xRプラットフォーム構築のバルスが3.5億円調達、B向けへの応用にも期待

VRやARなどのxRテックを活用したライブエンターテイメントプラットフォームを開発・運営しているバルス(Balus)は5月13日、GMOベンチャーパートナーズ、三井住友海上キャピタルなどの3社より計3.5億円の資金調達を実施した。

同社は今回の資金調達によって、ライブエンタテインメント分野における技術開発および設備への投資、全国・海外のライブ会場の拡大、手軽なバーチャルキャラクターの制御技術の開発などを進めるとのこと。

同社の強みは、都内にモーションキャプチャスタジオを有しており、そこからバーチャルアーティストのライブパフォーマンスを全国のライブ会場へリアルタイム伝送できる点。もちろん、映画館などのリアル会場側にもカメラやマイクを設置するため、アーティストは会場内の様子をリアルタイムに把握でき、双方向のコミュニケーションも可能となる。

最近では、東京・池袋にあるHUMAXシネマズで月2回のペースで有料のVRライブイベントを実施中だ。モーションキャプチャスタジオからのVRアーティスト伝送だけでなく、チケット購入者がバーチャルな花束やスタジオ演出を購入する機能なども提供する。VR、ARなどのコンテンツ作成や運営も手がけており、自社キャラクター以外にも、他社IPのキャラクターなどの制作・運営も委託されているとのこと。

直近では、5月11日、12日には、茨城県のつくば市で開催されたメディア/アート制作体験会「MAXTOUR」に「誰でもVTuber」と名付けたシステムを出展。このシステムでは、PCとカメラを用意するだけで、両手や両足、頭の傾きなどをリアルタイムキャプチャーして、画面上のキャラクターの動きを追従させることが可能だ。写真では二頭身のキャラクターだが、実際は首や胸などの胴体がある長身のキャラクターのほうが動きを正確に捕捉しやすいとのこと。

同社代表の林 範和氏によると「国内ではVtuber、国外ではバーチャルアーティストと呼ばれることが多いこれらのキャラクターは、日本だけでなく中国などのアジア各国でも盛り上がりを見せており、著名なバーチャルアーティストの場合はファン比率の過半数を海外のユーザーが占めるケースも増えてきた」と語る。

「国内では女性ユーザーの比率が増えてきた」と林氏。これまでは女性のバーチャルアーティストが多かったこともあり男性ユーザーが大半を占めていたが、バルスが制作・運営している男性二人組ユニット「MonsterZ MATE」(モンスターズメイト)は、男性、女性のいずれからの支持も高い、珍しいバーチャルアーティストに育ちつつあるとのこと。MonsterZ MATEは、5月8日にユニバーサルミュージックからメジャーデビューを果たし、オリコン総合デイリーチャートでトップ10入りを果たすなどリアルでも注目だ。

さらに「B向けの問い合わせも増えてきた」とのこと。当初はエンターテイメントを主軸に考えていた同社だが、各種イベントに出展したところ、自社のモーションキャプチャスタジオで実現しているバーチャルアーティストの制御・伝送技術について、エンターテイメント業界以外の企業からの問い合わせが増加しているそうだ。現在、金融機関や販売店などの窓口業務をバーチャルキャラクターで代行できないかといった検討も進められている。

2020年に向けて、国内でも超高速で低遅延、それでいて多数の同時接続が可能な通信技術である5Gが話題の中心になりそうだ。つまり、バルスのxR技術が生かせる環境がさらに整うことになる。同社ではNTTドコモとの5G実証実験なども手がけており、今後の事業展開が楽しみだ。

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TechCrunch Japan

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