YacはSlack世代のためにボイスメールを再発明する

今どきのテクノロジーコミュニティーでは、仕事の仲間は1カ所に集まらないのが流行だ。スタートアップ企業は、そのような分散したチームを快適な形で結びつけ、コミュニケーションを保たせる新しいツールの開発にいそしんでいる。

そのひとつに、SlakやZoomでのコールで育ってきたチームのために、ボイスメールの形を一新させた米国フロリダ州オーランドのスタートアップYac(ヤーク)がある。同社はその技術で、投資家集団から150万ドル(約1億6500万円)の資金を調達したばかりだ。

デジタル技術に支えられて仕事のチームが分散することは、ひとつの現象になっている。遠隔地で働く人の数は増加傾向にあり、鈍る兆しはない。事実、近ごろでは米国人の3%が自宅でフルタイムの仕事をしていると、新しい統計結果が示している。

自宅でフルタイムの仕事をしている米国人はこの20年間でほぼ3倍に増えた。この流れは加速している。

このように従業員が遠隔地で働くようになれば、若い会社も老舗の会社もコスト削減が期待できる。だが、それには確実に代償がある。Yacの共同創設者であるJustine Mitchell(ジャスティン・ミッチェル)氏によれば、コミュニケーションや協力体制が取りづらくなっているという。

彼は、スーツケースメーカーのAway(アウェイ)でのコミュニケーションと文化の問題を指摘している。それが元で、同社の最高責任者は追放されてしまった(後に再雇用されたが)。

Yacは、リアルタイムで返信することなく、声によるフィードバックと非同期のコミュニケーションが行える方法で、この問題に対処した。電子メールやボイスメールも、機能的に非同期コミュニケーションと考えることはできるが、現代の働く人のニーズに対応したツールではないとミッチェル氏は言う。

今のところ、Yacのサービスに1カ月間に残されるメッセージは4500件。1日のアクティブユーザーは250人いる。

Yacのメッセージング・サービスを使っているところ

Yacは、デジタル・デザイン事務所SoFriendlyから派生した企業だ。当初は、Product Hunt主催のMakerフェスティバルに出場するために創設されたのだが、このイベントで優勝したことから第3世代のベンチャー投資家Adam Draper(アダム・ドレイパー)氏から創設チームに連絡が入り、Yacはドレイパー氏のBoost VCから最初の投資を受けた。その後、BetaworksとActive Capitalからも追加の資金調達を果たしている。

鍵となったのは、Yacが可能にする非同期コミュニケーションだとミッチェル氏は言う。YacもSoFriendlyも、自身が分散型チームで仕事をしているため、Slackのような常につながった状態でリアルタイムの通信が入ってくるプラットフォームや、Zoomのように音声通話やビデオ通話が直接入ってくる環境は、非常に煩わしく苦痛であることをよく知っている。

「本格的に遠隔地で仕事をする組織が大きな頭痛に悩まされていることは、よく承知しています」とミッチェル氏。「私たちは、次なるZoomになりたいと思っています。ただしそれは、分散して働く人たちのためのものです」。

Yacには、現在6名のフルタイムの従業員がいて、Slackをアーリーステージの企業の間で大人気にした同じフリーミアムモデルを採用している。無料版でもメッセージの数に制限はないが、アクティブにしておけるメッセージの長さに上限がある。有料会員になるとその上限が外れ、転送や、チームのワークフローに深く統合できるサービスが受けられるようになるとミッチェル氏は話す。すべてがユーザー1名につき8ドルで利用できる。最初の有料プランは今月中に開始される予定だ。

「未来の会議は、音声による手を使わない非同期なものになります」とActive Capitalの最高責任者Pat Matthews(パット・マシューズ)氏は言う。「どの街でも、従業員はもうパーティションの中にはいません。彼らはいつも動いていて、コーヒーショップでマルチタスクをしています。それが、オフィスワーカーではなくリモートファースト(遠隔第一)の原動力です」。

ミッチェル氏は、同社の製品は遠隔チームに適していると言う。同じ建物の別の階に分かれている場合でも、国内の別の街にいる場合でも、世界中に分散している場合も同じだ。

「Yacを使うことは、仕事中に友だちに電話するようなものです。しかし、非同期なので、相手を煩わせることがありません。これにより、とくにチームが全国に散らばっている場合、遠隔地での仕事がやりやすくなります」と、Yacの初期からのユーザーであり、Boseのパートナーシップ責任者のCharlie Taylor(チャーリー・テイラー)氏は声明の中で述べていた。

電子メールやボイスメールで同じことはできないのだろうか? ミッチェル氏も可能だと認識しているが、使い勝手は悪く推奨しないと話している。不在着信ほどイラつくものが他にあるだろうか? Yacなら、Snapのようなインターフェイスでビデオメッセージが送れる。

画像クレジット:TriStar / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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