スタートトゥデイがファッションアプリ「IQON」運営のVASILYを子会社化

スタートトゥデイは10月19日、ファッションコーディネートアプリ「IQON」などを提供するVASILYの全株式を取得し、完全子会社化することを明らかにした。金額やスキームは非公開。

VASILYの主力サービスであるIQONは、提携する200以上のECサイトのファッションアイテムを、ユーザーが自由に組み合わせてコーディネートを作成、共有できるアプリ。当初はウェブサイトのみだったが、モバイルアプリでも展開してユーザー数が拡大。現在IQONには250万件以上のコーディネートが登録されていて、ユーザは気に入ったものをお気に入り登録や購入できる。

2017年3月にTechCrunchではVASILY代表取締役の金山裕樹氏を取材している。その時点で月間アクティブユーザーは200万人を超えていて、同年1月には売上最高値を記録するなど一定の評価を得ているという話だった。

また3月に第2弾のサービスとして、人気インスタグラマーと提携した「SNAP by IQON」もリリースしている。SNAPは自社開発のディープラーニングによる画像解析エンジンを活用して、インスタグラマーのコーディネートに似たアイテムを購入できるアプリ。金山氏は「IQONよりも広がるのではないかと期待している」とも話していた。

VASILYは「ZOZOTOWN」や「WEAR」を提供するスタートトゥデイグループに参画することで「これまで培ってきたテクノロジーとスタートトゥデイグループの持つファッションに関 する資産やデータを融合させ、両社のミッションを実現する事業展開に挑戦してまいります」とコメントしている。

VASILYはCEOの金山氏、CTOの今村雅幸氏がヤフーを経て2008年に創業。その後2011年に伊藤忠テクノロジーベンチャーズとGMO VenturePartnersから1.4億円、2013年にその2社とグロービス・キャピタル・パートナーズから3億円、2014年にKDDIから10億円以上の資金を調達していた。

深層学習による画像解析でインスタグラマーのファッションアイテムを探せる「SNAP by IQON」

ファッションやコスメの情報はInstagramを参考にする、という若い女性は多いが、写真のアイテムがどこで買えるのかが分からず、ネット上やオフラインのショップを探し回る人もいることだろう。

ファッションコーディネートアプリ「IQON(アイコン)」を運営するVASILY(ヴァシリー)は3月9日、ディープラーニングによる画像解析技術を活用し、人気インスタグラマーのコーディネートに似たアイテムを購入することができる新サービス「SNAP by IQON(スナップ バイ アイコン、以下SNAP)」を正式にリリースした。

先行するIQONは月間アクティブユーザーが200万人以上のファッションアプリ。提携する200以上のECサイトのファッションアイテムを、ユーザーが自由に組み合わせてコーディネートでき、気に入ったアイテムやコーディネートを“like”登録したり、購入することもできる。ファッションアプリとしては唯一、Apple、Googleの両社からベストアプリに選ばれており、Googleからは、2016年のベストイノベーティブ部門大賞も受賞している。

VASILY代表取締役の金山裕樹氏は「これまでのECでは、テキスト検索で商品を探すのが普通だったが、テキスト検索ではファッションとの偶発的な出会いが起こりにくい」と話す。「たとえば『ナイキのエアマックスの24センチが欲しい』というように、買うものが決まっているならテキスト検索でもいいが、ファッションアイテムの場合は必ずしも“指名買い”だけではない。会社帰りにたまたま立ち寄ったショップで見つけたものを、何となく欲しくなって衝動買いする、ということがある。IQONは(コーディネートという)ビジュアルの組み合わせによって、ネットでも“見て欲しくなる”きっかけが作れないかということで開発した」(金山氏)

IQON提供開始から何年かを経て、一定の評価も受け、2017年1月には売上最高値を記録する中で分かってきたことがあると金山氏は言う。「IQONのコーディネート画面は人が着ている感じがなく、モノを並べて置いてあるだけ。ユーザーインタビューでも『人が(ファッションアイテムを)着ているところが見たい』という声があり、このままでは売上にも結びつかなくなるだろうと考えた。そこでおしゃれで影響力のある人気インスタグラマーと提携し、見たらそこから欲しくなるという第2の手法として、IQONに続きSNAPを開発した」(金山氏)

