Visaが欧州の主要フィンテック企業、オープンバンキングプラットフォームのTinkを約2380億円で買収

Visa(ビザ)は米国時間6月24日、Tink(ティンク)を18億ユーロ(約2380億円)で買収する計画を発表した。TinkはオープンバンキングAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)に注力している、欧州の主要フィンテックスタートアップだ。

今回の動きは、Visaが別の人気オープンバンキングスタートアップPlaid(プレイド)の買収を諦めてから数カ月後のことだ。元々VisaはPlaidの買収に53億ドル(約5880億円)を使う予定だった。しかし規制の壁に阻まれて買収を白紙に戻した。

関連記事:反トラスト法に阻まれてVisaがPlaid買収中止、フィンテック関係者に落胆の声が広がる

Tinkは顧客が銀行口座をアプリやサービスからつなげることができるAPIを提供している。例えばユーザーは取引明細書へのアクセス、支払い、銀行情報の取り込み、データ定期更新をするのにTinkのAPIを活用できる。

EUのPayment Services Directive PSD2によりすべての銀行や金融機関は現在、オープンバンキングのインターフェースを提供しなければならないが、統一基準はない。Tinkは3400の銀行と金融機関を統合している。

アプリデベロッパーは、さまざまな金融機関で銀行口座とやり取りするのに同じAPIコールを使うことができる。ご想像の通り、これはオープンバンキング機能の導入プロセスを大幅に簡素化する。

300の銀行とフィンテックスタートアップがサードパーティーの銀行情報にアクセスするのにTinkのAPIを使っている。クライアントにはPayPal、BNP Paribas、American Express、Lydiaなどがいる。Tinkは欧州で計2億5000万もの銀行顧客をカバーしている。

スウェーデン・ストックホルム拠点のTinkのオペレーションは買収後もこれまで通り続くとみられる。VisaはTinkのブランドと経営陣を保持するつもりだ。

Crunchbaseデータによると、TinkはDawn Capital、Eurazeo、HMI Capital、Insight Partners、PayPal Ventures、Creades、Heartcore Capitalなどから3億ドル(約330億円)超を調達している。

「過去10年、Tinkを欧州でトップのオープンバンキングプラットフォームにすべく懸命に取り組んできました。Tinkのチーム全体が一丸となって構築したものをとても誇りに思っています」とTinkの共同創業者でCEOのDaniel Kjellén(ダニエル・ケレン)氏は声明で述べた。「我々はすばらしいものを構築し、と同時に上っ面をなでたにすぎません」。

「Visaに加わることで、我々はこれまでよりも迅速に動き、さらにリーチを伸ばすことができます。次のステージに向けてVisaは最適なパートナーであり、今回の買収がTinkの従業員、顧客、そして将来の金融サービスにもたらすものに非常に胸躍らせています」。

関連記事
Visaがデジタル化促進で銀行とフィンテックの協業を促すプログラムを拡大
VisaカードがApple Payに国内対応、三井住友や楽天カードなど
提携銀行3400行、ユーザー数2億5000万人を抱えるまでに成長したスウェーデンのオープンバンキング企業Tinkが約107億円を調達

カテゴリー:フィンテック
タグ:VisaTink買収API

画像クレジット:Tink

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。