複数のブロックチェーン間の通信を支えるNucoのAionネットワーク、最終的スタンダードになるか?

ブロックチェーンの普及と並行して、複数のブロックチェーンが互いに通信できる仕組みの必要性が顕在化している。トロントのNucoは、今日(米国時間8/30)リリースしたブロックチェーンネットワークAionで、そんな通信のために必要なネットワーキングインフラストラクチャを提供しようとしている。

NucoのCEO Matthew Spokeによると、個々のブロックチェーンの中での、それにふさわしいレベルの信頼性を築くのは各ネットワークの究極の責任だが、いったん、プライベートなブロックチェーンの外の領域に出るようになると、全体的な信頼性を確保するためのシステムが必要になる。銀行でも、政府機関でも、ヘルスケアのプロバイダーでも、必然的にそういう、外にも行く性質のデータを扱っている。NucoがAionを作ったのは、そのための仕組みを提供するためだ。

彼によると、Aionの中核的機能は、データをあちこち移送するための配管系になることだ。Aionが提供するミドルウェアにより、ブロックチェーンは互いに通信し、メッセージを渡しあうことができる。

Spokeと彼の協同ファウンダーたちはDeloitteのブロックチェーンチームにいたが、昨年Nucoを創ってエンタープライズのためのブロックチェーンインフラストラクチャを作り始めた。が、しかし、彼らは気が付き始めた: 多くの大企業がプライベートなブロックチェーンを構築しているが、それとともに、パブリックなメカニズムのニーズも拡大している。ブロックチェーンというコンセプトがスケールし始め、経済システムの不可欠な部分になっていくに伴い、情報を移送するためのジェネリックな〔nonプロプライエタリな〕方法が必要になる。

このようなシステムの構築と利用に対しては、大きなハードルが二つある。ひとつは、情報を複数のブロックチェーン間でパブリックに移送することを、企業が承知することだ。第二は、情報の移送にはネットワーキングプロトコルのような単一の方法が必要なこと。前者に合意が得られたら、その次は後者が、避けて通れない要件になる。

Aionのトークンを一種のデジタル通貨と見なして課金し、ある種のデータをチェーン間ブリッジにまたがって移送するようにすれば、企業のNucoのネットワークへの参加を収益源にすることもできる〔Aionの利用を課金する〕。それにより、Aionのネットワークをサポートする企業も増えるだろう、とSpokeは説明する。

とは言え、彼によるとAionのようなものは、市場がどうしても必要とするインフラの一部だから、直接的に商用化を目指すべきではない。将来、ブロックチェーンがメインストリームになれば、成熟したインフラストラクチャが必要になり、同社や他社はそれを成功の源泉にすればよい。Spokeによると、同社の現状は、市場の成長を助けるためのコントリビューションが主体だ、という。

この問題に取り組んでいるのはNucoだけではないが、Spokeはこのようなプロセスが必要であることを確信しており、他の技術の場合と同様に、スタンダードになる勝者を決めるのは市場だ、と考えている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Y Combinatorで芽が出なかったネットワーク分析のKentikが売上数千万ドル目前、シリーズBで$23Mを獲得

A giant node of organized network cables

かつてY Combinatorを落ちこぼれたネットワーク分析のスタートアップKentik Technologiesが今朝(米国時間8/4)、ファウンダーたちが期待の目で見守る中で2300万ドルのシリーズBを完結させた。

正直に言って私たちの多くは、ネットワークのインフラストラクチャについて何も知らない。しかも幸いなことに、私たちの多くは、知らないで済まされる。しかしインターネットサービスプロバイダ(ISP)や、大量のAPIを利用している企業にとっては、ネットワークの状態を示す情報を迅速に受け取れることが、安定したサービスをコンスタントに提供していくための重要な基盤のひとつだ。もちろん、サービスプロバイダが安定稼働していれば、ユーザーがいらいらとページをリフレッシュする回数も減る。

われわれ消費者ユーザーには、ネットワークがおかしければルーターの電源コードをしばらく抜いてみる、という手がある。しかし企業の場合は複雑なサーバーシステムが動いていて、何かをリブートしたり電源を抜いてみるぐらいでは対策にならないことが多い。

そんな企業にKentikは、ネットワークのインフラストラクチャに関するデータにより、ハッカー攻撃の検出やログの分析、トラブルに至るまでの利用状況の履歴(対策の特定)、などを提供する。企業は常時、ゼタバイト級の大量の情報を扱っているから、その中で問題の箇所だけを正確にかつ早く見つけるためには、Kinetikのようなサービスが欠かせない。

