UPSがドローン配送テストを実施―、実用化に向けてはまだ課題も

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今週の月曜日、フロリダ州タンパの郊外にあるブルーベリー畑で、UPSは初となるドローンを使った住宅への配送テストを実施した。

実際の配送は、まずトラックの屋根からオクトコプター(またはマルチコプター)と呼ばれる8つの翼を持つドローンを飛ばし、ドローンが直接家まで荷物を配達し、離陸地点とは別の場所に移動したトラックまで戻ってくるという流れで行われた。その後トラックに取り付けられたロボットアームがドローンを引っ張り、屋根の上に機体を着陸させた。

月曜日のテストで使われたドローンは、オハイオ州にあるWorkhorse Group Inc.と呼ばれる会社が製造したもので、同社は以前からUPSと取引があった。Workhorseはドローンの開発以外にも、商業用の電気式ハイブリッドトラックやバッテリーを製造している。UPSはこれまでに彼らから350台のハイブリッドトラックを購入しており、そのうち125台が実際に日常業務で利用されている。そしてWorkhorseが新たに開発し、今回のテストで使われたHorseFlyドローンデリバリーシステムは、同社のトラック専用につくられたものだ。

テスト用トラックは、屋根からHorseFlyを飛ばし、着陸時にはロボットアームでHorseFlyの機体を掴めるよう特別に作られたものだった。ドローンの下にぶら下がっているカゴは、トラックの屋根の穴を通じて車内に入りこめるようになっているため、荷物の積み込みもトラックの中から行える。さらにドローンはトラックとドッキングしているときに、アームを通じてトラックのバッテリーに接続し、充電できるようになっている。

トラックからドローンを飛ばすというコンセプト自体はこれまでにもあった。メルセデス・ベンツとドローンスタートアップのMatternetは、ベンツのトラックからMatternetのデリバリードローンを飛ばす「Vision Vans」と呼ばれるプランを2016年9月に発表し、CESではデリバリートラックの実物が展示されていた。

UPSでエンジニアリング部門のヴァイスプレジデントを務めるJohn Doderoは、同社のゴールはガソリン車であれ電気自動車であれ、どんな車両からでもドローンを飛ばせるようにして、ドローンに配送の最後の部分を担当させることだと言う。「トラックの屋根に設置されたドローンの離着陸に使われるパーツは、どんなタイプの車にも取り付けることができますが、そもそも充電が物理的に可能かというのは確認しなければいけません」と彼は説明する。

一方HorseFlyはカーボンファイバーでできており、重さは9.5ポンド(約4.3キログラム)だ。さらに自社開発の18650型リチウムバッテリーパックが搭載されており、最高時速は45マイル(約72キロ)で30分の連続飛行が可能だとWorkhorseは話す。対照的に、ほとんどのコンシューマー向けドローンは22分間しか継続して飛行できない。HorseFlyは10ポンド(約4.5キログラム)までの重さの荷物を運べるので、UPSはさまざまな種類の荷物の配送にこのドローンを利用できる。

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「ドローンが配送することになる荷物を確認してみたところ、50ポンド(約23キログラム)のテレビなど思い荷物は対象になっていないことがわかりました」とWorkhorse CEOのSteve Burnsは説明する。「平均的な荷物の重さやサイズを確認し、ユースケースをしっかり把握してからドローンを開発しました」

その他の条件として、FAA(連邦航空局)の規制にもとづき、HorseFlyは操縦している人の目で視認できる範囲までしか飛行できないため、テスト中は事前に設定されたルートに沿って飛んでいた。しかし実用化されれば、「On-Road Integrated Optimaization and Navigation(別名ORIONシステム)」と呼ばれる、UPS独自のソフトを使ってドローンの飛行経路が決められる可能性もある。

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もしも全てが計画通りいけば、そのうちUPSのドライバーがダッシュボードに取り付けられたタッチスクリーン上のボタンを押すだけで、ドローンが荷物を配送するようになるかもしれない。

これが実現すれば、トラックが入れないような狭い道での配送も楽になり、家と家の間が離れているような郊外の地域では、わざわざ1軒1軒トラックで家をまわらなくてすむようになるだろう。さらにドライバーは自分でドローンを操縦しなくても、ボタンを押せば好きなタイミングでドローンを飛ばしたり、呼び戻したりできるようになる。

