Y Combinatorデモデー2日目からピックアップ10チーム

Y Combinatorのデモデー2日目には59チームのスタートアップが登壇した。アプリ内課金を処理するサービス、現実の対象を写した写真からアニ文字を作成するサービス、余剰医療機器の再販売プラットフォーム、それに、なんと大腸菌からまったく新しい生命形態を合成するスタートアップもあった。イノベーションはたしかに起きている。

以下、投資家の反応も加味し、TechCrunchが独自の視点からピックアップした10チームを紹介する。

こちらはデモデー1の全チーム紹介TechCrunchが選んだ1日目のトップ10だ。

64-x

バイオエンジアリングの一流のエキスパート( ハーバード大学Wyss InstituteのGeorge Church、Pamela Silver、Jeffrey Wayを含む) によって創立された64-xは通常の生命体が生存できないような過酷な環境でも機能する新しい生命形態を含め、最新のバイオエンジニアリングを利用した各種のプロダクトを準備している。CEOのAlexis Rovner自身、Wyss Instituteのポスドクのフェローであり、COOのRyan Gallagherは元ボストン・コンサルティング・グループのコンサルタントだった。チームはWyss Instituteのテクノロジーをビジネス化することを狙っている。

注目の理由:天才ぞろいのチームは新しい生命形態を創出するかもしれない。

CB Therapeutics

大麻の合法的利用研究とテストを行うSteep HillラボのディレクターだったSher Buttが創立したスタートアップはカンナビノイド(大麻の有効成分)が鎮痛やてんかん発作の抑制など慢性的症状に対して奇跡的効果があるとしてその薬用化を目指している。しかし植物由来のカンナビノイドは品質が一定せず、効果も不安定なため、Buttらはカンナビノイドの工業的合成により品質を安定させると同時に、コストを押さえようとしている。成功すれば収量は24倍、価格は10分の1以下に下がるという。世界的医薬品メーカーのNovartisで医薬品の商用化の経験を積んだButtら共同創業者はこうしたプロジェクトを推進するために理想的なチームだろう。

注目の理由:天然のもっとも効果的な鎮痛剤とされるカンナビノイドを新しいテクノロジーで工業的に大量に合成しようとするのはすばらしいアイディアだ。

RevenueCat

RevenueCat founders

RevenueCatはデベロッパーのアプリ内課金を助けようとしている。デベロッパーはこのチームが提供するAPIを利用してiOSとAndroidでアプリ内サブスクリプションを処理できる。つまり、デベロッパーはそれぞれのプラットフォームの細部やアップデートによる変更を気にする必要がなくなる。

またこのAPIによりデベロッパーはアプリ内サブスクリプションに関する情報を一箇所にまとめて管理できる。 誕生してから9ヶ月のスタートアップは現在、月額35万ドルの売上があるという。これ以外にも何かに取り組んでいるようだがそれが何かまだ明らかにされていない。

RevenueCat hereの記事.

注目の理由:アプリを開発したらすぐリリースする。収入はRevenueCatが管理してくれる。と、これはなかなか説得力があるビジネスモデルに思える。

Ajaib

インドネシアはあらゆる面で過渡期にある国だ。投資に十分な資産を持つ階級が急増しているが、既存の資産管理システムのハードルは高すぎてシャットアウトされている。この状況に対応しようとするのがAjaibだ。このスタートアップは中国で人気のオンライン支払サービス、Ant Financialの資産管理版を目指すという大きな野心を抱いている。 実際、中国は最近までインドネシアと状況がよく似ていた。4年前にAnt Financialがスタートして状況が大きく変化し、急増中の中産階級がオンラインで資産管理を行うことができるようになった。Antはすでに4億人のユーザーを抱えている。

中国と比較すればインドネシアは小さいが、2億6100万の人口がある。管理した資産から1.4%の手数料を徴収するだけでも可能性は巨大だ。

注目の理由:インドネシアの貯蓄は3700億ドルある。Ajaibの資産管理システムがターゲットとする国内マーケットは非常に大きい。

Grin

電動キックスクーターのブームはラテンアメリカにも広がっている。メキシコシティーを本拠とするGrinもその一つだ。共同創業者のSergio Romoらは.(Axiosの記事にもあるとおり)、アメリカでBirdのeスクーター共有事業に投資しようとして機会を逃した。そこでラテンアメリカをカバーするeスクーター事業を立ち上げたという。Sinai Ventures、Liquid2 Ventures、500 Startups、Monashees、Base10 Partnersらが投資している。

注目の理由:eスクーターは2018年を代表するホットな分野だ。 アメリカではBird、Limeの急成長を受けてUbe、Lyftrまで参入中だ。しかしまだ勝者は決まっていない。