この、大量のログを取ってその分析を正確迅速にやる、というKentikの特技は、同社の最大の差別化要因だ。しかし同社のコンペティターのDatadogは、今年の1月に早くも、シリーズDで9450万ドルを獲得している。

CEOで協同ファウンダーのAvi Freedmanによると、同社の売上は“数百万ドル”のレベルを超えて“数千万ドル”の領域に入りつつある。今同社の顧客は60社あまりで、その80%がアメリカ国内だが、今後は西ヨーロッパ市場を積極的に開拓したい、と言っている。

今回の2300万ドルのラウンドは、Third Point Venturesがリードし、これまでの投資家August Capital, Data Collective (DCVC), First Round Capital, Engineering Capital, そして新規の投資家としてGlynn CapitalとDavid Ulevitchが参加した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

僻地での緊急通話ネットワーク構築にランドクルーザーを利用する研究が進行中

2016-05-13-landcruiser-network

〔この記事の執筆者はStefan Etienne

オーストラリアの奥地は人がほとんど住んでおらず、地形も気候も非常に厳しい。こういう場所でコミュニケーション手段を確保するのは非常に困難な課題となる。アデレードのFlinders大学の上級講師、Paul Gardner-Stephenはトヨタ・オーストラリア、Saatchi & Saatchiと共同でこの課題の解決に取り組んでいる。

このチームは文字通り「移動する無線局ネットワーク」を構築しようとしている。ベースになるのはオーストラリアで非常に数が多いトヨタ・ランドクルーザーだ。この四輪駆動車のフロントウィンドウに黄色いパイプ状のデバイスを取り付けることでピア・ツー・ピアのWi-Fiネットワークが作られる。

このデバイスの無線の有効距離は約25キロ(15.5マイル)ある。

デバイスはWi-Fi、UHF、DTN〔Delay Tolerant Network=遅延耐性ネットワーク〕のテクノロジーを利用しており、緊急メッセージにジオタグ情報を付与し、自動車から自動車へと中継して拡散する。アウトバック〔オーストラリア奥地〕を出た情報は必要な機関に伝達される

このネットワーク方式はオーストラリア奥地だけでなく世界各地で自然災害時にも有効だ。また何らかの理由で僻地で孤立してしまった個人やグループが外界に救援を求めるためにも役立ちそうだ。(水に乏しい世界の砂漠のハイウェイで地獄のカーチェイスが行われるさまは状態はこのあたりに詳しい)。

現在、10台のランドクルーザーをベースに過酷な状況での信頼性の向上などの努力が続けられ、ビジネスへの応用の可能性も探られている。

人口密度が極度に低い地域でコミュニケーションを確保するために、その地域でもっとも販売台数が多い堅牢な車両でネットワークを組むというのは非常に賢明なアイディアだろう。

〔日本版〕最後のリンク「地獄のカーチェイス」のリンク先は『マッドマックス 怒りのデスロード』予告編。日本語版はこちら。作品の舞台設定はオーストラリア奥地だが、実際の撮影はナミビアの砂漠で行われたという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

インターネットを救うためにはサーバが死ぬ必要がある

【抄訳】

今のインターネットは、私たちにとってふさわしいインターネットだろうか? もちろんそうだ、という意見もある。Webのユーザたちは、コンテンツが無料であることを当然のこととしている。しかし実は、私たちは払っているのだ。目に見えるお金だけでなく、自分のプライバシーを支払っている。デジタル世界のビジネスモデルでは、彼らが集める大量のユーザ情報が、一見無料のサービスが成り立つための暗黙の貨幣だ。

ユーザは、大量の時間とエネルギーを、広告や、広告が仮装した劣悪なコンテンツを見るために支払っている。私に何かを売るために、彼らは友だちの写真まで利用する。もちろん、私自身のプロフィールやインターネット閲覧履歴も、大々的に利用される。

Webの商業化は、今のインターネットを動かしている大量のサーバやデータセンターが稼働できるための隠された費用である、という醜い現実がある。そして、その、Webの商業化は、今日のWebを支配する巨大なデジタルプラットホーム、GoogleFacebookAmazonなどによって増幅される。友だちがそこにいるデジタル空間に自分も参加したければ、彼らのルールに従わざるをえない。