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着陸時は、HorseFlyのガイダンスシステムが、空や地形、天気、風といった情報をカバーしているオンラインのデータベースから得た情報と、GPSコンパスやLIDAR、赤外線カメラなど機体に装備されているセンサーからのデータを使いながらトラックまで戻るように設計されている。

「技術的に1番難しかったのが、HorseFlyをトラックまで帰ってこさせることでした」とBurnsは話す。「トラックの天井には扉がついているので、基本的にはドローンを掴んで回収し、扉の下にある穴にドローンを置けるようなロボットシステムをトラックの屋根に取り付けなければいけません」

さらに彼はシステム全体がバックアップを考えてつくられていると話す。つまりHorseFlyは、何かひとつの機能が使えなくなっても飛行を続けられ、機能がふたつ使えなくなっても少なくとも着陸できるような仕組みになっているのだ。そのため、田舎ではよくあるように4Gの電波が使えなくても、ドローンは高周波信号を使ってトラックとの通信を続けられる。

UPSはこれまでにもドローンを使った実験を行っており、ルワンダではZiplineのドローンを使って輸血用の血液を運ぶなど、以前は人道支援物資配達へのドローン活用にフォーカスしていた。昨年の秋には、遠隔地への商業目的の配送テストを行い、そのときはUPSがStrategic Enterprise Fundを通じて投資した、ボストンのドローンメーカーCyphyとパートナーシップを組んでいた。しかしドローンがどのように日常業務で使われることになるかについて、UPSの考えが明らかになったのは今回が初めてだ。

UPSは上場企業であるWokrhorse Groupの株を保有していないが、すでにトラックの供給などを通じて関係性ができていることや、Workhorseのドローンテクノロジーの目覚ましい成長を主な理由に、彼らをパートナーに選んだ。

自社でドローンを開発せずに、これまでの配送モデルをそのまま利用し、トラックのようにドローンは他社から購入するというUPSの判断には納得がいく。

ピッツバーグにあるUberの研究施設の動向からもわかるとおり、最近ロボット工学の人材を獲得するのは難しくなってきており、彼らを会社にとどめておくのはさらなる難題だ。以前Uberはカーネギーメロン大学から大量の人材を引き抜いていたが、現在はそのしっぺ返しにあい、自動運転車の開発を目指すFordに社員を引き抜かれてしまっている。

なお、商業用ドローンの利用に関する規制は、まだFAAが精査を続けている。アメリカ郵政公社の調査によれば、アメリカ市民のドローンの誤作動に対する心配度合いは変わっておらず、ドローンによる配送を求める声が挙がっている一方で、ケガにつながる事故を恐れている人も多い。

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正直言って、彼らが心配するのももっともだ。月曜日に行われたUPSの2回目の非公式デモ中には、何か(もしかしたらレポーターのカメラかもしれない)が干渉して、ドローンのコンパスに問題が発生した。ドローンは離陸を中止して、UPSのトラックの屋根に着陸しようとしたが、結果的にトラックの横に落下し、あやうく閉じてかけていた天井の扉に挟まれてしまうところだった。

この誤作動についてBurnsは「こんなことが起きたのは初めてです」と話していた。

技術的な問題を解決していく以外にも、UPSや自社でドローンを開発しているAmazonのような企業は、ドローンと労働者の共存について考えなければいけない。ドローンが人の仕事や時間給を奪ってしまう可能性があるとすればなおさらだ。ちなみにUPSは、ドローンが導入されてもドライバーの仕事はなくならないと話しており、Doderoは「UPSドライバーは私たちの顔であり、顧客は彼らを頼りにしています」と言う。

「私たちは競争力をつけるために、ドローンを導入して、これまでであればドライバーが運転しなければならなかった道のりを省略しようとしているんです」と彼は説明する。「私たちのゴールは、UPSドライバーの代わりにドローンを使うことではなく、ドライバーができることを増やして、より効率的に業務が行えるような環境を整えることです」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

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TechCrunch Japan

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