Walmartが自動運転スタートアップNuroと自動配送実験をヒューストンで実施へ

Walmart(ウォルマート)は米国時間12月11日、新たな試験プログラムを発表した。食料品の自動宅配実験をヒューストンの店舗で来年から始めるという。ウォルマートは、無人で商品を顧客に配達する技術を持つロボティック企業であり自動運転車のメーカーのNuro(ニューロ)と提携している。このプログラムでは、Nuroの車両はウォルマートのネット通販で注文された食料品を、ヒューストンでのサービスを希望し選ばれた一部の顧客に届けることになっている。

この自動配送サービスでは、ニューロが特別に開発した荷物専用の配送車R2が使われる。トヨタ・プリウスをベースにした食料品専用の配送車と同じく、これにはドライバーも客も乗車できない。プログラムの目的は、食料品自動配送の実効性とこうしたサービスがウォルマートの顧客サービスをどれだけ改善できるかを確かめることにある。

Nuroはこれまで、自動運転スタックの開発と、地域の家庭に商品やサービスを届ける特注の無人車両にそのスタックを組み合わせることに力を入れてきた。その車両には2つの荷物室があり、食料品のバッグを最大で6つ積むことができる。ソフトバンク、Greylock Partners(グレイロック・パートナーズ)、Gaorong Capital(ガオロン・キャピタル)などのパートナーから10億ドル(約1080億円)を超える投資を受けている。3月には、ソフトバンクビジョンファンドから94000万ドル(約1020億円)の融資を受けたことを発表している。

同社は自動配送の研究で知られているが、自動運転トラックのスタートアップのIke(アイク)に自動運転技術のライセンス供与も行っている。Ikeは現在、Nuroのスタックのコピーを所有している。その企業価値は、最新のラウンドを元にすると数十億ドルに達する。Nuroも、Ikeの少数株を取得している。

Nuroにとっては、ウォルマートとの提携が初めてではない。2018年にはKroger(クロガー)と提携して(Krogerの食品と医薬品販売部門Fry’sも含まれる)自動運転版のプリウスと、カスタム生産のロボットR1の試験を進めている。R1は安全のためのドライバーを乗せずに自動運転ができる車両として、アリゾナ州フェニックス郊外の街スコッツデールで配送サービスを行っていた。2019年3月には、NuroはKrogerとの共同サービスをテキサス州ヒューストンに移し、自動運転版プリウスで運用を開始した。2020年、Nuroは第2世代のロボットR2を使い、Kroger、ドミノ、ウォルマートとの共同試験に臨む。

またウォルマートにとっても、Nuroが最初の自動運転パートナーというわけでもない。ウォルマートは今年の初めに、スタートアップのUdelv(ユーデルブ)と組んで食料品の自動配送実験をアリゾナ州実施した。さらに今年の夏には、アーカンソー州ベントンビルにあるウォルマート本社近くの大型倉庫から食料品を配達する実験を自動運転車のスタートアップであるGatik AI(ガーティックAI)と進めた。さらに、2018年には自動運転の企業のWaymo(ウェイモ)と、ウォルマートの食料品配送トラックを使ったパイロット事業を立ち上げている。食料品の自動配送実験は、フォードや宅配業者のPostmates(ポストメイツ)とも協業している。

「無類の規模を誇る私たちは、何百万もの家庭に食料品を宅配でき、この業界の未来へ向けたロードマップを描くことができます」と、ウォルマートのデジタル事業上級副社長Tom Ward(トム・ワード)氏は述べている。「その過程で私たちは、私たちの店舗からお客様のご自宅の玄関まで、自動運転技術を応用して食料品をお届けするための方法を、いくつも試してきました。この技術は、私たちの食料品集配サービスと、お客様の日常を少しだけ楽にするという私たちの理念の、ごく自然な延長線上にあるものと信じています」と同氏。

ウォルマートの食料品ネット通販事業は成長著しいが、外部の配送サービスとの提携に依存しているのが現状だ。今のところウォルマートは、Point Pickup(ポイント・ピックアップ)、Skipcart(スキップカート)、AxleHire(アクスルハイヤー)、Roadie(ローディー)、Postmates、DoorDash(ドアダッシュ)といった全米の配送業者と提携して配達業務を円滑に回している。Delv(デルブ)、Uber(ウーバー)、Lyft(リフト)との提携も試したが、今は解消している。2019年末には、ネットショップのウォルマート・グロサリーは、3100件近い集配場と1600件の店舗で食料品の配送サービスを行う予定だ。

ウォルマートの食料品ネット通販事業への投資は、売り上げの急増と、Amazon(アマゾン)やTarget(ターゲット)のShipt(シプト)、Instacart(インスタカート)などと価格的にも競合できる選択肢を顧客に提供するという利便性をもたらした。第3四半期には、ウォルマートの食料品事業はネット販売の売り上げを、35%増という期待を上回る41%増にまで拡大させた。これにより、収益増の記録更新が続き、米国で21四半期連続の売上増となった。

今四半期は、ウォルマートは1279億9000万ドル(約13兆9000億円)という収益により株価は1ドル16セント上昇した。しかし、ウォルマートの電子商取引事業は、新しい技術や企業買収のために資金が減り続けており、社内の緊張が高まっている。ウォルマートによると、ニューロとのパイロット事業は2020年に開始されるという。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。