Zero Motorcyclesから最高速度200kmのフルフェアリング型スポーツEV「SR/S」が登場

米国カリフォルニアに本拠を置く電動バイクメーカーのZero Motorcycles(ゼロ・モーターサイクルズ)に新たなラインアップが加わった。米国時間2月19日、ニューヨークにてフルフェアリングタイプのSR/Sがお披露目された。

同社のCEOであるSam Paschel(サム・パッシェル)氏は、昨年発売されたSR/Fのプラットフォームをベースにしたその二輪EVのカバーを取り去った。

新型SR/Sは、SR/Fと共通のバッテリーと駆動系を搭載し、スペックも近い。最高速度は時速124マイル(約200km)、走行距離は最大200マイル(約322km)、トルクは140ft-lb(約19.4Kgf-m)、充電時間は60分で95%と、パッシェル氏は発表会場でTechCrunchに話してくれた。

このZeroの最新型電動バイクはIoT対応だ。エンジン出力や操縦性など、全体的なパフォーマンスをデジタルライディングモードを通じて管理できる。

SR/SがSR/Fと大きく違う点は、フルフェアリングの追加、より楽なライディング・ポジション(バーとペグの位置を変更)、そして空力性能の向上により高速走行距離が13%伸びたことだ。

フェアリングによって、車重はSR/Fの約220キロに対して9キロほど可算された。価格は、SR/Sのベースモデルが1万9995ドル(約222万5000円)。SR/Fの1万9495ドル(約217万円)をわずかに上回る。SR/Sの最上位モデル(大容量バッテリー搭載)は2万1995ドル(約245万円)となっている。

SR/Sは本日から全世界のZeroディラー・ネットワークに出荷される。ディーラーは米国内で91カ所、その他の世界では200カ所あり、パッシェル氏によれば電動バイクのメーカーとしては世界最大とのこと。

SR/Fよりも、スポーツ・ツーリングに適したバイクとして位置づけられたSR/Sには、よりアグレッシブなライディング・ポジションになるが高速走行時の空力はやや劣るフェアリングのないネイキッドタイプも用意されている。

Zeroの最新エントリーとなるSR/FとSR/Sは、スタートアップ企業がオートバイ業界の電動化を進めるこの時期に投入されたものの、すべての新型モデルが売れるだけの十分な需要があるという確証がない。

米国のオートバイ市場は、この10年間停滞しているにも関わらず、数多くのEVメーカーがひしめく状態になっている。同国でのオートバイの新車販売台数は2008年からおよそ50%減少しており、特に40歳以下の所有者数は激減し、戻る兆しが見られないことを米モーターサイクル産業審議会の統計が示している。

2019年には、売り上げと若いライダーの興味を呼び戻そうと、大型バイクメーカーとしては初めて、ハーレーダビッドソンが公道を走れる電動バイクLiveWire(ライブワイヤー)を米国で発売した。これがハーレーの電気自動二輪生産ラインの先駆者となった。

ハーレーダビッドソン初の電動バイクLiveWire

ハーレーは、いくつもの電動バイク・スタートアップの失敗(Alta Motors、Mission Motors、Brammo)の後に参入を果たし、ZeroなどのEVベンチャーとともに市場で生き伸びている。その数は増加中だ。

イタリアの高性能EVメーカーEnergica(エネジーカ)は、スウェーデンの電動バイクメーカーCake(ケイク)と共にマーケティングとセールスをアメリカに拡大した。今年も、カリフォルニアを拠点とするLightning Motorcycles(ライトニング・モーターサイクルズ)が参入し、フランスとアメリカの資本で設立されたFuell(フュエル)が価格1万ドル(約110万円)で走行距離約240kmのFlow(フロー)を発売する予定だ。

Zeroには、ハーレーのLiveWireよりも有利な点があるように見える。価格がハーレーの2万9799ドル(約332万円)よりも100万円ほど安いのだ。だが、電動バイクの信頼できる売り上げ統計がまだ発表されていないため、2019年に両者がどれだけ奮闘したかはまだわからない。

Zeroは売り上げを公表していない(CEOのサム・パッシェル氏にダメもとで当たってみたのだが)。

ハーレーのLiveWireに対する価格での優位性は、Zeroの新型SR/Sにも引き継がれたが、発売が待たれるDamon(デーモン)のHypersport(ハイパースポート)が最大の強敵になるだろう。

バンクーバーに拠点を置く電動バイクのスタートアップDamonは、最高速度約320kmの電動バイクHypesportをデビューさせようとしている。価格は2万4995ドル(約278万円)で、ターゲットはTesla(テスラ)のオーナー。独自のデジタル安全技術と、人間工学的にポジションを調整できる機能を備えている。Zeroにはないものだ。オートバイ市場全体でも、これに匹敵するものは存在しない。

どのメーカーが、すべての電動バイクの中から市場に好まれ利益を獲得できるかは、時間とバーンレートと売り上げに掛かっている。

Zeroは財務状況を公表していないが、スタートアップの中では、同社はかなり抜きんでている。過去にベンチャー投資1億2000万ドル(約134億円)を調達し(Crunchbase調べ)、もうこれ以上調達する予定はないとパッシェル氏は話していた。

「必要ありません」と彼はTechCrunchに言った。また、2019年のベンチャーの最大の挑戦は、バイヤーの需要に追いつけるようSR/Fの生産速度を保つことだったとも語っていた。Zeroでは、そんなうれしい問題が2020年に新型SR/Sでも起きることを期待している。

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(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

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