Yahoo!ニュースがステマ記事の配信停止、一方ではユーザーを「ブースト」獲得した過去も

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Yahoo!ニュースがステルスマーケティング、いわゆる「ステマ」への姿勢を明確にした。
ヤフーは7月30日、Yahoo!ニュースのスタッフブログにて、ステマを行う記事提供媒体への対応を説明したブログエントリーを投稿した。

ステマ、ノンクレジット広告(「PR」などのクレジットを入れずに広告であることを隠し、編集コンテンツと誤認させるような記事広告)の問題はこれまでも多々あった。

3月には一般社団法人インターネット広告推進協議会(JIAA)がネイティブ広告に関するガイドラインを発表。これを受けての媒体、広告代理店などがユーザーに不利益や不信感を与えないコンテンツ作りに向けて動いたり、一方ではノンクレジット広告を作り続けたりと、様々な対応をしていると聞く(念のために言っておくと、TechCrunchは記事広告を一切やってないし、そんな商品メニューもない)。6月には日経デジタルマーケティングが「一部の媒体がYahoo!ニュースへ広告記事を配信している」といった旨の報道をしている。

Yahoo!ニュースは、社外や自社グループで運営するなど数多くの媒体から記事の提供を受けてニュースを配信している。だがYahoo!ニュースに記事を提供している媒体が、ニュース記事の体裁の広告——つまりノンクレジット広告——を編集記事として配信しているというわけだ。

ヤフーでは今回の発表について、「このタイミングになったことに特段理由はない」(広報部)として前述の報道との関連を否定した。だが同日付で「マイナビニュース」と「マイナビウーマン」を配信するマイナビ、「モデルプレス」を配信するネットネイティブとの配信契約を解除したことを明らかにしている。

スタッフブログのエントリーでは、ノンクレジット広告について「読者を裏切るステルスマーケティング(いわゆる「ステマ」)の一種であり、優良誤認として景品表示法違反に問われる可能性もある悪質な行為」とあらためて指摘。自らの方針を次のように説明した。

数多くの媒体から記事の配信を受けているYahoo!ニュースでは、ニュース提供各社との契約で、広告としての表記の有無にかかわらず記事広告やタイアップ記事を配信することを従来から明示的に禁止しており、また、記事中のリンクから広告に誘導することも禁止しています。

 

ニュース提供各社には契約遵守を強く要請していますが、残念ながら違反が認められた場合には、速やかに契約を解除してきました。今後も、契約違反が明らかになった場合は、契約解除はもちろんのこと、Yahoo!ニュースが信頼を損なうことによって被った損害や信頼回復のために要した費用の請求、その他法的措置を含む厳正な対処を行います。

スタッフブログのエントリーは、「もし仮にYahoo!ニュースでこのような悪質な行為を許せば、記事内容に対する信頼が損なわれるだけでなく、読者、広告主様との信頼関係をも損ない、ひいてはYahoo!ニュースが長年かけて構築してきたサービスそのものへの信頼を大きく揺るがす重大な問題と考えており、これらの行為について、積極的に排除し、撲滅したいと考えています」と結んでいる。

ヤフーは“優良誤認まがい”の行為をしたことがないのか

Yahoo!ニュースがこういった姿勢を対外的に発表し、実際にノンクレジット広告を配信していたとされる媒体を排除したというのは、彼らが言うように読者や広告主の信頼に応えるという点で本当に素晴らしいアクションだ。

だが一方で——ステマが景表法でいうところの優良誤認に当たる可能性があるのと同じように——彼らも結果的にユーザーに対して、サービスの価値を誤って認識させかねない行動をしていたことも伝えるべきだろう。

僕は昨月、App StoreやGoogle Playで、アプリのランキングを急上昇させる広告手法である「ブースト」について取材し、記事にしている。詳細については記事を読んで頂きたいのだけれども、ブーストについてざっくり説明すると、リワード広告(コンバージョンに応じて何らかの報酬が付与される広告のこと)の仕組みを利用して、Amazonのギフト券などに交換できる「ポイント」目的のユーザーに特定のアプリをダウンロードさせることでランキングを急上昇させる、極端に言えば「カネでダウンロード数やランキングを買う」手法のことだ。

当時取材に応じた広告代理店、アプリ開発者などは、この仕組み自体が「アプリの価値を実際より優れているように見せている」ということから、「優良誤認ともとらえられかねない」という声を聞くこともあった。そして記事の掲載と並行してヤフーが「Yahoo!ニュース」のアプリでそのブーストを実施していたのを知ったのだ。

以下の画像はブーストを実施していた根拠となる、おこずかいアプリ(指定のアプリをダウンロードすることでギフト券などに交換できるポイントを得られるアプリ。ブーストに使用される)のスクリーンショットだ。なおこの画像はブログ「アップトーキョー」に掲載されていたものを許諾を得た上で使用した。ヤフーでは「ブーストについて定義がないので回答できないが、あくまで広告手法の1つとしてリワード広告を使用したことがある」と説明する。

おこづかいアプリでブーストをしている「Yahoo!ニュース」のアプリ

おこづかいアプリでブーストをしている「Yahoo!ニュース」のアプリ

 

企業である以上ビジネスありきで、信頼性だけを追いかけるわけにはいかないだろう。いかにアプリのダウンロード数やアクティブユーザー数を増やすかも重要だ。だがユーザーの信頼を裏切るような不正な広告に対して毅然とした態度をとる企業だからこそ、自らが利用する広告についても、信頼を裏切らないものであって欲しいと思っている。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。