YouTubeが「低く評価」の数を隠す実験を開始

YouTube(ユーチューブ)は米国時間3月30)、同動画プラットフォームに劇的な変化をもたらす可能性のある実験の開始を発表した。動画の「Dislike(低く評価)」の数を一般視聴者から見えなくするというものだ。同社では「低く評価」の数を見えなくするためのいくつかのデザインを試す「ちょっとした実験」を行うと話している。ただし「低く評価」ボタンが完全に廃止されるわけではない。

YouTubeは、この実験のことをTwitter(ツイッター)で公表したが、コミュニティのフォーラムではさらに詳しく、その目的は動画を好きではないことをユーザーが表明する手段をなくすことではないと説明している。クリエイターは、YouTube Studioを通じて、これまでどおり「高く評価」と「低く評価」の数を見ることができ、またそれらのカウントは現在のままYouTubeの「おすすめ」アルゴリズムに反映される。

YouTubeでは「低く評価」の数を一般視聴者から隠すというアイデアは、クリエイターの意見から出たものだと話している。

「私たちは、低く評価の数の公開が精神的苦痛を招くことがあり、また評価の低い動画を狙ったキャンペーンを誘発しかねないというクリエイターの意見を聞きました」と発表では述べられている。「そこで私たちは、クリエイターの体験を向上させるためのバランスを図る取り組みとして、高評価と低評価の数を表示せず、しかし、クリエイターが視聴者のフィードバックを確実に反映できるよう、その数値を共有できるデザインを試します」。

もちろん、YouTubeの「高く評価」と「低く評価」のボタンの使用には、ある種の群集心理が働くこともあるだろう。しかし「低く評価」の数が、その動画がクリックベイトやスパムや誤解を招くものであることを警告する意味を含んでいるならば、表示する意味がある。

心の健全性や低評価動画を狙ったキャンペーンに対するクリエイターのフィードバックに応え、低評価数を公開しないデザインをいくつか試します。この実験の対象となった方には、今後数週間、下のようなデザインが示されます。

クリエイターのみなさんは、高評価と低評価の正確な数字をYouTube Studioで確認できます。視聴者のみなさんは、これまでどおり高評価と低評価でクリエイターにフィードバックを送ることができ、それはYouTubeのおすすめ動画の選定に反映されます。

YouTubeは、1つのデザインを公表した。それは、これまでと同じボタン配置ながら「低く評価」の数が示されず、親指を下に向けたアイコンの下に「Dislike(低く評価)」という文字が示されている。

YouTubeにログインしたとき、このように画面が変わっていても、ユーザーは自分で実験から抜けることはできない。フィードバックが送れるだけになると、YouTubeでは話している。

念のためハッキリさせておくが、YouTubeはこれをもってすべてのユーザーの画面から「低く評価」の数を排除するとは約束していない。実験で寄せられる意見を参考に、このデザインを広く採用するか、するならばいつ、どんなかたちで導入するかをYouTubeが決めることになる。

ソーシャルアプリから測定値を排除する実験を行ったのは、YouTubeが初めてではない。Instagram(インスタグラム)も好意的な評価(いいね)の数を表示しない実験を行っている。人気競争ではなく、それ本来の体験を楽しんでもらうためだ。Facebook(フェイスブック)も、2021年、「いいね!」ボタンをFacebookページから排除した。より正確な「フォロワー」数を重視する考えからだ。だが「低い評価」の数だけを排除し「高い評価」は残すことで、その動画の本当の人気を視聴者が見誤ってしまう心配もある。

YouTubeがTechCrunchに話したところによれば、この実験は、数種類のデザインに対する意見を集めるまで数週間にわたり、AndroidとiOSで、世界的に実施されるという。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:YouTubeYouTuber

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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