Emojer

写真から動く絵文字を作成できるようにするのがEmojerの目的だ。写真を撮ると絵文字になって踊り出すというのはスマートフォンのカメラの面白い使い方だろう。Emojerのソフトは深層学習アルゴリズムによって人体のパーツを認識し、ユーザーは簡単な操作で撮った写真をアバターの動きに変換することができる。Photoshopの複雑なインターフェイスの操作もアニメーションに関する深い知識も不要だ。アバターの仕組みはクリスマのたびに口コミで人気が出るアプリ、Elf Yourselfに似ている。このアプリは友達の写真から顔をコピーして踊る妖精に貼り付けることができる。 Emojerのファウンダーは機械学習とコンピューター・ビジョンの分野で博士号を持っている。

注目の理由:EmojerのCEOは「人々がSnapを使うのはセクスティング(性的なメッセージや画像のやり取り)が大きな目的で、FacebookをHot Or Not(異性の写真を品定めする)に使う人間も多い」と語った。そういう「トロイの木馬」現象を考えるとEmojerは密かにセルフィーアニモジを流行らせるプラットフォームに化けるかもしれない。

Osh’s Affordable Pharmaceuticals

Osh’s Affordable Pharmaceuticalsは低価格の処方薬を提供することで医師と患者双方に利益をもたらすことを目的とする公益法人だ。同社では症例が少ないため探すのが困難だった医薬品の入手へのハードルを下げようとしている。3週間前に同社はウィルソン病に対する薬品を発表した。この症状に有効な薬品はこれまでブラジル、インド、カナダでは利用できなかった。また同社の新薬はコストを月3万ドルから120ドルへと劇的に下げた。Oshでは適用のある市場はトータルで170億ドルにもなると見積もっている。「ジェネリック医薬品の価格は決定的に重要だ。多くの患者が必要な医薬品を購入できないために死んでいる」とCEO、Alex Oshmyanskyは述べた。同社は解決策を提供できるかもしれない。

注目の理由:症例の少ない難病に対する有効な医薬品が入手できなかったか高価すぎた国々に低コストのジェネリック医薬品を提供するというのは単に優れたビジネスだというだけでなく世界を改善することができる。

Medinas Health

アメリカのヘルスケア・システムに存在する750億ドルもの頭痛のタネに解決策を与えるのがMedinas Healthの目標だ。同社は病院などの医療組織が使用ずみないし不要となった医療機器を再販売することを助ける。シード資金を提供したのはハリウッドスターでベンチャー投資家のアシュトン・カッチャー、Guy OsearyのSound Ventures、General CatalystのRough Draft Venturesファンドだ。 Medinas
Healthは資金不足に悩む地方のヘルスケアセンターの運営コストの引き下げにもなると期待している。

注目の理由:中古医療機器の流通はトータルでは750億ドルにもなる市場だというが、これまでビッグビジネスの目立たない片隅に追いやられていた。この分野をターゲットとして僻地の病院の運営を助けることができるならMedinasは応援すべきビジネスだろう。

And Comfort

大柄な女性のファッションの選択肢はNordstromやMacy’sのようなデパートでも限られている。ところがアメリカの女性の多数はこの「プラス・サイズ」のカテゴリーに入る。1億人のアメリカの女性が非常に少ない選択肢で我慢をしているという。And Comfortはこの状態を改革しようとしている。ハーバード大学でクラスメートだった2人の共同ファウンダーは、消費者直販のファッションブランドを立ち上げ、プラス・サイズの女性を悩ませているアイテムの供給不足という問題の解決を試みている。これにはスタイリッシュかつミニマリストなチュニックやエプロンドレスなどが含まれる。きわめて若いスタートアップだが、ブランドが販売を開始してから数週間ですでに2万5000ドルの売上があったという。

注目の理由:この直販のファッション・ブランドはこれまで無視されがちだった層に高品質でエレガントなアイテムを供給するという。これは有望だろう。

ShopWith

世界中のインフルエンサーの活動を一つのモバイル・アプリから見られるようにするのがShopWithの目標だ。ユーザーはバーチャル店舗に入り、通路に沿って並ぶファッション、コスメティックスなどのアイテムをショッピングすることができる。これらはお気に入りのブロガー、ユーチューバーなどのインフルエンサーが推薦しているアイテムだ。ユーザーはアプリから出ずにこインフルエンサーがフィーチャーしている商品を購入できる。ダウンロードは無料。

このサービスのビジネスモデルはテレビ通販のQVCにやや似ている。ただし〔90年代後半生まれの〕Z世代のユーザーの購入に影響を与えているのはテレビではなくYouTube、Instagram、Snapchatといったオンラインのソーシャルビデオだ。同社によれば、ある美容系インフルエンサーはShopWithプラットフォームを利用することで5時間で1万ドルの利益を得たという。共同ファウンダーはFacebook、Amazonでソーシャル通販ビジネスの運営の」経験がある。

注目の理由:Z世代向けQVC というキャッチフレーズもさることながら、これは着実に売上を伸ばせる方向だ。モバイル・ファーストでインフルエンサーをベースにしたショッピング・サービスは有望。

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滑川海彦@Facebook Google+

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。