SpinLaunchが運動エネルギーを利用した発射システムで試作機の初飛行に成功

運動エネルギーを利用した宇宙への発射システムを開発しているスタートアップ企業のSpinLaunch(スピンローンチ)が、初めてプロトタイプの打ち上げに成功した。これは、7年前に設立されたこの会社にとって、実物大のシステムのテストに向けた重要なマイルストーンとなった。

このシステムのコンセプトは非常に斬新だ。SpinLaunchの基本的な考え方は、大きな真空密閉室と極超音速のテザーを使い、宇宙船を回転させて大気圏を脱出するのに十分な速度(最高時速約8000キロメートル)を得て、軌道に到達させようというもの。つまり、ロケットもロケットエンジンも使わないということだ。従来の一般的な打ち上げシステムよりも、巨大なレールガンに近いもので、宇宙飛行に対する考え方が明らかに異なる。

SpinLaunchによると、電子機器の小型化や炭素繊維などの高強度素材の進歩により、機体と小型衛星の両方とも高い重力加速度に耐えられるようになったため、このようなシステムが可能になったとのこと。

プロトタイプの打ち上げは、米国時間10月22日にニューメキシコ州のスペースポート・アメリカで行われた。今回のテストでは、実際に予定しているシステムの約3分の1の大きさ(それでも自由の女神像よりは大きい)の加速器を使って、試験機体を超音速で打ち上げることに成功しただけでなく、後のテストに再利用するために機体を回収することもできた。

2014年に設立されたSpinLaunchは、今後6〜8カ月間で約30回のサブオービタルテスト飛行を行うことを目指していると、CNBCは報じている。このスタートアップには、Airbus Ventures(エアバス・ベンチャーズ)、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)、GVが出資している。

SpinLaunchは最初の軌道飛行の場所を公表していないが、同社のウェブサイトには「米国の沿岸地域」になると記されている。

画像クレジット:SpinLaunch

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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