SNAPでは、VASILY自社開発のディープラーニングによる画像解析エンジンをファッションアイテムの判別に活用する。人気インスタグラマーのコーディネート写真から、ファッションアイテムを検出して切り出し、アイテムのカテゴリを予測。それぞれのアイテム画像を解析して、IQONで取引のあるECサイトが取り扱う100万点の中から似ている商品を引き当てる。ユーザーは、インスタグラマーのコーディネート写真に写っているアイテムで気に入ったものがあれば、リンク先からすぐに購入することができる。SNAPリリース時点で参加するインスタグラマーは約60名で、今後も契約を増やしていくそうだ。

金山氏がSNAPの競合サービスとして想定するのは「強いて言えばPinterest」とのこと。経済産業省が2016年6月に発表した市場調査結果によれば、BtoC ECの物販部門ではファッション分野が最も市場規模が大きく、また若年層によるスマートフォン経由での利用比率が高まっている。「IQONもそうだがSNAPでも、手持ちのコーディネートをどう着回すか、というサービスとしては想定していない。あくまで購入につながる、新しいファッションとの出会いのきっかけ作りが目的で、それによってファッションEC市場の伸びを後押ししたい」(金山氏)

SNAPの今後について金山氏は「具体的な数値目標はないが、IQONよりも広がるのではないかと期待している」と話す。「Instagramというプラットフォームで活躍している人たちとパートナーシップが組めているのは強い。定性的な話ではあるが、着ていないアイテムを並べたものよりは、人の着こなしの方がより(購入に結びつくビジュアルとして)パワーがある。時期は未定だが、ビジネスとしての仮説検証の過程を進めていった上で、アプリ化も視野に入れている」(金山氏)

また、IQON、SNAPに続いて、次のプロダクトリリースも5月ごろに予定しているという。「次のプロダクトも機械学習を応用し、ファッション分野で購入のきっかけ作りとなる、ECサイトを横串で利用できるサービスとなる。今後も、ファッション×機械学習×ビジネスのエリアでサービスを提供していく」と言う金山氏は、今後のVASILYのサービスのあり方について「5年前のサービスやアプリなら、“アプリ向けの画面を作れる”、“表示が速い”といったことでよかったけれど、今はアルゴリズムを高度に使いこなす、技術に強い会社でなければならない。正直なところ、人工知能とファッションを組み合わせたとされるサービスの中には、きちんと技術を活用していないものも多い。我々はこの波を逃さないように、アルゴリズムとデータで勝負して、プロダクトとサービスをちゃんと作っていく」と語った。

非・検索女子を狙い始めたファッションアプリ「iQON」、講談社と資本業務提携

20〜30代のオシャレに敏感な女性をターゲットにしたファッションアプリ「iQON」を運営するVASILY。10月にはKDDIから推定10億円以上の出資を受け、同月25日から全国でテレビCMを開始した。これまで広告を使わずグロースハックによる「地上戦」でユーザーを集めてきた同社だが、メディアを活用する「空中戦」にシフトし、今までリーチできなかった「非・検索女子」を獲得しようとしている。28日には講談社と資本業務提携し、女性誌のコンテンツ配信で連携する。講談社の出資額は非公表だが、関係者によれば約1億円という。

iQONは提携する60以上のECサイトのファッションアイテムを、ユーザーが自由に組み合わせてコーディネートを投稿できるサービス。ユーザー数は150万人に上り、今まで投稿されたコーデは130万件。ユーザーはコーデの中からお気に入りの商品を提携先のECサイトで購入できる。

iQON経由のECサイトの月間売上は「10億円目前」(VASILY金山裕樹代表取締役)といい、最も売れているECサイトは「月間2億円以上」。提携ECサイトから支払われる手数料(比率は非公表)や、ブランドと実施するコーデ企画の広告料が、iQONの収益の大半を占める。10月27日にはネイティブ広告「iQON AD」を導入し、新たな収益源とする考えだ。

iQON初となるテレビCMでは、コアターゲットと想定する「ITへ興味が低いユーザー」の獲得を狙うと金山さん。IT感度の高いファッション好きの女性だけでなく、地方都市のイオンモールで余暇を過ごすような若い女性も囲い込もうとしているのだろう。「これまでのユーザーはApp Storeで自発的に検索してくれる人たち。今まではグロースハックでユーザーを集められたが、今後の数百万人はそれだけでは無理。どんどん一般化していかないとダメだと思っている」。

