、Uberはようやく最近になって、数少ない自動運転車を使う公道上のテストを再開したところだ。

Uberは2018年の第4四半期に8億6500万ドルの純損失を計上したが、これまで利益を挙げたことは一度もない。

画像クレジット: Uber

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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