でも、もっと良い方法があるのではないか。個々のWebユーザと、スタートアップのデベロッパたちの両方の、利益になるような。

スコットランドのTroonという小さな町で生まれたMaidSafeは、今日のインターネットの数々の問題点は、その基盤的なアーキテクチャの設計がおかしいことに、その根本原因がある、と見ている。Webの慢性的な問題、1)コンテンツのための持続可能なビジネスモデルを見つけることや、2)ユーザのデータとプライバシーを安全に守ること、3)ハッカーやマルウェアや政府等による監視を未然に防ぐこと、などなどの解決や実現は、インターネットの基本的な利用形態〔アプリケーション層〕のアーキテクチャを完全に変えることから始まる、と彼らは主張する。

もちろんそれは、簡単に実現できる課題ではない。MaidSafeは2006年からネットワークのアーキテクチャの問題に取り組み、今年やっとステルスから抜け出て、彼らのプランの詳細を明かし始めた。今は、計画している三つの試験的なネットワークのうちの最初の一つを、今年のQ4のベータローンチを目指して、まだアプリケーションがまったくない状態でテストしている。その試験的なネットワークは180のノードから成り、それらはシンガポールとサンフランシスコとアムステルダムとニューヨークに散在している。

MaidSafeのNick Lambertは、そのプロダクトをこう説明する: “それは完全にクロスプラットホームで、完全に分散自律型のデータ送受信とコミュニケーションのためのネットワークだ”。具体的にどういうことかというと、コミュニケーションをしたいAさんとBさんのあいだに、今のインターネットのように中間者(サーバやデータセンターの層)が介在しない状態を指す。言い換えるとそれは、完全にピアツーピアのネットワーキングインフラストラクチャだ。元SkypeのCOO Michael JacksonがMaidSafeのアドバイザーであるのも、偶然ではない。ピアツーピアのコミュニケーションシステムの元祖といえば、Skypeだから。

このネットワークでは、ネットワークのユーザが自分が常用しているハードウェアをネットワークのインフラとしても提供する。そして、そのためのインセンティブとしてネットワーク固有の暗号化通貨SafeCoinを使用する。

Bitcoinのマイニングに新たなBitcoinの作成と流通というインセンティブがあるように、 MaidSafeネットワークのユーザも、コンピューティングリソースの寄与貢献をSafeCoinを稼ぐことで償われる。SafeCoinの現在価値はUSドル換算で約2セントだが、もちろんネットワークの拡大とともに価値が上がることが期待されている。同社は、この、リソース寄贈行為のことをfarming〔仮訳: 農場拡大〕と呼んでいる。

Lambertの説明は続く: “このネットワーキングソフトウェアでは、ネットワーク上のすべてのコンピュータが一つの巨大なコンピュータを構成する。一つの巨大なサイバー頭脳、と呼んでもいいだろう。つまりネットワーク上のすべてのノードがつながって、一つの巨大なデータセンターになる、と考えてもよい。もちろん今のような(コミュニケーションの当事者にとって)第三者的なデータセンターは存在しない。むしろこれは、データセンターをリプレースするネットワークインフラストラクチャであり、願わくば今日のような巨大なテクノロジ企業も不要なものとしたい”。

【中略】
〔完全な分散化〜P2Pネットワークにおけるリダンダンシーの実現・確保の方法、デベロッパの仕事がどう変わるか、など。〕
〔原文は、ものすごく長い!〕

“われわれが今やろうとしていることは、ものすごく難しい。だからこれまで、実現しなかったんだ。インターネットの完全分散化は、これまでとまったく違う考え方だ。それを実際にやろうとするMaidSafeのような企業も、これまでなかった。巨大サーバパラダイムに対する批判は前からあったが、実際に完全にプライベートに自分のデータにアクセスする方法は、どこにもなかった。中間者が介在しないデータの保存共有の方法も、なかった。ぼくの知るかぎり、一つもなかったと思う”。

“みんな、考え方を変えなければならない。今のデベロッパは初期の段階から、サーバがあってクライアントがある、クライアントがサーバにログインする、等々という構造を頭に叩きこまれている。そしてこの構造が、プログラミングの世界全体を支配している。MaidSafeのような発想がこれまで、なぜあちこちで生まれなかったのか、それは、この頭脳支配に原因がある”。

“協同ファウンダの一人であるIrvingが、蟻たちの生態をヒントに、MaidSafeの前身であるSafeネットワークを設計したときは、サーバの存在を前提としてサーバが抱える問題を克服しようとしていた。でも最終的には、サーバの存在そのものが問題だ、と気づいたのだ”。

“これまではみんな、サーバをどうやって良くするか、を考えていた。でも、そうやってサーバを問題視することを続けるのはやめて、むしろ、サーバをなくすことを考えようじゃないか”。

今や、思想が実装へと動き出している。

[画像: Tristan Schmurr/Flickr]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))