テレビCMは4種類のクリエイティブを用意し、各地域で獲得したユーザーを分単位で集計。クリエイティブごとのユーザー獲得数を比較し、何時何分に流したCMの効果があったかを検証するなど、「PDCAのサイクルを詰めまくっている」。テレビCMに投じる金額は「数億円」に上るという。

KDDIポータル構想の意味は?

KDDIは10月16日、iQONやnanapi、はてな、@cosmeなど12社13サービスで構成する「Syn.alliance(シンドットアライアンス)」構想を発表した。KDDIによれば、全てのサービスが入り口となる「中心のないポータル」を構築するという。新鮮味があるのだかないのだかわからない構想だが、要は13サービスに各アプリやサービスのリンクを掲載して、お互いに回遊させようとしているらしい。

iQONにとってSyn.allianceはどんな意味があるのか? この点について尋ねると、金山さんは「アプリを自分で探さないようなマス層にリーチできるのが大きい」と答える。「自分に合うアプリを積極的に探す人は全体で見ればわずか。そんな状況にあって、いつもnanapiを見ているようなユーザーがiQONを目にしてくれれば、検索では届かなかったユーザーに見つけてもらえる」。

講談社との提携を皮切りに他の出版社とも提携へ

10月28日には、講談社とスマホ分野での資本業務提携について合意。「ViVi」を中心とした講談社との女性誌と連携し、スマホに最適化したコンテンツを一部有料で配信していく。iQONより女性誌の公式アプリやウェブサイトへネイティブ広告を配信し、女性誌コンテンツのアドネットワーク化を推進することも視野に入れている。

講談社はニュースアプリ「NewsPicks」を運営するユーザーベースに投資したり、写真共有SNS「Snapeee」を運営するマインドパレットへの出資を通じて「ViVi」や「with」に掲載するファッション写真を配信するなど、スマホ展開を模索してきた。スマホ向けコンテンツの配信に強みを持つVASILYとの提携で、女性誌のスマホシフトやマネタイズを強化する。

一方、iQONは講談社との提携を皮切りに、女性誌を扱う他の出版社との提携を視野に入れている。また、アジアでも人気の女性誌を持つ講談社との提携は、「そう遠くない未来に実現する」(金山さん)というiQONのアジア進出の布石にもなっていそうだ。


グロースハックとAndroid優先が奏功、ファッションアプリ「iQON」は登録ユーザー100万人に

ファッションアイテムの画像を組み合わせて自分好みのコーディネートを作成するVASILYのファッションアプリ「iQON」。同アプリの登録会員数(ダウンロード数やアクセスしたユニークユーザーではなく、会員登録したユーザーだ)が、6月25日付けで100万人を突破した。

グロースハックとAndroidファーストがキモ

「Androidファーストでの開発がうまくいっている」——VASILY代表取締役の金山裕樹氏はこう語る。実はVASILYは国内でもグロースハックにいち早く注目したスタートアップの1社とのことで、2013年1月からは様々な施策に取り組んでいるという。

「雄介(AppSociallyの高橋雄介氏)に概念を教えてもらったことがグロースハックを始めたきっかけ。VASILYはテクノロジーカンパニー。社員もエンジニアが多いし、アプリのユーザーレビューでも評価が高い。僕自身もUXのプロであってもマーケティングのプロではない。自社のエンジニアリング能力を生かす意味では、グロースハックでユーザーを獲得するのは『アリ』だと思った」(金山氏)

グロースハックのための施策は、ボタンの変更からチュートリアルの簡素化にはじまる「細かいことの積み重ね」だそう。その考え方や施策については、同社のブログでも一部紹介されているので参考にして欲しい。そしてその際に生きているのが、前述のAndroidファーストでの開発だという。

AndroidのアプリストアであるGoogle Playは、アプリのアップデートにアプリストア側で審査する時間がかからない(AppleのApp Storeではおおよそ1-2週間の審査時間を要する)。そのため、細かな施策をAndroidアプリで次々に実施し、効果が検証できたもののみをiOS版のアプリに反映していっているのだそうだ。その結果、リワード広告やアドネットワークなどをほとんど利用することなく会員100万人を達成したという。

特にアプリをリニューアルした2013年秋以降の成長は急激だという。「アプリのアイコンを4つに減らし、徹底的にシンプルなデザインにした。これもAndroidでうまくいったのでiOSにも反映した施策だ」(金山氏)

マネタイズの3つの柱

100万人の登録ユーザーは、もちろんファッション好きなユーザーが中心だ。iQONではコーディネート作成に利用するアイテムを直接購入できるように、ECサイトへのアフィリエイトリンクを張っているが、すでにiQON経由での売上が合計1億円を越えるサイトなども登場しているそうだ。

マネタイズについても聞いたのだが、前述のアフィリエイトのほか、タイアップを中心にした広告、4月から開始した月額300円のコンテンツ課金の3点を展開しているとのことだった。

広告に関しては、ELLEgirl前編集長の澄川恭子氏がVASILYに参画したこともあって「コンテンツの信頼感も増し、ナショナルクライアントも入ってきている」(金山氏)。一方で課金ユーザーはまだまだ少ない。だが将来的には「外部のファッション誌のコンテンツとも連携していきたい。まずはユーザーのニーズがあることを自社コンテンツで証明する」(金山氏)。

今週Gunosyの発表が続いたりしたこともあって、ニュースアプリのプラットフォーム化を意識する機会はあった。それと同じようにiQONは、ファッションECの集客を実現するプラットフォームとなりつつあるようだ。

ロゴ刷新、海外展開も視野に

VASILYでは今回の発表にあわせて、ロゴを一新する。記事冒頭にあるのが新しいロゴだ。また年内に会員数200万人を目指すほか、早ければ年内にも台湾をはじめとしてアジア、米国での展開を目指すとしている。


ファッションコーディネイトアプリのiQONを運営するVASILYが3億円の資金調達を達成

資金調達の話題が続くが、ファッションコーディネイトアプリのiQONを運営しているVASILYが3億円の資金調達を完了したと発表した。その引受先はグロービス・キャピタル・パートナーズと、以前にもVASILYに投資している2社、伊藤忠テクノロジーとGMO VenturePartnersだ。グロービス・キャピタル・パートナーズはこれが新しく立ち上げた四号ファンドからの第一弾の案件となる。

iQONはファッションのコーディネイトのイメージをユーザーが作成して共有するサービスで、もともとはウェブサイトのみでサービスされていたものをモバイルアプリで展開したところ急速にユーザーの投稿を伸ばしている。すでにウェブサイトとモバイルアプリのユーザー比率は2:98でモバイルが圧倒的に多い。アプリのDL数は20万で、実際にコーディネイトを作ったりアイテムをお気に入りに登録したりといった何らかのアクションするユーザーは1日あたり1万2000人とまずまずの数字になっている。

ほかにも数字面では、これまでに作成されたコーディネイト数は累計でおよそ30万件、毎月1万件以上のコーディネイトが登録されて、お気に入りに登録される件数も月に100万を超えている。iQONはコーディネイトに使われているファッションアイテムをその販売元サイトで購入できるようになっているが、iQON経由で購入した月間の売上金額は昨年5月と昨年12月とを比較すると12倍も伸びているのだそうだ。12月は年末商戦で確かにECサイトの売上は単月比較では高くはなるが、とはいえこのサービスがビジネス面でも数字を伸ばしてきているのがわかる。

スタート時はウェブのサービスだったiQONだが今後もスマートフォンでの開発に力を入れていきたいと彼らは考えている。モバイルでのファッションのメディア領域ではまだ大きな勝ち組はいない。そういう意味で大きな資金調達をしたiQONがどのように成長するのかは興味深い。VASILYは今回の調達以前に1億4,000万円を調達している。